新型コロナウイルス感染症の拡大で離れてしまった、バス利用客の呼び戻しが急務となっている。
岡山県南・広島東部エリアで路線バスを運営する両備ホールディングス(HD)の両備バスカンパニーら5社は、「公共交通ががけっぷち」と掲げ、利用を訴えるキャンペーンを始めた。ほかのバス事業者含め、岡山市全体で長期的にバス利用が低迷する中、コロナ禍による大打撃。市民の足を守るため、ストレートに呼びかけた。
岡山市が打ち出した「路線バス運賃無料デー」に合わせ、11月28日には家族向けのイベントを開催した。用意した企画は、市内各所を巡って5個集めるごとに1回抽選に参加できるスタンプラリーや、約1000平方メートルの車庫に約30台のバス車両を並べて作った「バス迷路」、路面電車の運転体験など。バス迷路は前日までに予約が埋まった。
「運賃無料デー」は12月10日にも2回めを予定しており、両備HDの大上真司氏(バスユニットユニット長 兼 バスユニット統括カンパニーカンパニー長)は「少なくとも通常の5倍以上のお客さまの輸送をさせていただけるのではないかと期待をしております」と話す。運賃は市が拠出する。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、岡山市内の路線バスの利用客は30〜35%減と急降下した。市と郊外や他市をつなぐ路線でも20〜25%落ち込んでいる。長期的に見ても、人口は2005年の69万6000人から21年4月は71万9000人と増えた一方、05〜21年のバスの利用者数は横ばいが続く。
利用者が増えない原因として大上氏は、「少子高齢化や、岡山市の都心部は駐車場だらけで、クルマのほうが利便性が高いことが挙げられます。ご利用が減るとバス会社はコスト適正化のため減便を余儀なくされますが、結果、利用しづらくなって、さらにご利用が減る、という負のスパイラルに陥ってしまっています」と苦悩をにじませる。
市では9社がバス輸送を担うが、業界としても乗務員確保が難しくなりつつある。それも路線廃止やダイヤ減便などにつながり、「負のスパイラル」からの脱出を阻んでしまっているという。
キャンペーンに参加するのは、両備バスカンパニー、東備バス、岡山電気軌道、中国バス、井笠バスカンパニーの5社。取り組みは2022年も継続する。