消費者に寄り添うマーケティングをサポートする「Salesforce Customer360」
イベントの開会を告げるキーノート「Get More from Digital, from Anywhere デジタルを活用した個客体験でビジネス成長を」にはセールスフォース・ドットコムの専務執行役員 笹俊文氏が登場。笹氏は、コロナ禍によって変化する消費者の意識をリサーチ部門によるアンケート結果から紹介した。まず、コロナ禍による外出制限や行動の変容によって消費者の63%が商品やサービスの入手方法が変わったと回答。次に、消費行動に関する意識では、56%の消費者が企業の社会的役割について関心を持ち、SDGsの達成を含む企業活動の目的や倫理を購買の理由にする傾向が強まっていることがわかった。最後に、企業に期待する態度においては、消費者の68%が単に物質的な価値だけではなく、自分に寄り添う、理解することを求めているという。
笹氏はこうした調査結果から「デジタルとリアルの融合による顧客エンゲージメントが次のステージへ向かっているのではないか」と指摘した。このような背景を踏まえ、今回の「Connections to You」のテーマを「共創型DX思考」と設定し、その実現のための5つの要件を「人(Humanization)、結(Collaboration)、瞬(Moment)、動(Action)、創(Growth)」と定義した。
この5つの要件を満たした上で、消費者に最高のワントゥワン体験を届け、社内の関係部署が一体となって顧客データを管理するために、セールスフォース・ドットコムが提供しているプラットフォームが「Salesforce Customer 360」だ。キーノートでは「Salesforce Customer 360」を導入し、共創型DXに挑戦しているBIGLOBEと旭酒造を招き、事例を紹介した。
通信事業を展開するBIGLOBEは「Salesforce Customer 360 」によってマーケティングオートメーションとカスタマーサポートサービスを刷新。オンラインと量販店や代理店というリアルの顧客接点やカスタマーサポートにおける顧客情報の一元化によってロイヤルカスタマー化を目指している。
また、BIGLOBEの代表取締役社長 有泉健氏は2年前に基幹事業である通信に、社会や環境に貢献する事業を加えると宣言し、サステナビリティに取り組んでいる。同セッション内でも「SDGsの残された10年で事業運営と社会・環境のサステナビリティを同期させることが重要な取り組みになり、その中で存在感を高めるべきだと考えました」と強調した。
この取り組みの中心に据えるのは、近江商人の経営哲学としても知られる「三方よし」。有泉氏は「買い手よし」「売り手よし」「世間よし」の世界を実現するためには「スコープ」「スケープ」という2つのSが重要だと指摘。デジタルの力で顧客接点を強化した先に、セレンディピティというもうひとつの「S」が加わることで「思いがけない出会いから新しい価値が生まれ、サステナブルの社会をよりリアルなものにすることができる」と話した。
世界で評価される日本酒「獺祭」を手がける旭酒造は、従来杜氏の経験と勘に依存していた酒造りをデータで管理し、より安定して美味しい商品を届ける努力を続けている。旭酒造代表取締役社長の桜井一宏氏は「Salesforce Customer 360」による消費者とのつながりについて「これまでは会ったことがあるお客さまの意見しか聞くことができなかった。獺祭は世界25カ国で販売しているが、全ての国に販売店を置くことはできない。そこをデジタルが補完してくれている」と話した。また桜井氏は「デジタルは新しい武器だが、魔法ではない。ひとつの大きな手段なのでできること、できないことを理解し、使いこなすことができればビジネスを強くできる」と指摘した。