歴代CMの印象的なシーンをイラストに
「雪男。雪女。」(1991)、「愛に雪、恋を白。」(1998)、「ぜんぶ雪のせいだ。」(2013)――各世代で印象的なクリエイティブを生み出してきた「JR SKISKI」キャンペーンの始まりは、1991年までさかのぼる。以降、毎年展開していたが、1998年を最後に宣伝の規模や手法を見直した。2000年代は2006年のみ実施し、再開したのは2012年のこと。東日本大震災の復興支援になればと、その後現在まで毎年続いている。
歴代のコピーは一倉宏氏(1998)、白石大介氏(1995-1996/博報堂)のほか、ジェイアール東日本企画の武藤庄八氏(1991-1994)、吉田明生氏(1997)、大野健氏(2006)、山口広輝氏(2012-2021)らが担当してきた。
作者別・歴代コピーの一覧(敬称略・年代順)
・武藤庄八(ジェイアール東日本企画)1991年~1994年
・白石大介(博報堂)1995年・1996年
・吉田明生(ジェイアール東日本企画)1997年
・一倉宏 1998年
・大野健(ジェイアール東日本企画)2006年
・山口広輝(ジェイアール東日本企画)2012年~2021年
30周年を迎えた今シーズンのコピーは「あの冬が、呼んでいる。」。2012年からコピーを手がけてきた、ジェイアール東日本企画 クリエイティブディレクター/コピーライター 山口広輝氏が担当した。
「過去のテレビCMやコピーに触れると、誰もがキラキラした冬の思い出が蘇ってくる――そういうパワーを持っているのが『JR SKISKI』。30周年にあたり、見た人それぞれの心に残っている“あの冬”を重ね合わせてほしい、という思いを込めています」。
JR東日本の主要駅構内に掲出された、歴代コピーのポスターは19種類(うち1種類は赤城乳業のキャラクター「ガリ子ちゃん」とのコラボによるレア版)。タイアップ楽曲や主役を演じるキャストの存在が鮮烈な印象を残してきたキャンペーンだが、グラフィックではコピーを主役に。コピーに添えられたイラストは、当時のテレビCMの一場面を想起させる。
「ポスターの制作にあたって、世代が異なる人たちに印象に残っているCMや具体的なシーンなどをヒアリングしました。イラストは実際に多く挙がったシーンをキャプチャしてから、トレースして描いたもの。あえて人の顔を描かずに、抽象的なトーンに統一して仕上げています」と話すのは、ジェイアール東日本企画 アートディレクター 武山範洋氏。
周年を機に“経験者層”を呼び戻す
元々「JR SKISKI」は学生など若年層向けに展開してきたが、前シーズン(2020-2021)では、かつてスキーを楽しんだ“経験者層”をコアターゲットに設定。今シーズンも、かつて「JR SKISKI」の広告を見て旅行に出かけた人たちに訴求している。「特にコロナ禍で若年層のスキー誘致は難しい状況があります。今回は過去の広告を懐かしんでもらうことはもちろん、コロナ禍でスノーレジャーに出かけられない層を呼び戻したいという思いにも合致しました」(山口氏)。
さらにエイベックス・エンタテインメントからは過去の楽曲やCMを収録した『JR SKISKI 30th Anniversary COLLECTION スタンダードエディション』も2021年12月に発売。エイベックスとのタイアップで、今シーズンのポスターも制作した。
「JR SKISKIらしい新幹線が向かってくるビジュアルに、このパッケージのジャケットを重ねました。よく見ると、ジャケットの上にはレコードショップの手描きPOPのようなあしらいを入れています」(武山氏)。
1月末まで、Twitter上で歴代コピーの人気投票も実施している。「僕自身、一倉宏さんのコピー(1998)は特に好きですね。でももちろん毎年、最高傑作を更新するつもりで書いています。スキーの魅力を伝えるだけでなく、冬の観光地に出かけたくなる機運をつくる役割も担ってきた広告なので、それぞれの“あの冬”を思い浮かべてもらえたら嬉しいです」(山口氏)。
スタッフリストは以下のとおり。
スタッフリスト
- 2020-2021
- 企画制作
- ジェイアール東日本企画+モズデザイン
- CD+C
- 山口広輝
- AD+D
- 武山範洋
- D
- 里岡正大、大島勇樹、赤平詩音
- 歴代コピー
- C
- 武藤庄八(1991-1994)、白石大介(1995-1996)、吉田明生(1997)、一倉宏(1998)、大野健(2006)、山口広輝(2012-2021)