スペースXから船外活動まで!現役飛行士が語る宇宙飛行のリアル(ゲスト:野口聡一)【前編】

進化し続ける現代の宇宙船

中村:さあ、そんな方に時間をいただいたんでね。まず初めに毎回ゲストの方にお願いしている「20秒自己紹介」をお願いできればと。前回もやっていただいて。

野口:そうですか。

中村:はい。この『すぐおわ』は、一応広告の番組でございまして。

野口:なるほど。

中村:野口さんご自身の自己紹介をラジオCMの秒数、20秒に合わせてやってくださいませということで……。

野口:前回やったやつ、もう1回使えばいいんじゃないですか。

一同:ははは。

権八:ダメ!

野口:それはダメなんですね。

中村:それやってもバレないかもしれない。

野口:バレないかも。たいして変わってないじゃんって。

中村:いってみましょうか。

権八:5年ぶりの自己紹介ですね。

中村:最近のご趣味など何でも!脱線しても構いませんので。

野口:確かに。

中村:いきます。では、どうぞ!

野口:はい。5年ぶりの登場になりましたJAXA宇宙飛行士野口聡一です。1度目はアメリカのスペースシャトル、2回目はロシアのソユーズ、そして3回目はスペースXのクルードラゴンということで、3つの宇宙船に乗って帰ってまいりました。地球では広告業界に一番近い宇宙飛行士、野口聡一です。

中村:素晴らしい。

権八:最後、だいぶ巻きで。

野口:だいぶ巻きました。

澤本:本当に宇宙飛行士の概念、変わっていると思うんだよ。このお方のおかげで。

権八:そうですよね。

野口:ありがとうございます。

澤本:面白いもんね、だってね。

権八:ですよね。

野口:これ終わったんで、もう帰っていいよね。

一同:ははは。

権八:それ、前も言ってました。

野口:前も言ってた?

権八:そっか。3回行かれて。

野口:はい。3回行きました。

中村:3回目って、スペースX?

野口:そうなんですよ。話題の。テスラのイーロン・マスクのね。

中村:そうなんだ!

野口:イーロン・マスクは億万長者ですけども、彼がCEOのスペースX社がつくっているクルードラゴン宇宙船は、本当にスタイリッシュでね。あとは設計が新しい。スペースシャトルや、ロシアのソユーズもそれぞれ素晴らしい宇宙船ですけど、やっぱり70年代、80年代の設計なんですよ。ですから、スイッチパネルとかバルブが、所狭しと並んでいるんです。ちょっと前のSF映画って言うと変ですけど、宇宙戦艦モノみたいな内装に非常に近い。けれど、スペースXのクルードラゴンは本当にショールームにいるようなんですよね。

一同:へえ~。

野口:あるいはモーターショーに出てくるコンセプトカーみたいな。スイッチが全然ないですね。座席、内装、インテリア、そして宇宙服含めて、非常に統一感のあるデザインで。やっぱり全部スペースXが自前で開発している強みがすごい出ている。

そういう意味で、これからどんどん宇宙への商業旅行が一般的になっていくと思うんですけども、「こういうのに乗って宇宙行きたいな」と感じさせるパッケージづくりが上手だなと思いました。

中村:やっぱりそうなんだ。

澤本:僕、2年ぐらい前にNASAに見学に行かせていただいたんですよ。その時、NASAのなかを回って見るツアーがあって、やっぱり昔の宇宙船と全然違いますもんね。

野口:そうですね。

澤本:もはやMacやiPadに近いような感じで。

中村:そうですよね。だって、テスラは車に巨大なiPadみたいなのがあって。

野口:おっしゃる通り。

中村:ほぼ物理ボタンないみたいな。

野口:はい。そういう意味では難しい言葉で、「マンマシンインターフェース」って言い方をしますね。人間と機械の間に、どういう形でインタラクト(影響を与える)していくかと。

昔であればまさに物理的なスイッチでありました。つかんで回すバルブだったり、なんといっても操縦桿ですよね。車で言うところのハンドルである操縦桿。まさに人間が、「こうやって機械を動かしたい」っていうのを機械に伝えるには、ひとつの部品にひとつの役目しかないという。このスイッチを上に上げると、この電球がつくみたいなね。

ひとつのデバイスで表示とインプットが瞬時に切り替わっていく考え自体、以前はなかったんですよね。今やスマホでは当然だけど、宇宙船にそれがようやく入ってきたっていうことです。

中村:「ヒューマンインターフェース」のことを考えてくれているから、体験としてもやっぱり簡単なんですか?

野口:そうですね。もう直接的な効果として簡単で、分かりやすい。あとはミスをしにくいっていうのはありますね。

もちろんヒューマンエラーは、完全にはゼロにはならないですよ。けれど、昔のスペースシャトルやソユーズの場合には、非常に緊迫した場面で、今知りたい情報はこれなのに、なかなかそこにたどり着かないっていう状況があったんですけど、今は機械やシステムがオペレーターが必要とする情報を取捨選択して出してくれる。それによって、非常に緊迫した場面でのストレスや精神的な負荷は、非常に軽くなると思いましたね。

権八:でも、今聞いてると、それこそ映画の『2001年宇宙の旅』に出てくる(人工知能を備えたコンピューターの)「HAL 9000」じゃないけど、やがて宇宙船の方がより進化しちゃったり……。こちらが想定していないようなこと起きないんですかね?本当のことを必ず提示してくれるとは限らないみたいな。SFの見過ぎかもしれないですけど……。

野口:なるほどね。特にAIに関しては、やっぱりそういう恐れは必ずあると思います。だけど、実はまだそこまで賢くない。今は、「この状態では、このデータとこのコマンドを知りたいでしょう」っていう、地上のプログラマーがあらかじめ選択しているものをパパっと早く出してくれるだけで、機械やシステムが完全に操縦を乗っ取れるわけではないと。

まさに今、権八さんがおっしゃったような、いわゆる最終的な権限を人間と機械のどちらが持ってるかは大事な問題ですけど、今のところは人間側が持っていて、宇宙飛行士がその権限をいかにうまく使えるかの手助けを、機械側がバンバン出してくれる段階だと思います。

次ページ 「極限状態に追い込まれたときの反応を自覚しておく」へ続く

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