「宣伝会議賞」の開催を記念して開始した本コラム「『ことば』のことはプロに聞け!」では、「ことば」を武器にして活躍するプロの方々に、「ことば」のもつ力についてお聞きしています。
第4回はお笑いの分野から、ジョイマンの高木晋哉さんが登場。実は、昔から「言葉」に対してネガティブな感情をもっていたという高木さん。では、あの韻を踏んだ独特のネタはどうして生まれたのでしょうか。
高木晋哉 (たかぎ・しんや)
2003年4月にコンビ「ジョイマン」を結成。2007年より「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)に出演し、“クセになる脱力系ラップ”のキャッチコピーでブレイクするも、2014年に開催したサイン会ではお客さん0人だった。2018年7月には「チケットが完売しなければ解散」という条件付きで「ジョイマン15周年記念単独ライブ『ここにいるよ。』」を東京・ルミネtheよしもとで開催。チケットを完売させ、解散を回避した。現在もまたプチ再ブレイク中!
「言葉」はお笑い芸人の武器、でも僕は「言葉」を恐れていた
はじめまして。お笑い芸人をやらせていただいています、ジョイマンの高木晋哉です。「ありがとう オリゴ糖」や「ジンベイザメ 湯冷め」や「普段着 エリンギ」などの韻を踏んだ言葉を言うネタをしています。
お笑い芸人にとっての「言葉」は便利な道具であり、武器のようなものです。しかし、そんな味方とも言うべき「言葉」を、僕は昔から恐れていました。
子どもの頃から変に自意識過剰だった僕は、人の口からぽろぽろと溢れ出す大量の言葉たちに一喜一憂し、異常なほど意味深に言葉たちが心に食い込み、喜んだ直後に落ち込んだり、勝手に人より長く戸惑ったりしていました。なぜだか、誰かから発せられた言葉たちが、手渡された重い荷物のように感じてしまうのでした。
共通点は“韻”だけ。出会ったことのない「言葉」をくっつける
お笑い芸人になった理由は、そんな自分を変えたかったからに他なりません。もっと皆みたいにタフになりたい。面白い人間になりたいというより、僕は“タフガイ”になりたかったのです。この世界を飛び交う言葉たちを、もっとフランクに、指で弾き飛ばしてみたり、優しく撫でてみたり、ガリゴリと噛み砕いてみたり、何も気にせず丸飲みにしてみたかった。
今考えれば、ジョイマンのネタは、そういった「言葉」に対する愛憎の末路なのかもしれません。韻という共通点だけで、出会ったことのないような言葉同士をくっつけて「どうだ、居心地が悪いだろう」と違和感を笑っているんです。
幼少の頃から自分にとって意味があり過ぎたこの世界の言葉たちを、無理やりに全く意味のない“ただの音”にして笑っているんです。言葉たちにしてみたら、せっかく意味を持って生まれてきたのによく知らない言葉同士でくっつけられて無意味な言葉にされて、僕は本当に意地悪な人だと思います。