コンテンツ制作のコストを削減する工夫
「KIRIN公式note」には、「#今日はキリンラガーを」という企画があります。これは往復書簡のような形で、キリンラガー愛の強い従業員とキリンラガーが好きなクリエイターさんの寄稿をつなぐ取り組みです。
この取り組みでは、従業員によるラガー愛溢れる寄稿が予想以上によく読まれました。特に公式Twitterでシェアした時には、フォロワーさんから「私も昔から好きでした」「今でもラガー一択です」といった温かい言葉が続々届きました。そればかりか、こちらから声をかけずとも従業員のエッセイを見たクリエイターさんから手が挙がり、その方のnoteアカウントからも投稿をしていただくことになりました。
この企画が始まってまだ2カ月程度ですが、ハッシュタグのSNS上でのリーチは1,000万を超えるほど広がっています。もともと商品に歴史があり、コアなファンが多くいることはもちろんですが、仕掛け方ひとつでコンテンツは広がっていく可能性があることを示した好例かと思います。何より従業員の寄稿にかかる費用は0円です。
社内に書き手を見つけ増やしていくこと、メディアに合わせた「言葉」に編集をすること、コミュニケーションが発生しうる仕掛けをつくること。費用をかけずともやれることはありますし、これらはすべてオウンドメディア担当の役割です。
「KIRIN公式note」も今後は、より一層社内の書き手を増やしていく予定です。従業員のみならず、共感いただいたクリエイターさんの言葉が自然に集まるような「マルシェ」的な場所になることを理想としています。
本来的に、オウンドメディアとは企業からの一方的な発信の集合体です。その枠組みを外し、共感し関わってくれる方々の声が集まる場に変容させることで、発信起点であるはずのメディアが「場所」として自走し始めていきます。
こういった「場所」の編集こそが、オウンドメディア担当の重要なスキルセットになっていくようにも思うのです。
企業発信の「一丁目一番地」=企業Webサイトを活用する
これまでは主にnoteの取り組みについてお伝えしてきました。ただnoteはあくまでプラットフォーム上におけるコンテンツ展開です。読者がすでにいる点、長文が受け入れやすい点、Webページ制作コストはかからないという利点はありますが、あくまでプラットフォーム上での発信です。
つまりアパレルブランドで言えば、「デパートに出店」している状態です。デパートに入るお客さまの状況や隣の店舗の動向によって、出店内容を変える必要があります。そう考えれば、オウンドメディアにおける一丁目一番地はやはり「企業Webサイト」であり、企業としてのメッセージを真っ先に届けなくてはいけない読者は「当社を指名」していきている方々になるかと思います。
その上で、今年の夏からnote記事を企業Webサイトに転載する取り組みを始めています。
これらコンテンツへの入口は企業Webサイトのトップ。要は、当社を目指して来た方に一番はじめに目に入る場所にnoteコンテンツを置いていることになります。企業について知りたいと思ったお客さまがいちばんはじめに訪れる場所が企業Webサイトです。そうであれば商品情報・企業概要の無機質な情報だけではなく、私たちが何を目指しているのか、どんなことを考えているのかについて発信されている“人格”のあるWebサイトに見せることで、お客さまの意識は変わるのではないか、その仮説の元に転載を始めました。
この取り組みが早くも効果を出し始めています。企業Webサイトにきたユーザーからの流入がしっかりと一定数あること、そしてSEO的にも効果が出ていることです。note上の記事は検索結果に出てこないけれど、転載記事の方が検索結果の上位表示され、読者増に寄与しているのです。ストック性のあるコンテンツとしての価値が見え始めています。
noteの書き手を増やす「マルシェ化」、企業の「一丁目一番地」にコンテンツの置き場所を追加すること。これらはあくまで私たちの事例です。これらの事例から見えることは、オウンドメディア担当の役割は、コンテンツをただ丁寧につくることだけではなく(それも重要な役割ですが)、「どこに接点があり得るのか」を考え、「その接点と企業が伝えたいことの整合性」を見出し、「より伝わるためのコミュニケーション」を企画し、「接点をつなげるための可能性」を考えつづけることでもあると思っています。時に営業のように、時にコピーライターのように、時にマーケターのように振る舞うことが求められる役割なのです。