消費者向けブランド立ち上げで社員の愛社精神も高まった
―自社初となるBtoC衛生用品ブランドを立ち上げた背景とは。
長井:当社は、1919年創業の産業用紙の素材生産メーカーです。近年、新聞や出版用紙の需要は右肩下がりに。またオフィス内資料のデータ化が進み、コピー用紙の需要も減っています。製紙市場が縮小する中、これまで培った紙づくりのノウハウを違うところで活かせないかと考え、その戦略のひとつとして衛生用品市場への参入を決めました。決断したのはコロナ禍前でしたが、その当時から国内の衛生意識は高まっており、産業用紙のような需要の浮き沈みが少ないと考えたのです。2019年に衛生用品の営業部署を立ち上げ、介護施設や商業施設のトイレで使う業務用ペーパータオルの製造販売を開始。そして今年7月にはウェットティッシュの製造販売を開始。そうした流れの中で、一般消費者向けの衛生用品ブランドを立ち上げることになりました。
―ブランド立ち上げ時の苦労はどのようなところにあったでしょうか。
神岡:BtoCブランドの立ち上げは当社にとって、初めてのこと。最初、書籍などを読み、手探りで取り組んでいましたが、早い段階で限界を感じるようになりました。ブランディングはもとより、マーケティング戦略の企画や商品開発の仕方など、BtoBとはまるで概念が違ったからです。
BtoBの場合には、価格や機能性を重視した合理的な判断で購入が決まります。しかしBtoCの場合は当然、合理性だけで消費者の心は動かせません。情緒的な価値などを含めて考える必要があります。客観的な視点でBtoC事業をサポートしてくれる外部の力が必要と考え、いろいろな企業を見る中でフラクタさんと出会い、今年3月からご一緒しています。
―新ブランド立ち上げに至るプロジェクトはどのように進んだのでしょう。
長井:すべてをお任せしてしまうのではなく、私たちと一緒になってブランドをつくってくれる姿勢に共感したのが、フラクタさんを選んだ理由でした。自分たちの手を動かすのは大変ですが、それでもその過程を通じてノウハウを体得することができる。今後さまざまな新事業にチャレンジしていく上で、マーケティングやブランディングの知識を習得することは大事だと考えています。
神岡:ブランドづくりは単にロゴなどの成果物が納品されて終わりにはなりません。その後も育てていくものですから、フラクタさんとの仕事のスタイルは私たちに合っていたと思います。
―商品化の前段階、ブランドコンセプトの開発からの参加はフラクタの皆さんにとっても、刺激の多い仕事だったのではないでしょうか。
木下:今回のプロジェクトでは、商品が完成していない段階から関わらせていただいたので、ブランドの土台をつくるところからご一緒させていただきました。骨組みをつくってから、段階に合わせてクリエイティブに着手することが多いですが、今回は最初からアートディレクターやデザイナーが入り、最終イメージを皆で共有しながらブランドを開発していきました。
小山内:ブランドの土台づくりに際して、今回のプロジェクトのビジョンやミッションなど一緒に考え直すことから始めました。まずはチームメンバー全員の意見を聞くところからスタート。メンバーから挙がってきた言葉には「笑顔」という言葉が多く、丸住製紙さんが大切にしていらっしゃる印象を受けました。ただ、衛生用品と笑顔という言葉の紐付けに難航したため、2つをつなぐコピー「まっさらな笑顔を創る。」を提案し、みんなで議論しながらブランドパーソナリティをつくり上げていきました。
―新ブランドの名称は「eminas(エミナス)」に決まったそうですね。
木下:笑顔を創造していく意味の「笑みを成す」、そしてみんなを指す「みな」という音が入っていたり、最終的に目指すブランド像を包括するネーミングになりました。
長井:キーワードである「笑顔」を軸に、フラクタさんから背景や理由のしっかりとしたネーミング案が100件以上も挙がってきたときは、正直すごいな、と思いました。それに対して当社から追加の要望を出したりさらなるブラッシュアップを求めたりしましたが、柔軟に対応してくださり本当に助かりました。
―新ブランドはチャネル開拓も含めて、挑戦が続きますね。
神岡:すでにウェットティッシュは今夏から、一部の小売店で販売もしていますが、今後は小売店以外のチャネルも検討しています。また、ネットでの販売も考えていて、まさに今、フラクタさんと相談しているところです。マーケティングに関しては、ターゲットに対してどのようにアプローチし、コミュニケーションしていくのか。方法論について考えているところですが、そこもフラクタさんに伴走してもらうことで、最終的に私たちだけである程度、自走できる状態にしていきたいと考えています。
木下:ネットでの販売については、当社も多くのブランド立ち上げを支援してきた経験があるので、それを活かしつつ、丸住製紙さんと新たな取り組みができたらと思います。
真鍋:今回のブランドプロジェクトでは、私たちがエンドユーザーに届けたい価値とは何かを再確認でき、結果的に愛社精神も高まりました。メンバーには20代の若手も多く参加しているのですが、自社の事業や強みを改めて理解する機会になったのではないかと思います。社内で愛着を持ってもらうのはブランドの継続に欠かせないこと。今後は社内全体に、そして社外に対してもブランドをあまねく浸透させていきたいです。
長井:そのためにもブランド・エクイティを今後いかに高めていくかが鍵。最終的にユーザーの満足につなげるためにも、衛生用品の先発メーカーと戦う上でも、ブランド・エクイティをとことん突き詰める必要性があります。
―フラクタは今後、どのようなサポートをしていきたいですか。
大野:ブランド名やロゴが決まったので、今後はパッケージに関してサポートさせていただく予定ですが、商品が世に出ていくタイミングがブランドの本当のスタート。ユーザーのリアルな声など踏まえてチューニングが必要になるタイミングが必ず出てくるはずなので、その際もブランドの存在感をしっかり発揮できるようサポートできればと考えています。
内田:商品が世に出てからのフェーズでは、顧客との接点をつくるなど、ブランドが長く愛されるための施策も重要です。そこをデザイン面からも力添えできればと思います。
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