第6回 SNSを使って話題を呼ぶ、73歳の寿司職人「鮨ほり川」(前編)

大事なのは1個ズレの意外性 2個以上はお客さんが付いてこない

尾上:そんな感じでアイデアを生み出しまくってる堀川さんですが。一応失敗したメニューもあったということで、ちょっとそちらも。

秋谷:消えていったメニューは、いくつかやっぱり。おいしいんだけど、時代が追い付いていなかったとか。ホッカレーとか……カレイにカレーをかけたんだっけ。おいしいんですけど、何て言うんでしょう、みんな頼む勇気がない。おいしいんですけど、消えていったなっていうのは。

堀川:あと失敗したのは、温フルーツね。温野菜じゃなくて、温フルーツ。これもつくったんだけど、おいしいんだけど、タイ料理に近い感じになっちゃった。

 

「鮨ほり川」の大将、堀川文雄さん

 
尾上:はい。いま語っていただいたのが、もともとバイトで働かれていて、いまSNSをサポートされている秋谷さんですね。意外性の幅が重要ということかもですね。ホッカレーとかだと、想像がちょっとついちゃうというか。でもやっぱりフルーツ寿司って意外じゃないですか、すっごい。で、意外だと言いたくなるっていう。それが今の時代とも合ってるし、SNSとかでも広まるっていうことなんじゃないかなと。

嶋野:僕は何か、ズレの個数が1個多かったんじゃないかなと思ったんですよ。お寿司を食べる気持ちでいるときに、「何を食べたいか」ってなるかなと思っていて。温フルーツだとダメだっていうことがすごくわかりやすいのは、シャリに冷たいフルーツだったら刺身の代わりがフルーツになっただけで、1個ズレれば食べれるけど。野菜とかフルーツにズレたうえで(さらに)温かいと、2個ズレるとちょっとこう・・・

つまり、もともと持っていたブランドとか、定着の土台から1個ズレるくらいは新しいんだけど、2個ズレるとちょっとわけわからなくなるのかなっていうことを、いまそういうことを感じながら聞いていたんですよね。

尾上:なるほど。新しすぎちゃって、あまり帰って来れなくなったりとか。

嶋野:企業の広告でも、1個新しいならいいけど、2個行き過ぎると。

尾上:まあ帰って来れないとか、言いますよね。あと、みんながそんなに理解してくれなくなっちゃう。技をかけすぎてる問題みたいな。

嶋野:だから、逆に新しくすればするほど、俺は外れるんじゃないかなって。

行動を起こしながら、アイデアを考えるスイッチを常に入れる

嶋野:新しいものをつくるときっていうのは、どういうスタンスでつくられているんですか。

堀川:まず仕入れに行って。仕入れに自分で行かなかったらダメなんですよ。必ず豊洲と、豊洲市場はうちは魚ですね。で、築地の場外は野菜とか果物。で、両方を見て、絶えず新しいものについて売っている人に聞いたりして。そこからですね、いろいろアイデア出てくるのは。だから現物がなかったりしても、アイデア出てこないですよ。

秋谷:「わあ〜!」って驚かせてあげるのが好きなんですよね。

堀川:そうそうそうそう。喜ぶからね。

尾上:シェアされていく感情もやっぱり驚きになっている。こんなにおいしいものが、こんな組み合わせがあったんだって。

堀川:そうそうそうそう。

秋谷:こっちは意図してなくて、最後においしいもの、甘いものを食べておいしいなと思っていたんですけど、Twitterで感想を書いてくれている人は、「ほぼみんな一番おいしかったものはフルーツのお寿司です」みたいな。人に伝えたいところまでいくものって、やっぱり驚きがないとダメなのかなっていうのは思っていて。

 
尾上:やっぱり現地に行くのは大事だなっていう。そこでいろいろ聞いたり考えたり。机に座って考えるぞっていうよりは、常に考えるぞっていう感じというか。そのスイッチをずっと入れていることはすごい大事なんじゃないかなと思わされますね。

嶋野:担当商品の現場、売り場をちゃんと見るっていうことは、我々に近いですし。ちゃんとそれがいま世の中にどういうふうに捉えられてるかっていうのをSNSで見て参考にするみたいなことですよね、我々に置き換えると。

