昆虫食に手づくり化粧水……井上咲楽が取り組むGFPな生活

2030年に向け活発化するSDGsの取り組み。実践には “未来” の姿を描くことが不可欠です。本コーナーは多様なフィールドで活躍する人たちと共に、理想の未来を考えていく、連載企画です。第5回目はタレントの井上咲楽さん。昆虫食や手づくり化粧水など、GFP(Good For the Planet)な生活をInstagramやYouTubeなどで発信しているとのこと。その取り組みの背景を聞きました。

*本記事は12月1日発売の『広報会議』1月号掲載の「SDGs未来会議プロジェクト」との連動記事です。

 

昆虫食や手づくり化粧水など、GFP(Good For the Planet)な生活をInstagram、YouTubeなどのSNSで発信している井上咲楽さん。その取り組みの背景には、栃木の実家での自身の幼少期の体験がベースになっているという。

実家での暮らしの中にSDGsがあった

─井上さんがSDGsを知ったきっかけはなんでしたか。

最近、テレビ番組の企画の中でも「SDGs」という言葉がよく出てきて、そこで初めて知りました。2019年には「SDGs LINEスタンプコンテスト」で審査員をやらせていただくことになり、それを契機にしっかりと勉強しはじめましたね。学んでいくと、今まで何気なく発信してた実家の暮らしが、SDGsの取り組みにもなっているのだと気づかされました。前から取り組んでいたことが、SDGsが浸透するにつれ、自分の中での再発見になったという感じですかね。

─ご実家ではどのような取り組みをされていたのでしょうか。

「使い捨てをする」ということがあまりない家でした。カイロひとつとっても、使い捨てカイロは使ったことがなかったですね。実家が薪ストーブで暖をとる家だったので、朝起きたら大きい石とかを持ってきてそれをストーブの中に入れて……。家を出る直前に新聞紙に包んでカイロ代わりにしていました。「ゴミ」をなるべく減らすことにも取り組んでいましたね。私の家は6人家族だったので、意識せずに捨てると、ゴミ処理のコストがすごくかかってしまうんです。生ゴミはコンポストに入れて堆肥にしたり、牛乳パックも、魚をさばくためのまな板代わりにしてから、捨てる。あと、着られなくなった服は、油やカレーをふき取るために使っていました。そのまま流すのは環境にも良くないですし、何より実家が山の上にあったので、下水が汚れてしまうと掃除などでまたお金もかかってしまう。こういう自分たちのプラスになっていたことが、大きなところで地球のためにもつながっているような感覚でしたね。

─幼少期から当たり前になっていたエコな活動が、今のご自身の暮らしの中にも取り込まれているんですね。「#丁寧な暮らし」と、SNSでその取り組みを紹介されたりもしていますよね。

私も、化粧水を卵の殻からつくったり、生ゴミも水分を切ってからゴミ箱に入れるなど、本当身近なところからですけど、取り組んでいます。丁寧な暮らしを意識していますが、時間をかけることが、イコール丁寧な暮らしとは思ってないので、その人の楽しい暮らしをするのが一番だと思います。私は生み出すことが楽しいんです。買ってもいいけど、実は自分でもこんなに簡単につくれた、みたいなことを生きがいに感じたりしますね。それも、実家が手づくりのものが多かったというのが大きいと思いますね。

自分のためを前提に

─井上さんがメディアを通してSDGsやサステナブルな取り組みに関して発信する際に、意識されていることはありますか。

「地球のため」ではなく「自分のため」を前提にした方がうまくいくと思っています。もちろん地球のためにつながっているかもしれないし、そこを打ち出すのもひとつの手かもしれないですが、自分にメリットがあるから自然にやっている方がいいのかなと思っています。例えば、サステナブルなものを買った方がちょっと高くなっちゃう、エコってお金かかるよね、みたいなことを最近すごい聞くんですよね。それだと長く続かないし、やりたいと思わないはずです。卵の殻化粧水を紹介したときは、美容に興味ある人もそうだし、自然な生活に憧れてる方、学生さんで安くつくれるならやってみたいですとか……様々な方面から反響をいただいたんですよ。みんなやっぱりただエコっていうことじゃなくて、それプラスα何かあると興味を持ってくれるんだな、というのを感じましたね。

栃木の実家でのエコな暮らし
栃木県益子町の井上さんのご実家にある薪ストーブ。カイロ、化粧水、味噌や干し野菜を自作するなど、山の上にある1軒屋で取り組まれていた、自給自足な生活が、今の井上さんの生活にも染み込んでいるという。

─プラスαの発信は、SDGsに興味を持ってもらう上でも重要な視点ですね。井上さんは、GFP食品として注目されている“昆虫食” にも取り組まれていますよね。

元々は2018年ごろの番組のロケで蜂の子を食べてみて、「美味しい」と思ったのがきっかけです。そのことをスタッフに話したら、コオロギラーメンを紹介されて。ロケ帰りにそのまま行って食べてみたらめちゃくちゃ美味しくて……。「昆虫食なのに美味しい」というよりも、食べ物として普通に美味しかったんです。そこから、私が食べていない食材がまだいっぱいあるんじゃないかという探究心から興味を持って食べるようになりました。以前はなかなか受け入れがたい食べ物だったと思うんですけど、無印良品やマルエツなど、企業でも昆虫食が注目され始めてますよね。最近では「紹介できる昆虫食ってないですか」と番組から提案をもらったり……。急激に時代が変わってきてるなというのは、昆虫食を軸にすごく感じますね。

最近注目の昆虫食に夢中!
昆虫料理研究会代表 内山昭一氏と、YouTube番組「バグズクッキング 昆虫食&虫料理」に出演。昆虫食の魅力や昆虫の活用方法などを配信している。

─昆虫食について関心が高まる一方で、やはり苦手な方も多い領域かと思います。

昆虫食の発信には特に注意をしていますね。以前はInstagramのストーリーで流すことが多かったんですが、それだと苦手な人にも予告なしで届いてしまう。なので最近はYouTubeなど、アクセス(選択)して初めて見られるコンテンツにあげるようにしています。あと、普通の食材として扱うことを意識したりもしていますね。食の選択肢は今すごく広がっています。お肉、魚、ニンジン、昆虫……みたいな形でひとつの食材として馴染んだら面白いのかなと思いますし、そのように思ってもらえる発信をしていきたいと思います。

─最後に、SDGsの達成目標とされている2030年に向けて、井上さんはどのように取り組んでいきたいですか?

地球のために何かやらなきゃ、という窮屈な思いでやるのではなくて、身近なところで積み重ねていきたいと思っています。SDGsは、人権、食、暮らし……ほんとにいろんな項目があって、様々な視点から捉えられると思うので、まずは自分の興味のある分野から始めてみるのがいいと思います。私の昆虫食や手づくり化粧水のように、自分のための自分なりの取り組みでいいのではないでしょうか。こんな風に一人ひとりの取り組みが積み重なっていくことで、2030年、一番ハッピーな形でSDGsを達成できればと思いますし、その場限りのものにもならないのではないかなと思います。

井上咲楽さんへのインタビューの様子、メイキング動画を公式YouTubeで配信中!
 

 
*SDGs未来会議プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちらから。

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