増える富裕層、変化する価値観
男性向けラグジュアリー誌『LEON(レオン)』は2021年12月24日、「Club LEON 」を含む会員制サービスを開始し、公式オンラインショップ、各種SNS、公式Webサイト、そして雑誌本誌を束ねた「ONE LEON」プロジェクトを本格化させる。いわゆる「富裕層」をメインターゲットに、消費衝動を醸成する環境を強化した。
「ONE LEON」について『LEON』の石井洋編集長は、「本誌をはじめとした各接点で、富裕層へ『大人の艶のある人生、生きがい』を提供するプロジェクト。『LEON』が20年間培ってきた読者との信頼を通じ、コンテンツにとどまらない、所有・体験サービスを生み出していきます」と話す。
『LEON』のコアユーザーの75%は世帯年収1000万円以上で、10%が3000万円以上。中心は45〜54歳が占めるが、一方で、Webサイト「LEON.JP」を通じ、20歳代後半〜30歳代前半の若手経営者が増加中だ。読者アンケートでは構成比で33%にまで伸長した。
富裕層自体が、実は増加傾向にある。野村総合研究所が2020年12月に発表した調査では、純金融資産保有額1億円以上5億円未満の「富裕層」は、2017年の118万3000世帯から、19年は4.8%増の124万世帯に伸びた。5000万円以上1億円未満の「準富裕層」は17年の322万2000世帯から、19年は6.1%増の341万8000世帯となっている。
しかし「富裕層」の字面から想像されるような、「大いなるムダを楽しむ」といった消費観はそこにはない。石井編集長は「読者と直接に対話していると、非常にクレバーでシビアだと感じます。彼らがいま求めているのが『大人の艶のある人生、生きがい』であって、本質を見極めよう、本当に自分のためになるかを考えよう、という気持ちがまずある。かつては繁華街での“武勇伝”を語っていた男性が、ウェルネスやビューティに気を配り、将来を見据えた購買をするようになりました」と指摘する。
【資料ダウンロード】富裕層へのフルファネルアプローチを可能にする「ONE LEON」プロジェクトとは
さらに、先輩富裕層が本質を見るようになったからこそ、若手富裕層がむしろ魅力を感じ始めている。
「彼らは若いうちに起業して成功したわけですが、水面下ではそれこそ必死に、仕事最優先で働いてきたわけです。高級レストランでの振る舞い方や、時計やクルマについて知らない方も少なくありません。そういったことを吸収できそうな、さらには面白そうな大人が『LEON』周辺にはいる、とそういった期待をしてくれています」(石井編集長)
魅力的な富裕層市場だが、簡単にアプローチできるとは限らない。たとえば新型コロナウイルス感染症の拡大で苦境を強いられている百貨店を下支えしたのは、富裕層とパイプを築いている外商だった。同様に、20年間、富裕層読者と関係を構築してきた『LEON』が、一層ブランドから富裕層へのアプローチを強力にバックアップしたい、というのが『ONE LEON』構想である。
「富裕層がいま求めている情報や所有、体験といったものを、フルファネルで提供するのが『ONE LEON』です」と話すのは、LEON編集部メディアビジネス事業室の唐沢裕室長だ。
「SNSやライブ動画配信のようなオープンな情報発信による認知獲得から、本誌で購買意欲の醸成、公式オンラインショップ『買えるLEON』で購買行動につなげ、会員サービスやイベントを通じ関係構築を堅固なものにする。さまざまな業種の課題に合わせたソリューションを提供できるようになりました」(唐沢室長)
高額イベント契機にベンツ2台販売
すでに手応えは得られ始めている。メルセデス・ベンツ日本の事例がそれだ。有料イベント「DISCO LEON(ディスコ・レオン)」での車両展示を通じ、1000万円以上の「メルセデス・ベンツ」を2台、販売した。
通常のイベント展示と大きく異なるのは、参加費が1万7000円かかり、さらには抽選にまで発展した人気イベントであったことだ。石井編集長は、「強力な目的意識を持って来場されるタイプのイベントで、その点ではほかとは一線を画します」としながら、「われわれとしても車両を展示するだけで単純に売れるとは思っていません」と語る。
