【対談】東京2020大会のレガシーとは?(長田新子氏×山本啓一朗氏)

スポーツが持つ“相互リスペクトの心”と“求心力”

――長田さんが携わられている渋谷区は、ダイバーシティ&インクルージョンの先端都市を目指して活動していると思いますが、東京2020大会はダイバーシティ&インクルージョンの推進にどのような影響を与えたのでしょうか。

長田:オリンピックでは、若いスケートボーダーが国境を超えて皆からリスペクトされている様子がフィーチャーされたり、多様性のあるパラリンピアンの活躍に熱狂したりといったことを通して、多くの人がスポーツの中にあるダイバーシティ&インクルージョンに気づいたのではないかと思います。

私が現在、所属している渋谷未来デザインでは2年ほど前から、スポーツ・チャンネル「DAZN(ダゾーン)」と協業し、スポーツを通じてダイバーシティ&インクルージョンをサポートする取り組みを実施しているのですが、キーメッセージとして「#RESPECT IS KNOWING」を掲げています。これは、「互いを知ることで尊重が生まれる」という意味。
スポーツに接していると、アスリートたちがフィールドの上で互いがパフォーマンスすることを称え合っているシーンによく出会います。同じフィールドに立つ仲間だからこそ、そこでは人種やジェンダー、障がいの有無を超えて、皆がリスペクトし合っている。“違い”によってパフォーマンスの評価にバイアスがかかるのではなく、違うことをリスペクトし合うことを、もっと伝えていけたらと活動しています。
東京2020大会では、このようなリスペクトの心がスポーツシーンに存在していることが、より多くの人に伝わったのではないかと思います。

渋谷未来デザイン 長田新子氏

山本:本当におっしゃる通りだと思います。私は“皆が受け入れやすい”という点でもスポーツの力は大きいと考えています。例えば、障がいについて勉強して知ることも大切だと思いますが、パラリンピック競技でもあるボッチャを実際にやってみるとか、オリンピアン、パラリンピアンの応援に熱狂することで、自然と障がいについて知り、そこから発展して深く考えるようになる。このような入り口としてスポーツは非常に有効だと思いますね。

もうひとつ感じるのは、パラリンピックが注目されたことで、パラスポーツが自分たちにとってなじみのあるスポーツのスケールダウンではなく、まったく異なるスポーツであると理解した人が多いのではないかということです。無意識のうちにパラスポーツに抱いてしまう認識は、育ってきた環境や地域、時代背景などにも関わるため、簡単にはぬぐえないものです。
だからこそ生活に身近であり、受け入れられやすいスポーツなどを通して、発信し続けていくことが重要だと考えています。


 

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