前回のコラムでは
・eスポーツ×高齢者でどんな課題を解決できる?
・コロナ禍のデジタルデバイドの解消に活用
・課題をとらえた「脚本力」を発揮して官民連携を実現
……などについてお話しました。
最終回まで残すところ2回となった今回は、「つなぐ課」やその先の取り組みなどをお伝えしてきたここまでを振り返り、「つなぐ」って結局どういうことなのか、踏み込んで考えてみたいと思います。
結局、「つなぐ」ってどういうこと?
……という問いに答えるとするならば、
「誰かのニーズを元に誰かのシーズと結び付け、双方にとって有益な新たな価値を生むこと」だと私は思います。
官民連携をはじめとするイノベーションは、何かをゼロから創造する「発明」ではなく、さまざまなニーズとシーズの組み合わせから生まれるもの。ニーズとシーズを見い出し、適切に結び付け、実現までもっていくこと。それが神戸市の「つなぐ課」で取り組んできたことです。
もちろんこの「つなぐ」は、私のような公務員だけでなく、官民連携においてだけでなく、仕事のさまざまな側面で使っていただける方法論だと思います。コラムの第2回~第4回までで噛み砕いて書いてみましたが、ここで改めて、「つなぐ」ための手順を簡単に振り返ってみます。
1、ニーズとシーズの引き出しをたくさん持ち合わせておく
素材としてニーズとシーズの引き出しをたくさん持ち合わせておく必要があります。そのため、情報と人脈は不可欠。また、特定の分野ではなく、できるだけ幅広い領域で拡げていくことが大切です。特に公務員はその立場の特性上、仕事を通じてニーズやシーズを探索し、知るチャンスがたくさんありますし、積極的に知りにいくべきだと思っています。
2、ニーズとシーズをどう組み合わせるか、「妄想」する。
「できる」「できない」は一旦置いておき、ニーズとシーズをどう組み合わせるか、シーズとしてさまざまなテクノロジーを活用したサービスや仕組みをどんどん取り入れていくこと、どんな街になっていくのか、どんな価値が生まれるだろうかという「妄想癖」をつけることが大切です。
3、ニーズを起点にシーズとつなぐ
一方で念頭においておきたいことは、組み合わせること自体を目的とするのではなく、ニーズ(課題)を起点としたアプローチを考えることで、的外れな施策になることを防ぎ、本質的な課題解決につながるような施策になるとお話しました。
4、コミュニケーションとスピード感をもってプロジェクトを実現
そして、それを実現させるためのストーリーとして、妄想していたことを元に、ニーズとシーズを組み合わせた脚本を描いていきます。そうして官民連携のプロジェクトにつながっていきます。
これらに加えて、意識すべきことがあるとすれば、それはビジネスの前に『人づきあい』が重要であるということ。官民連携で連携パートナーとなる民間企業の方とは、腹を割って話ができる関係づくりを意識しています。仕事の話の前に他愛もない話から互いのパーソナリティを感じあい、ビジネスとは別のレベルでの「人づきあい」から始めます。
「この人は信頼しても大丈夫」「この人と一緒に仕事してみたいな」と思えるような関係ができると、いざビジネスの話をする時の熱量やスピード感は桁違いです。やはり組織の内外に関係なく、信頼・共感しあえる方と一緒にプロジェクトができるというのはワクワクするものです。
2021年2月にスペースマーケットと連携して、飲食店支援とテレワーク推進支援を行う実証事業を行った際も、スペースマーケットの担当者の方と僕は、連携に関する話を実際にし始める前から互いの顔が頭に浮かんでいた……という相思相愛が発覚したことがありました(笑)。そこから実現までにそれほどの時間は要しませんでした。これはやはり日頃の人づきあいがあって、互いの人となりも知って、いきなり腹を割った話ができる間柄だからできることだろうと思います。