「Webや動画、本誌といったタッチポイントで、『メルセデス・ベンツ』というブランドへの興味・関心を高めた挙げ句、有料かつ限定参加のラグジュアリー感あふれるイベントで、実車に接触する。だからこそ、『せっかくならこの機会に』というふうに考えていただけたのではないかと思います」(石井編集長)
「このように私たちメディアビジネス担当者にとっては、クライアントの要望へ、より一層柔軟に、適切にお応えできるような手立てが揃ったと考えています」(唐沢室長)
「『LEON』にご期待いただく点は、原理原則としては消費衝動を刺激するということですが、その仕方は時代に合わせて変わるものだろうと思います。特に高額で耐久消費財となれば、衝動的に買われるケースは少なくなります。『ONE LEON』で読者に対してふだんから、さまざまな方向でコミュニケーションを重ね、消費衝動を高めていく戦略的な支援ができればと思います」(唐沢室長)
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公式オンラインショップの「買えるLEON」と「Instagram」でのライブ動画配信との組み合わせは、唐沢室長が言う「時代に合わせた訴求の仕方」が結実したケースのひとつだ。
競合商品が1万円前後で打ち出している中、4万〜6万円するダイソンのドライヤーをどう訴求するか。その答えが、『LEON』読者に自宅でパートナーと使うためのものとして、あるいは贈り物として、購入してもらおう、という施策だった。女性からの支持が厚い、モデルの福田萌子さんを起用したInstagramのライブ配信を行い、直接「買えるLEON」へ送客。結果、紹介した2機種のうち、一方は完売となっている。
「単に訴求して終わり、ではなく購買というステップへ進んでいただきやすいこと、さらに言うなら、ECサイトを通じた購買行動の把握、履歴について分析できるのも強みになっていると思います。消費衝動の刺激という命題の下、売り場も『LEON』流。現在はアパレルが多くはありますが、ディナーセットを販売するなど、カテゴリーにしばられず、『大人の艶のある人生』のためのモノやコトを提供できると考えています」(唐沢室長)
新たなメディアビジネスの嚆矢に
「『ONE LEON』は編集部にとっても大きなチャレンジになる」と石井編集長は力を込める。同氏の念頭には、雑誌市場の縮小がある。『LEON』はWebサイトや各種SNS、動画配信、ECサイトと、読者との接点を拡大してきたが、その傍ら、「ひところに比べて、編集者という職業に魅力を感じない人のほうが増えているかもしれない」という危機感が言外にもにじむ。
伝える情報に驚きがあったり、学びがあったり、というのはもちろん、「『LEON』が言うんだから間違いないだろう」と誌面で紹介した品が買われたり。こうしたことの根底には読者の信頼向上があり、それこそが『LEON』のビジネスドライバーであることに変わりはない。
「ただ21年目に向けて、もっと価値を可視化したいし、読者に合わせてもっと多彩な情報やサービスを提供したい。我々自身の価値を高めることにおろそかであってはいけない。その過程で我々も、職人気質の編集者時代から――これまでのクリエイティブスキルを継承した上で――ビジネスにも長けた編集者に進化を遂げる必要はあるはずです」と石井編集長は強調する。
その上で、「ONE LEON」の中でも大きな期待がかかるのが、会員制サービスの柱となる「Club LEON」だ。2021年12月時点では非公開ではあるが、いくつか水面下でプロジェクトが進んでいる。衣・食・住・遊の各分野で、特に〈LEON不動産〉〈遊ぶLEON〉というフレーズが内部資料にはある。
これは他業界との協業の構想。従来のコラボレーションのように読者についての知見を注入するだけでなく、きちんと取り組み先とのビジネス開発から歩みを共にしようという考えだ。
「現在、一部は契約の取り交わしを終え、すでに実務レベルでの準備が進んでいます。これはビジネスに長けた編集者への進化の第一歩。各業界を編集者一人ひとりが学び取り、次世代の編集者を育てたいという思いもありますし、もっと言えば、『LEON』が新たなメディアビジネスの嚆矢になるための挑戦だと考えています。編集者2.0であり、出版2.0も見据えたプロジェクトにご期待ください」(石井編集長)
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