スタートアップ企業のCCOも務め、CD、ADの立場から実験的な社会課題解決に取り組む。
ビジョンは「いいもので、いいこと。」
WWF ジャパンの広告キャンペーン「WITH STAMP」「# アニマルセルフィー」「未来47景」や、早稲田アカデミーの広告シリーズ「まる子、本気になる。」を手がけてきた増田総成さんが2020年に独立し「RABBIT」を立ち上げた。現在は1名のデザイナーとともに活動し、独立前から継続する仕事はもちろんのこと、海外の企業やスタートアップ企業のクリエイティブなどにも広く携わっている。
「RABBITのビジョンは『いいもので、いいこと。』。アートディレクションやデザインなどビジュアルコミュニケーションを軸に、流行り廃りのない本質的なクリエイティブをつくっていきたいという想いで立ち上げました。社名の由来は、飛び越える、跳躍するといった前向きなイメージにちなんで……というのは後付けで、娘が好きな動物だったから(笑)。ウサギは絵文字で表すことができてグローバルで共通のイメージがある、というのも決め手になりました。誰でも親しみを感じられて、お声がけいただきやすい社風にしたいという想いもあります」(増田さん)。
増田さんの強みは、アートディレクターでありながら、PRやメディアプランニングなどを含め戦略面からコミットしていること。そんな現在のスタイルを確立する転機となったのが、WWFジャパンの仕事だ。
「WWF ジャパンは電通テックに在籍していた2010年に自主提案して以来、ずっと続いている仕事です。日本人にとって馴染みが薄い寄付文化を生活動線の中に入り込ませるにはどうしたらいいか?という課題を解決するチャレンジを続けています。デザイナーとして手を動かすことはもちろん好きなのですが、純粋なグラフィックの力だけでは世の中に広く届けることは難しい。もっと戦略的なところから参画していく必要があると考えるようになりました」。
2017年にクリエイター・オブ・ザ・イヤーのメダリスト受賞のきっかけとなった「オロナミンC×朝日新聞20年分のありがとう新聞」も転機となった仕事のひとつ。成人の日の新聞の一面が子から親への手紙になって配達されるという企画で、メディア戦略も含めて評価された。
スタートアップのCCOとして参画
WWFの仕事をきっかけに、独立後は社会課題にコミットする事業やプロジェクトに関わる機会が広がっている。たとえば2021年8月には、ごみ拾いボランティアのNPO「greenbird」とプラスチックごみを使ってプラモデルをつくるプロジェクト「RePLAMO」を立ち上げた。全国でファミリー向けのビーチクリーンイベントを実施し、拾ったごみを成型してウミガメのプラモデルをつくるという体験型プログラムだ。そのプロセス自体を楽しみながら、プラごみ問題を考える企画となっている。
このほか、医療×クリエイティブをコンセプトにしたアパレル製品を販売する薬剤師発のベンチャー「glue」に参画し、衣服のブランディングを手がけるほか、多重知能理論を用いたマレーシアのエドテックベンチャー「TOY∞」(トイエイト)の仕事では、アミューズメント施設のロゴやサインに加え、空間装飾やゲームコンテンツなどクリエイティブ全般を担当。さらに、テクノロジー×ビジネスでデータソリューションを提供するスタートアップ企業「METRIKA」のCCO(Chief Creative Officer)に就任し、企業の内側から事業全体のブランディングに携わるなど、仕事の幅を広げている。
「クリエイターとしての企画力や発想力はもちろんのこと、今こそ社会に意味のあるプロジェクトとして具現化できる力が重要だと考えています。その上でビジュアル言語を得意とするアートディレクターであることは武器だと思うし、流行り廃りのない本質的なクリエイティブで答えを出せるプロでありたい。多くの人を巻き込みながら、自分もプレイヤーとして関わっていきたいという熱意を伝えることも大事にしたいです。今後は大手企業や有名ブランドの仕事はもちろん、これまで関わりがなかった、新しい分野の仕事にもっと取り組みたいですね」(増田さん)。
ちなみに独立のタイミングと新型コロナウイルスの拡大が重なったこともあり、RABBITのオフィスはまだ設けていない。「あえてオフィスがない状態でどこまでチャレンジできるか。今までの働き方にとらわれない、フレキシブルなワーキングスタイルも開拓していきたい。そういう想いに共感する方がいたら、ぜひ声をかけてほしいです」。
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