尾上:ご自身でお店やられてる方とかも、誰かに委ねちゃってる部分があるんだったら、そこを自分でやってみたらどうなのかとか。もっとこまめにお客さんを見てみるとか、そうすると見えてくる部分があるのかもしれないですね。で、そういう人たちを驚かせたいっていう気持ちがあるっていうのも結構大事かもしれないですね。ワクワクさせてやりたいっていう。アイデアで人を驚かせようっていう姿勢が、今の時代と合ってるというか。みんなの反響がすごいスムーズにつながってるんだなということを見ていて感じました。

尾上:ということで、ほり川さんの前半パートはここまでということで。次回はSNSの運用方法とかのコツを聞いてみたいと思っております。

嶋野:ところで、尾上さんの個人SNSの運用方法のコツってなんですか?

尾上:コツですか?そんなに意識したことないんですが・・・。しいていえば、あまりガチガチにカッコつけすぎないとかですかね。

嶋野:いやいや、あるじゃないですか。必殺の「下からマウンティング」。相手より弱者だと見せかけてからの、強烈なアッパーカット。

尾上:ちょっと何言ってるかわからないところですが・・・。ということで、我々は引き続きお便りをお待ちしてます。これからのクリエイティブの話でも、好きな寿司ネタの話でも。

嶋野:何でもいいのでください。めちゃくちゃ待ってるよね。

尾上:はい、心からお待ちしてます。よろしくお願いしまーす。

ご感想などはこちらから:『嶋野・尾上の「これからの知られ方」』へのお便り

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嶋野裕介、尾上永晃
嶋野裕介、尾上永晃

嶋野裕介(電通CDC クリエーティブディレクター/PRディレクター)しまの・ゆうすけ/東京大学を卒業後、電通入社。大阪出身なのに関西弁がとても下手。主な仕事はトヨタ自動車「TOYOTA #金曜日の新垣さん」、ソフトバンク「SoftBank 企業広告シリーズ(2019〜)」「民放114局合同番組 一緒にやろう2020」「3cm market」「フリー素材アイドルMIKA+RIKA」など。Cannes Lions、Spikes Asia、Adfest、ADC、ACC、OCCなど受賞。趣味は“新聞”を読むこと(好きなコラムは「窓」と「折々のことば」)。/尾上永晃(電通 プランナー)おのえ・のりあき/2009年電通入社の平社員。企業広告からまちづくりまで臨機応変なコミュニケーション設計をしている。最近の主な仕事は、ネットフリックス「リラックマとカオルさん」、スクウェア・エニックス「ドラゴンクエストウォーク」、日清食品「チキンラーメン アクマのキムラー」、東急電鉄「池上線フリー乗車デー」、宮本浩次「宮本独歩」など。ACC、Adfest、電通賞グランプリ、TCC新人賞やCannes Lions、文化庁メディア芸術祭など受賞。散歩ばかりしている。

嶋野裕介、尾上永晃

嶋野裕介(電通CDC クリエーティブディレクター/PRディレクター)しまの・ゆうすけ/東京大学を卒業後、電通入社。大阪出身なのに関西弁がとても下手。主な仕事はトヨタ自動車「TOYOTA #金曜日の新垣さん」、ソフトバンク「SoftBank 企業広告シリーズ(2019〜)」「民放114局合同番組 一緒にやろう2020」「3cm market」「フリー素材アイドルMIKA+RIKA」など。Cannes Lions、Spikes Asia、Adfest、ADC、ACC、OCCなど受賞。趣味は“新聞”を読むこと(好きなコラムは「窓」と「折々のことば」)。/尾上永晃(電通 プランナー)おのえ・のりあき/2009年電通入社の平社員。企業広告からまちづくりまで臨機応変なコミュニケーション設計をしている。最近の主な仕事は、ネットフリックス「リラックマとカオルさん」、スクウェア・エニックス「ドラゴンクエストウォーク」、日清食品「チキンラーメン アクマのキムラー」、東急電鉄「池上線フリー乗車デー」、宮本浩次「宮本独歩」など。ACC、Adfest、電通賞グランプリ、TCC新人賞やCannes Lions、文化庁メディア芸術祭など受賞。散歩ばかりしている。

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