さらなる革新へ向け、次なる挑戦を開始した。講談社が思い描く出版広告、ビジネスイベントの将来像とは?同社ライツ・メディアビジネス局 局次長の鈴木伸育氏に聞いた。
2度目のオンライン開催、「アワード」を復活
講談社は2021年11月18日、「講談社メディアカンファレンス2021」を開催した。2021年のテーマは「Inspire Impossible Stories 新しいカタチで届ける、繋げる」。同社のパーパスである「おもしろくて、ためになる」を世界に広げるべく創作された言葉、「Inspire Impossible Stories」を用いたものだ。
同イベントは2020年に引き続き、東京・池袋にある「ミクサライブ東京」からライブ中継し、完全オンラインで開催。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により実施を見合わせていた、優れた広告企画を顕彰する「メディアアワード」も再開し、さらに進化した内容となった。
「講談社メディアカンファレンス」は、優れた広告企画を表彰する「メディアアワード」の受賞企画の発表他、これからの広告の在り方を考える「学び」、広告主との交流を図る「懇親」を3つの柱とするビジネスイベントだ。
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コロナ禍において2020年はアワードの開催の中止を余儀なくされたが2021年に「アワード」を復活させたのは、「良い事例は、世に広く知れ渡るべき」という考えが根底にあると鈴木氏は話す。「その事例が新たなビジネスチャンスとなって、どこかで昇華するかもしれません。次の可能性を創出することが当イベントの存在意義であり、提供可能な価値のひとつなのです」(鈴木氏)。
「講談社メディアカンファレンス2021」のアーカイブ視聴はこちら
メディアアワードは前身である「読者が選ぶ・講談社広告賞」から数えると、通算で42回目の開催となっている。
広告営業戦略の新スローガンは“顧客基点”のソリューション
講談社のメディアビジネスは、2015年から「出版広告の再発明」というスローガンのもと、従来の広告枠セールスから、“コンテンツ基点のソリューション”へのシフトを目指してきた。同社が扱う豊富なコンテンツやIP、各編集部がつくる企画を広告ビジネスに生かすという提案を行っている。
さらに広告商品自体のデジタルシフトも推進。2021年は広告収入の約7割がデジタル広告となるなど、出版広告の技術革新にも取り組んでいる。そんな中、「講談社メディアカンファレンス2021」では、さらにその進化を図るべく、新たなスローガン“顧客基点のソリューション”を発表した。同社にとっての“顧客”とは、BtoC領域においては読者を含む生活者、BtoB領域では広告主を指す。
「顧客基点の発想をするためには、データが重要です。そのために当社は独自のシステムやプラットフォームを開発してきました。BtoC顧客(読者)には広告配信プラットフォーム『OTAKAD』、B2B顧客(広告主)には広告主企業向け情報ポータルサイト『C-Station』などでアプローチを図っています。これらのサービスをご利用いただく際、当社はお客さまから閲読データなどをいただいています。データをいただくからにはその対価として、お客さまに価値ある情報、コンテンツ、サービスで還元する、というのが当社の考えです」(鈴木氏)。
これからの役割は、広告主と読者を「繋ぐ」こと
“コンテンツ基点”のソリューションに加え、“顧客基点”のソリューションの提供を2022年の広告戦略として掲げている講談社。このソリューションの提供によって同社が実現を目指すのは、メディアとコンテンツによって形成された読者コミュニティをブランドのコミュニティと繋げることだ。それにより、広告主に「リーチ」と「熱のある共感」の2軸の効果の最大化を顧客に提供する。
これまでの出版広告の在り方を考えてみても、あるコンテンツに対して、その読者に親和性のあるブランドの広告を届けるとリーチも広告効果も上昇することは明白だった。さらに、ブランドへの共感も醸成され、購買に結びつく可能性も高まることは容易に想像がつく。しかし、これでは“コンテンツ”の文脈に合った広告を読者に届けているだけに他ならない。狙った読者コミュニティや生活者に受け入れられ、共感されるためには読者のあらゆるデータが必要になる。
「これまで進めてきた“コンテンツ基点”の広告展開では、コンテンツの文脈やその読者コミュニティに合うような広告を届けるということだけに留まっていました。2022年はそこに“顧客基点”を追加することで、広告主企業が本当に情報を欲している読者に対して、より精緻に広告を届けられることが可能になります。それにより、ブランドに対する大きな共感も醸成するきっかけにもなるでしょう。そのような意味で、講談社の広告営業が今後担っていくのは、当社の豊富なコンテンツを活用しながら、読者(生活者)と広告主を“繋ぐ”役割だと思うのです」(鈴木氏)。
さらに鈴木氏は、同社のパーパスである「おもしろくて、ためになる」は、メディア作品やコンテンツに限って使われる言葉ではなく、同社が目指す広告のかたちも「おもしろくて、ためになる」ものだと続ける。
「年々、広告が生活者に嫌われているという調査結果を目にする機会が増えています。嫌われないようにするためには、生活者が“追いかけたくなる広告”を提供しなければなりません。そこで理想となるのが当社のパーパス。『おもしろくて(読者の心を動かす)、ためになる(=広告主の成果につながる)』広告なのです」(鈴木氏)。