「BtoBマーケを社内で受け入れてもらうには」奮闘の活用事例 ――セールスフォース・ドットコム Pardotユーザー限定イベントレポート

個人のスキルと役割の重要さが並行して伸びる

続いて紹介された事例は、法人向け決済関連サービスを提供するROBOT PAYMENTだ。「すべての営業部署で『Pardot』を最大限業務に生かしている」と話すのは、マーケティング部マネージャーを務める塚越裕太氏。導入によって、2015年以降、売上成長が好調を維持しているという。

「導入前は、売上に貢献した施策の要因分析がほとんどできておらず、マーケティング部は達成しても、営業が未達成という、ちぐはぐな状況になっていました。『何を改善すべきなのかもわからない』と言って過言ではありませんでした」(塚越氏)

そこで「Pardot」を導入し、商品ごとに施策を設定し、月別に細分化。来訪者数からリード、商談、契約といった顧客転換率を期間別・商品別・施策別に絞り込んで確認したり、どんな商談が行われたのか掘り下げて仔細に追跡したりと、費用対効果まで検証できるようになった。「レポートを使えば、実績がリアルタイムに集計されるためわざわざ日々入力をせずとも可視化や分析ができる」と塚越氏は話す。

その後、さらにマーケティング部門だけではなく部門横断で活用範囲を拡大した。「インサイドセールス部門では、スコアリングやグレーディングで対応の優先順位を決めたり、アカウントセールス部門では失注、長期後追い商談で後追いメールを自動化したり、カスタマーサクセス部門では、製品導入後の自動フォローや顧客アンケートなどのコミュニケーションに活用しています。また、営業部門の教育を担うセールスイネーブルメント室では、オンライン学習プラットフォーム『myTrailhead』と組み合わせ、新入社員に対して研修後に復習用のコンテンツが届くようメールを自動配信しています」(塚越氏)

マーケティングデータが他の部門に流れることで、塚越氏自身の視野も広がっていった。「組織全体としてデータをどのように活用すべきなのか、知見が広がった上、さまざまな運用の制度設計に携わることができ、個人のスキルアップとしても、組織における役割の上でも、向上できたことが多かったと感じます。また、Pardotはコミュニティが活発で、ユーザー会やイベントを通して情報交換や学び合いができる仲間と出会えました。これも導入してよかったポイントのひとつです」(塚越氏)

新型コロナウイルス感染症の拡大でも、POBOT PAYMENTが主催したイベントへの集客で「Pardot」が活躍した。ほぼ広告費を用いずに主催イベントや共催イベントでハウスリストから1年で延べ4000人を集め、そこから商談や契約が生まれたという。

BtoBマーケを社内に浸透させるには

最後のケースはコニカミノルタジャパンだ。大きく5つの事業領域を提供している同社だが、マーケティング担当の富家翔平氏は「営業活動そのものに大きな課題を抱えていました」と明かす。

その課題とは、マーケティングの活動から受注活動まで、すべてを営業が担っているということと、その営業スタイルも勘や経験、気合いに頼るような、アナログな営業スタイルだったことだ。

「これらを解決するために、3つのポイントで改革を進めています。1つめに、営業生産性を向上させるため、マーケティングやインサイドセールス部門を立ち上げ、分業体制を整える。2つめに、マーケティングによるリードの創出から営業部門のパイプライン管理という一連の流れを作り、アナログな営業スタイルを脱却する。そしてそれらを支えるIT基盤を強化する、という方法でプロジェクトを進めています」(富家氏)

同社には、施策を実行する事業部マーケティングチームと、それをサポートする全社マーケティング組織がある。「Pardot」を使う事業部側には、ツールの活用に苦手意識を持つ人もいる。富家氏が取り組んだのは、地道な環境整備だった。分かりやすい操作・運用マニュアルに加え、「Pardot」運営者チームを立ち上げ、どんな些細なことであってもサポートする体制を用意した。こうして着実に環境を整備していった結果、きちんと見込み客を管理して営業にパスをするという運用が浸透し始めた。

「しっかりと環境を整備し、サポート体制を組むことが非常に重要です。そして、事業部でつくり上げた細かい活用事例を少しずつ全社に広げていくような根気もとても大事なことだと思います」(富家氏)

事業部のマーケティングチームでは、Webサイトのリニューアルに加え、顧客戦略プラットフォーム「FORCAS」や「Sales Cloud」をかけ合わせ、「Pardot」の活用効果を最大化している。そして、営業担当者は日常的に利用する「Sales Cloud」の画面で「Pardot」や「FORCAS」の情報やマーケティング施策の成果を見ることができる。日々自身が入力しているデータがきちんとデジタルマーケティングに生かされていることを実感しやすい。これが定着化における鍵になっているという。

富家氏がマーケティングチームを立ち上げてちょうど4年目を迎えている。現在、事業部が持つ全体のパイプライン(案件化から成約まで確度ごとに管理されている商談全体)に対して、マーケティング施策の貢献度合いは年々伸びており、直近では約24.3%を占めるという。社内でもその成果を認められ、立ち上げ時は3人だったメンバーが、いまでは12人に。マーケティングチームとしての存在感も高まってきた。

「チームを拡大できている要因は、数字で貢献度を示せているからだと思います。マーケティングの浸透、定着、活用には投資が必要ですし、各事業部でも『やろう』という気持ちになるのは、成果をわかりやすく実感できるようにすることが不可欠です」(富家氏)

次ページ 「クイズ界のTrailblazer、伊沢拓司さんの「課題発見力」の磨き方」へ続く

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