宮城県・河北新報社は、環境保全を身近に感じてもらうことを目的に、廃棄予定の漁網を再利用したエコバッグ「e-umi bag」を製作。10月27日よりオンラインと一部店舗での販売を開始する。
漁業は宮城県にとって重要な産業のひとつであるが、近年プラゴミの問題などで海の環境問題が深刻化している。地元の大切な資源でもある海を守るために、環境問題をもっと身近に感じてもらう方法はないだろうか――。そう考えたことが、今回の取り組みの発端となったという。しかし、ただ紙面でその重要性を伝えるだけでなく、実際に何か行動できないかとたどり着いたのが、廃棄予定の漁網を再利用することだった。
「ビニール袋が有料化し、プラスチックゴミの削減が叫ばれる現在。プラスチックが原料の漁網を再利用することは、実は物珍しさだけではなく、港の廃棄物を減らし、生活のゴミを減らすことにつながる。また、売上の一部を環境保全に役立ててもらうことで、課題解決の一助になりえるのではと思いました。そして読者に紙面という媒体ではなく、プロダクトというメディアを開発し、問題を伝えることが新聞社にとっての新しい取り組みにもなると考えました」と、クリエイティブディレクター 樋口裕二さん。
「e-umi bag」は、廃棄されるはずだった漁網でつくったエコバッグ。宮城県漁業協同組合の協力のもと、宮城県で漁業をしている人たち一軒一軒に連絡をし、廃棄予定の漁網を探すところから始めたという。譲りうけた漁網をエコバッグの素材として生まれ変わらせるため、海藻や浜の砂、潮の香りを綺麗に洗い、黒色とえんじ色に染め直している。
「“環境保全”がテーマになっているプロダクトのため、製作過程でも合成洗剤を使わずに洗浄したり、パッケージやタグに再生素材を使用するなど、細部まで環境に配慮しました。また、バッグのデザインも工夫し、金具に紐を通すことで一枚の網がバッグになる仕様になっています。漁師が海に網を投げ入れて魚をとるように、広げた状態で荷物を入れられる“漁”をイメージしてデザインしました」と、プランナーの天畠紗良さん。
発売当日は、河北新報に商品を紹介する30段広告を出稿。同日に、YouTubeでメイキングムービーを公開した。新聞広告のキャッチフレーズは、「私たちは、大切なものを大切にできているだろうか。」。
「e-umi miyagiの『e』はエコ。エコで、いい海へという願いが込められています。環境問題を意識することが、もっとあたりまえになるようにと、あえてエコという文字はスローガンにはいれずに、平易な言葉にしています。キャッチフレーズについても、『私たちは、大切なものを大切にできているだろうか。』『日常を変える。それが未來をたしかに変える。』など環境問題に限らず、普段の生活にもつながるメッセージにすることを意識しました」と、コピーライター 早坂尚樹さんは話す。
ロゴマークに使ったのは、おおらかな宮城の海のグラフィック。8月1日に出稿したティザー広告にロゴマークを大きく掲載したところ、それを見た地元の百貨店から商品を取り扱いたいと連絡が来たという。
今回は小ロットでの発売になるが、同社では今後も取り組みを続けていきたいと考えている。そして売り上げの収益は、海洋環境保全を行う一般社団法人「石巻海さくら」に寄付をする。
「海洋汚染には、国境も県境もない。だから、地元の海を変えていくことは、世界を変えることにだってつながっていくはず。そんな大きな想いを胸に、震災から10年が経つ今年、宮城の未来のためにできることを!と取り組みはスタートしました。まずはこの新しい挑戦である、漁網のエコバッグが広く知れ渡り、海への関心が高まってほしいと願っています。環境問題は一日で解決できないからこそ、『e-umi miyagi』を合言葉に、今回の反響を見ながら、今後も模索していきたいと思っています」
「e-umi bag」は、宮城県の百貨店「藤崎」、東京のNew Stand Tokyo他、JFみやぎWEBショップ、47CLUBなどのオンラインストアで発売中だ。
スタッフリスト
- 企画制作
- 電通+WTFC+J.C.スパーク+東北新社
- CD+企画+AD
- 樋口裕二
- 企画+C
- 早坂尚樹、天畠紗良
- D
- 片塰いずみ
- Pr(プロダクト)
- 久高一洋
- Pr(映像)
- 立花玲二
- Pr(GR)
- 門脇理恵
- PM
- 平澤あずさ
- 撮影+演出
- 今井伸哉
- AE
- 堤史門