唯一の“ウーチューバー”!?、多才過ぎる宇宙飛行士の素顔(ゲスト:野口聡一)【後編】

宇宙から見る幻想的な太陽と月の光景

中村:あとは、それこそリアルタイム配信も、のひとつである「KIBO宇宙放送局」(JAXAとバスキュール「東京、港区」との事業実証活動)で見れましたよね。宇宙からの初日の出を見よう!みたいな。僕は残念ながらリアルタイムで見れなかったのでアーカイブで見たんですけど、宇宙の初日の出ってすごいカッコいいんですよ! 富士山の脇からぽよ~んと出てくるご来光じゃなくて……何て言うんですかね。本当に、「宇宙が始まった!」という神々しさがありますよね。

権八:初日の出っていうことは、地球の向こうから太陽が昇るっていうこと?

野口:そうですね。地球の自転より我々の方が早いので、太陽がグーっと出てくる方向に回っていくと、早回しの日の出になるんですよ。なので、今おっしゃられた通り、ドラスティックな、ダイナミックな日の出になるんですよ。

澤本:あ~、そうか。

野口:もちろんリアルタイムなんですけど、見ているとブワっと上がってくる感じで。あと、本来のご来光のような初日の出は、いわゆるトワイライトゾーンがあるので、明るくなる30分ほど前から徐々に慣れてきてるわけですよ。でも宇宙は空気がないので、日の出の瞬間まで真っ暗。地上も真っ暗なので、日の出直前に大気圏による空気のベールが明るくなって、「まだかな、まだかな」って待っている瞬間にポッと出てくるんですよね。

中村:そうですよね。

野口:その時の光が強烈で、野火のようにバーッと広がり、地球があっという間に昼間に変わるんですよね。その変化が極めて即物的かつ、早回しで変化を見られるのが面白い。なので、宇宙飛行士も過去に「初日の出いいよ」って何度も伝えているつもりなんですよね。1日16回見られて、夜からあっという間に昼になるからと。ただ、まず言葉のインパクトがなく、映像としても捉えきれていませんでした。

そういう意味では我々も努力不足でしたが、その捉えようとしていなかったダイナミックな変化を、KIBO宇宙放送局はそれだけに特化した番組にしています。我々からすると、「いや、日の出って言っても、1日16回あるから」「ダメだったら90分後にリテイクだから」といった感じだったけど、日本の年が明けた深夜1時10分ぐらいの最初の日の出に絞って。その1本に合わせていろんなイベントを組んで映像を出すと、一世一代という感じになるんだと思いましたね。そこは民間ベンチャーのアイデアが生きたんだと。実際はそれに合わせて結構な時間を費やして大変だったんですけど、結果的にいい映像が撮れて良かったと思います。

権八:お話の中で、サラッとテイク16と。つまり1日地球の周りを16周しているってことですか?

野口:そうですよ。1日16周しているので、「日の出、綺麗だったなあ」と思えば、90分待てば同じように見えるんですよ。

一同:ははは。

野口:日の出もいいんですけど、特に満月ですね。満月の出と満月の入りは、強烈に美しいので。

一同:へえ~。

野口:満月は30日に1回しか来ないので、「十三夜、十四夜。明日、満月だから」って数えるんですよ。満月の出も1日16回あるので、タイマーで測って。また面白いことに、月が出る方向も毎日微妙にズレて違うんですよ。一応、軌道計算ソフトで「何時、何分、何秒」に月の出が見られるとしっかり計算してくれるんだけど、我々が実際に使う窓からどこに見えるかは、その日にならないと分からない。

なので、満月の日は朝起きるとまず見て、「あっ、すごい」「今日はいいよね」となったら、そこからタイマーをかけて、次はカメラで待ち構えて撮るんです。それで「よかった、よかった。じゃあ次はちょっとカメラセッティング変えてやってみよう」と、90分後にもう1度月の出を撮って……。

しかも、方角によっては月の入りの方が遥かに幻想的だったりもします。月の出は早戻し効果もあって、割とぽわんと出てくるんですよ。でも、満月の入りは大気の海にとぷんと落ちてくるような視覚効果になるので、幻想的という意味では遥かに幻想的。大気のベールに消えていく月が見えますから。

澤本:大気があるから。

野口:そうでなければ、要は地球の向こう側に行っているだけのことなんですけど、大気のベールがあるから、ふわっと沈んで、とぷんと落ちていく。なので、オススメは満月の入りなんですよね。

権八:それは、“ウーチューバー”の野口さんの映像で見れますかね?

野口:あります。

権八:それは見よう。

野口:ショパンの『別れの曲』をあてて、それだけで1本つくっているんですよ。僕の演奏の『別れの曲』で。

権八:えっ? ちょっと待って。何々?

野口:大したことないんですけど。

権八:情報が渋滞して。えっ? ピアノですか。

野口:電子ピアノで演奏しています。宇宙にあるんです。国際宇宙ステーションに。

中村:ピアノがあることもだし、野口さんがピアノを弾けるっていうのも驚きだし。

野口:撮影も僕だしね。撮影、編集、録音。そういう意味で、セルフプロデュースで世界をつくれるのは面白いと思います。

澤本:すごいね。淡々としゃべられるけど、すごいこと言ってるよね。

次ページ 「将棋の名人戦が宇宙で実現する可能性も」へ続く

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