静止画と動画は二者択一ではない。デジタル広告の誤解
デジタル広告における動画広告の重要性が高まっている。多くの企業やブランドでも既存の静止画広告から動画広告への切り替えや、動画広告の導入が検討されはじめている。400社以上のデジタルマーケティングを支援するリチカのCMO田岡凌氏は動画の重要性は認めながらも、それだけでは成果につながらないと指摘する。
リチカ CMO田岡 凌 氏
大学卒業後、ネスレ日本へ入社。「ネスカフェ ドルチェグスト」や「ミロ」のブランド担当に。WeWork Japanではブランドマーケティング責任者として、 国内約30拠点以上の集客に貢献。2021年3月、株式会社リチカへ参画、CMO (最高マーケティング責任者)に就任。
「静止画と動画は両方大事です。静止画だけの配信と静止画と動画の両方を配信した場合、コンバージョンが17%向上したというデータがあります(*1)。また、静止画も動画もインプレッションのうちクリック率は3.7%しかなかったという結果もある(*2)。つまり、静止画に反応する消費者もいれば、動画により反応しやすい消費者もいる。静止画と動画は二者択一ではなく、両方を活用することでリーチを最大化することができるのです」
動画と静止画を併用することは、プラットフォーマーの間では王道として認識されはじめている。しかし、ただ併用するだけでは十分ではない。デジタル広告は、旧来の4マス広告とは異なり、出稿して終わりではない。いかに運用できるかがカギとなる。ABテストなどの比較検証や各種データをもとにROASやROIをふまえてクリエイティブを評価し、改善する。効果の高い「勝ちクリエイティブ」をいかに早く発見し、発信できるかが重要なのだ。
静止画では運用の重要性を理解し、実行している企業やブランドも、動画でも同様にできているわけではない。田岡氏は「動画プラス静止画、ここに運用を掛け合わせることができる体制をいかに作るかが重要です。これによって中長期的な成功を実現し『勝ちクリエイティブ』の効果を最大化できます」と話す。
「運用型クリエイティブ」を阻むふたつの罠
動画と静止画の併用と運用を実際に実行することは「簡単なようで難しい」(田岡氏)と指摘する。その難易度を高めているふたつの壁が存在するからだ。ひとつ目は「量産化の罠」。静止画の量産は従来通りのため大きな問題にならないが、動画は制作に工数と予算を必要とする。また、動画制作のノウハウがなければどのような手順で作ればいいのかもゼロから着手しなければならない。これが実行を難しくする最初の罠だ。
もうひとつは「最適化の罠」。動画、静止画はともに配信面に適した最適な姿が存在する。動画と一言で表現してもテレビCMと同じものをウェブで配信すればいいわけではない。横型のテレビに合わせて制作した動画広告を、正方形や縦型が最適だと言われるFacebookで配信しても、期待する効果は得られない。音声でも同じだ。SNSの広告に触れる人は基本的に音声なしで見ることが多いため、テキストベースのメッセージつまりコピーの重要性が高くなる。SNSやYouTubeの広告はスキップできるため最初の2秒ほどしか見られないケースも多い。最後まで見られることを前提に制作するテレビCMとはメッセージの置きどころが変わるのだ。
配信面に合わせて最適なクリエイティブを用意する必要があるにもかかわらず、制作にかかる工数や予算、人的リソースなどが追いつかない。これが動画の最適化をはばむ罠だ。
田岡氏はこうした問題の解決策のひとつとして「私たちのようなクリエイティブテックを活用してほしい」と話す。リチカではこれまで400社近くの制作支援を行ってきた。運用型クリエイティブクラウド「リチカ クラウドスタジオ」では、目的や配信面ごとに効果のでやすいフォーマット、配信面に最適な長さやサイズのフォーマットなど、動画制作に精通していなくても、配信面ごとに成果に直結しやすい動画広告を制作することが可能だ。「大手CM制作会社出身のディレクターが監修するフォーマットは1500以上用意しています。加えて企業やブランドの希望に合わせたオリジナルのフォーマットを作ることもできます。リチカがオリジナル動画ファイルを制作し、クライアントがコピーやデザインなど要素ごとに異なるパターンを量産することで、簡単にクリエイティブの運用を実現できます」(田岡氏)
これからのターゲティングはクリエイティブが鍵になる
近年、Cookie規制の流れもありサードパーティデータを用いたターゲティング広告が難しくなっている。代替するターゲティング技術も登場しているが、田岡氏は「今後はターゲティングもクリエイティブで勝負する時代になっていくと考えています」と話す。実際、ニールセンの調査ではデジタル広告の成果に対する貢献度の47%はクリエイティブだというデータもある。ターゲティングが難しくなっていることも、静止画と比較してよりリッチに情報が伝えられる動画に注目が集まる理由のひとつだ。
デジタル技術が登場する以前、ターゲティングという考え方がなかった時代、広告はクリエイティブの力でターゲットにメッセージを届けてきた。そうした意味ではデジタル広告はデータからクリエイティブへ、広告としての原点回帰を果たそうとしているとも言える。ただし、現代の広告クリエイティブは、公開して完了するものではなく、データを元に最適化を繰り返し「運用型クリエイティブ」で進化するクリエイティブだ。
クリエイティブの重要性の高まりは、企業やブランドの課題にも影響を与えている。リチカへの相談でも増えているのは広告制作のインハウス化だ。従来のデジタル広告制作では、企画、戦略、制作、配信、分析といった専門性に特化して組織が分断され、一部はパートナー企業との協業となることが多かった。しかし、最適なクリエイティブを作るためには企画から分析までを一気通貫で行う必要がある。
企業によっては、広告は自社で制作するものの、SNSはパートナー企業に依頼するケースもあり、広告活動全体のクオリティを統一し、維持することは難しい。リチカ クラウドスタジオは、動画だけではなく静止画も制作可能で、配信後の運用と最適化も実現する。「誰でも簡単にブランドの水準を維持した動画、静止画広告を制作し、運用・改善ができます。これを実現しているのが1500を超える動画フォーマットです。フォーマットそのものも各配信面における成果データをもとに最適化をつづけています」(田岡氏)
クリエイティブの最適化を支えているのがリチカ独自のフレームワーク「AIBAC」だ。「アテンション(A)」、「インタレスト(I)」、「ベネフィット(B)」、「アクション(AC)」それぞれの視点から評価し、より効果的なサービス提供を目指している。現在はFacebook社やYahoo社など、プラットフォーマーと公認パートナーシップを結び、いくつかのプラットフォームとは共同研究も進めており、さらなるサービスの精度向上を目指している。
重要性が高まる動画広告制作、その成否を左右するクリエイティブと、静止画も含めた広告の運用、これら全てをサポートするのが「リチカ クラウドスタジオ」だ。リチカでは制作・運用だけではなく、一気通貫でデジタル広告を制作する体制づくりへの支援も行なっている。「担当者の専門性がなくてもクリエイティブを作ることができるテックを使ったサービス。これを活用することで動画と静止画を組み合わせ、運用もできる体制を整えられる。これからのデジタルマーケティングのカギとなる「運用型クリエイティブ」の実現。これが私たちの提供する価値です」(田岡氏)
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株式会社リチカ
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