第3回 世界の見え方をガラリと変える、そんなコピーに出会いたい(作家:浅生 鴨)

使える言葉が増えるほど、世界の解像度が増す

世界をより高い解像度で見るためにも言葉の力は必要になる。たとえ目の前に同じものが置かれていても、言葉を持っているか持っていないかでは、見え方が異なってくる。夜空を見上げて目に入る星を、単なる美しい光の煌めきだと思うか、それぞれの名前を呼ぶのかでは、夜空に対する解像度が異なるし、街の中を歩いているとき、道端に生えている草木が単なる草木に見えるのか、それともその一つひとつの名前がわかるのかでも同じく街の見え方が違ってくる。

日本語には雨を表現する言葉はたくさんあるけれども「ハゲワシに食われる」を表す単語はないし、地面の上に積もる雪と空から降ってきている雪は区別されず、どちらも「雪」でしかない。もしもこれを言葉で区別できれば、きっと僕たちは雪に対してもっと新しい感じ方ができるようになるだろう。そうやって使える言葉が増えれば増えるほど、世界はより解像度を増すし、頭の中のモヤモヤをより緻密に言葉へ置き換えていくことができるようになる。

とはいえ、誰も知らない言葉を使っては意味がない。他人の頭に絵を描くには、その言葉を受け取ってもらわなければならない。相手に届く言葉で、相手の頭の中に絵を描く。このとき言葉は、自分の感情や考えを伝えるためのものではなく、他人の中にある感情や考えを想像するためのものになる。そして、それもまた言葉の力なのだ。

世界の見え方をガラリと変える、そんなコピーに出会いたい

言葉には世界の見方を変える力がある。世界との向き合い方を変える力がある。その言葉を知る前と知った後では、世界が大きく違って見えてくる。
力のあるコピーは、それを知る前と知った後とで商品やサービスの存在理由が大きく違って見えてくるはずだ。書き手には世界がどのように見えているのか、その商品やサービスをどう感じているのかが伝われば、きっとそのコピーを読む者の心の中に、新しい絵が、新しい感情が、新しい世界の見方が生まれるだろう。 

たった一行の言葉では、ガラリと人生が変わることはないかも知れない。けれども、少なくとも世界に対する誰かの見方を新しくすることはできるはずだ。それによって世界の見え方がガラリと変わった。そんなコピーに出会うことができれば素敵だなと思う。

 

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宣伝会議 編集部
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