資生堂は1月23日、ことし創立150周年を迎えるのを機に、企業広告としてテレビCM「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」篇のオンエアを始める。創業当時から現代に至るまで、かつての広告へのオマージュも散りばめながら、通底する企業理念を描き出した。
CMは1872年、民間洋風調剤薬局として創業した資生堂の店舗や街並みを再現したカットから始まる。当時、一帯はかつて出雲藩(現在の松江市)の受領地だったことから、〈出雲町〉と呼ばれていた。通りには、出雲から送られた出雲椿(ヤブツバキ)を街路樹として植えたことから、「花椿通り」と愛称がついている。花椿と言えば、資生堂のシンボルだ。
時は下り、1982年の「ルア リップカラー クリエイター」のCMを踏まえたオープンカーのシーンに。当時は「口紅マジック」のキャッチフレーズどおり、床をくり抜いたオープンカーのような座席を設けた不思議な印象の映像だったが、今作では街中を走る。
美容部員(ビューティコンサルタント)のルーツである「ミス・シセイドウ」のシーンでは、実際に着用していた制服をもとに衣装を制作。「ミス・シセイドウ」の第1期生デビューは1934年で、「良家の子女求む」という資生堂の新聞広告に対し240人以上が応募。その中から9人が選抜され、容法や美容技術を芝居形式で紹介する「近代美容劇」を日本各地で公演した。終演後には観客一人ずつの美容相談に応じ、「美容処方せん」を書いて渡していたという。百貨店などのカウンター接客の原点だ。
CMソングは、1978年に一世を風靡した「ベネフィーク グレイシィ」のCMソング「君のひとみは10000ボルト」を、中村佳穂さんがカバー。当時のグラフィック広告、CMのメイクや衣装なども精密に再現した。1980年発行の『ブレーン別冊 テレビ25年の記録 CMグラフィティ〈第2集〉』所収の記事「〽君のひとみは一○○○○ボルト……イメ・ソンの圧倒的支配に終わったCF’78」では、商品名を連呼するコマーシャル・ソングから、商品のムードを伝えるイメージ・ソングへの移り変わりが綴られている。
山口百恵の「プレイバック Part2」の歌詞で、「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」と変えさせていた『NHK紅白歌合戦』でも、直接商品名が出ないとなればイメージ・ソングには寛容。「君のひとみは10000ボルト」のコピーは資生堂宣伝部出身のコピーライター土屋耕一氏の手によるもの。谷村新司さん、堀内孝雄さんらの手で書かれた同名の楽曲はヒット曲となり、前掲の記事は「歌の力で商品を売り込んだ時代が去って、商品のCFで歌を売る時代になってしまった。」と指摘する。
1966年の資生堂サマー化粧品「太陽に愛されよう」の広告に出演した前田美波里さんは、当時の広告を本人が再現。全編を通じて、かつて・現在を対比するカノンのような構成を通じ、資生堂が150年間で変わったこと、変わらないことを伝える映像となっている。
スタッフリスト
- 企画制作
- (つづく)、電通
- ECD
- 田辺俊彦
- CD
- 秋永寛
- AD
- 田中せり
- C
- 三島邦彦、濱田彩
- STPL
- 木村啓太
- AE
- 長谷川陽一、藤澤佳穂
- CPrd
- 兼清剛
- Prd
- 神宮広志、内田安和
- 演出
- 児玉裕一
- 撮影
- 内田将二
- 照明
- 米井章文
- 美術
- 柳町建夫
- 編集
- 坂巻亜樹夫
- CG
- jitto
- 音楽
- 富永恵介
- MA
- 増富和音
- ヘア
- 豊田健治、谷口丈児
- メイク
- 岡野瑞恵、阿保麻都香、伊藤礼子、渋沢知美、山田暢子、中山夏子、贄田愛
- エグゼクティブST
- 北澤momo寿志(メインキャスト、サブキャスト)
- ST
- 三田真一(メインキャスト)
- CAS
- 山口麻衣子
- 出演
- 安藤サクラ、池田エライザ、石田ゆり子、小松菜奈、近藤華、長澤まさみ、広瀬すず、前田美波里