前回の「マリトッツォブームは「ネタ化」がけん引した!?(前編)」はこちら
桜美林大学准教授/マーケティング・コンサルタント
西山 守
本稿の前編を書いた後『HOT PEPPER』が実施した「2021年に流行ったと思うグルメ」のアンケート調査の結果が発表されましたが、マリトッツォはダントツの1位でした。
また、日経トレンディの「2021年ヒット商品ランキング」も発表されましたが、こちらではマリトッツォは第6位にランクインしています。日経クロストレンドによると、マリトッツォのヒットの要因として、「簡単にアレンジできること」が挙げられています。
SNS上での口コミから読み解くと、実態はどうなのでしょうか?
下図は、Twitter上の「マリトッツォ」を含む投稿数の推移グラフです。
同様の図は前編でも掲載しましたが、本記事では直近(2021年11月10日)までの話題で量を見ています。
大きな盛り上がりは、マリトッツォそのものではなく、類似商品(?)や「ネタツイート」であることは、前編でも論じた通りです。
ここで、Twitter上で多く引用された記事を見ていきたいと思います。
謎の食べ物「どらやきマリトッツォ」セブン-イレブンで発売 世界よ、これが日本のコンビニだ
ねとらぼ(2021/8/24)
マリトッツォを魔改造!もはやスイーツでもない“すしトッツォ”開発秘話
Walker Plus(2021/11/7)
「いろねこマリトッツォ」たっぷりホイップクリームの“ネコ型マリトッツォ”、大阪新阪急ホテルで
Fashion Press(2021/8/4)
ホテルオークラ東京ベイの冬限定“ピスタチオ”マリトッツォ、たっぷり生クリームにローストピスタチオ
Fashion Press(2021/11/5)
類似商品の話題もあるものの、引用されている記事に関しては、「マリトッツォ」の商品それ自体に関する話題が多くを占めています。ただし、話題になっているのは、独自のアレンジを加えられた商品で、オーソドックスなマリトッツォではありません。
SNSの話題から見ても、日経クロストレンドの記事の通り、マリトッツォブームにおいて、「アレンジ」がひとつの要因となっているとは紛れもない事実のようです。
ただし、SNSにおいては、「自分でアレンジする」ということに留まらず、販売されているアレンジされた商品の話題、マリトッツォ話題を「ネタ」としてアレンジするトレンドも目立っています。
さて、少し視点を変えて、インフルエンサーについて見てみましょう、エンターテインメントグループの「すとぷり」がTwitterのみならず、複数の公式SNSアカウントでマリトッツォに関する情報を発信して、話題化しています。
これから初マリトッツォです???✨
お写真を撮っていたら…何だか顔に見えてきて困ってます…( ˙꒳˙ )
かわいいからお名前付けちゃおうかと思ったけど( ˙꒳˙ )
もっと食べにくくなりそうだからやめとくよ…( ˙꒳˙ ) pic.twitter.com/eDVnlEQXHn
— るぅと²@すとぷり (@root_nico_2) September 22, 2021
「すとぷり」は若年層の間で人気が高いのですが、株式会社アイ・エヌ・ジーが高校生に対して行った『流行と嗜好に関するアンケート調査』における、「流行っている食べ物」のランキングにおいて、マリトッツォは3位に付けています。
若年層も含めた幅広い層の間で、マリトッツォは話題化し、ブーム化していることが伺えます。
Twitter上の話題に戻ると、マリトッツォに関する投稿の共起語として、「美味しい」、「可愛い」といった単語が上位にきています。
ツイート内容を見ても、実際に食べた人の「美味しかった」という投稿が目立ちますし、各社の商品を食べ比べて「ここのマリトッツォが美味しい」評価、論評する投稿も多く見られます。
コンビニ各社、山崎パン、カルディコーヒーファーム、地元のパン屋など、Twitterユーザーの「推し」の商品も多種多様で、自分の好みのマリトッツォを探し出し、食べている様子が伺えます。
「可愛い」という単語に関しては、商品のビジュアルを「可愛い」表現する投稿が多かったのはもちろんなのですが、マリトッツォを食べる子供や恋人の様子を「可愛い」とする投稿も目立ちました。
派手なビジュアルではないながらも、SNS映えする「可愛さ」を兼ね備えている商品であるからこそ、話題化しているとも言えるでしょう。
実は、10月下旬以降は、Twitter上ではマリトッツォの話題は減少基調にあり、大きな盛り上がりも見られません。ただ、各社が発売している商品は評価も高く、話題、あるいはブームは沈静化しても、継続的に売れ続けるだけの商品力を備えていると思われます。
そう言えば、Twitter上でも「タピオカ」と比較してマリトッツォについて語る人も多く見られました。
タピオカほどの爆発的なブームではなかったかもしれませんが、マリトッツォもファンの間で継続的に買い続けられる商品として定着していくのではないでしょうか。
連載は今回で最終回となります。
半年弱の間でしたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。
西山守(にしやま・まもる)
マーケティングコンサルタント/桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
1998年3月、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了(物理学専攻)、同年4月電通総研入社。2016年12月電通を退社、2017年5月西山コミュニケーション研究所代表。2021年4月に桜美林大学 ビジネスマネジメント学群 准教授就任(主に、広告・マーケティングを教える)。
電通総研においては、主に、情報メディア関連、地域開発関連のリサーチ、コンサルティング業務に従事。電通では、主にマーケティングメソッド、ツールの開発やソーシャルメディアマーケティング、特にソーシャルリスニングの業務に従事。ソーシャルメディア、戦略PR等を活用した、リスクマネジメント、レピュテーションマネジメントに多数の実績あり。大手企業のソーシャルリスニング、およびマーケティング支援業務、官公庁や大手メディア等のリスクモニタリング、リスクコンサルティング実績もあり。
独立後は、電通グループを中心に、ソーシャルリスニングやSNSマーケティングをはじめとするコンサルティング業務や人材育成を行う。
これまでの著書(共著含む)に、『情報メディア白書』(ダイヤモンド社)の企画・編集・執筆、『クロスイッチ
-電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた-』(ダイヤモンド社)の企画・執筆、『リッスンファースト!』(翔泳社)の翻訳出版を監修、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(フィギュール彩)の執筆(共著)。