cotta、竹下製菓 社長対談「生活者インサイトをつかみ企業ブランドをアップデートする」

時代の変化に応じて生活者インサイトをつかみ、自社の価値を伝え、ブランドを成長させるには何がポイントとなるのか? ECを通じBtoBからBtoCへと事業を拡大するcottaと、ロングセラーブランドの市場拡大を図る竹下製菓。先代から事業継承した経営トップ2人が語り合う。

※本稿は広報会議2022年3月号特別企画「組織を強くする企業ブランディング」(2月1日発売)に収録の内容を転載しています。対談は「宣伝会議リージョナルサミット」にて実施しました。

 

(写真左)
cotta代表取締役社長 黒須綾希子氏

くろす・あきこ 1984年大分県生まれ。明治大学卒業後、インテリジェンス入社。2010年タイセイ(現cotta)入社。2014年同社のECサイト運営会社TUKURUを設立。2020年より現職。3児の母。

 

(写真右)
竹下製菓代表取締役社長 竹下真由氏

たけした・まゆ 1981年佐賀県生まれ。東京工業大学大学院卒業後、アクセンチュア入社。2011年竹下製菓に入社、製造ラインの改善などに取り組む。商品開発室長を経て、2016年現職。3児の母。

 

伝え方を変えて顧客を開拓

─事業について教えて下さい。

日本最大級のお菓子・パンづくりのECサイト「コッタ」。扱いアイテムは3万点。約4割がプライベートブランド。

 
黒須:cottaが運営する「コッタ」は、お菓子・パンづくりにまつわる日本最大級の通販サイトです。大分県で1998年に創業した当時は、お菓子、パン屋様向けに包材を翌日にお届けするビジネスでした。しかしコンビニスイーツブームで街のお菓子屋さんが淘汰されたことを機に、「コッタ」を立ち上げ、BtoB、BtoC両方で売上をつくっていくことにしました。約160万人の会員がいます。

竹下:竹下製菓は、アイスクリームの「ブラックモンブラン」が主力のお菓子の会社です。チョコレートをまとったバニラアイスにクッキークランチをつけたアイスは、1969年の発売当時、珍しい商品で子どもたちのハートをわしづかみました。創業は120年以上前にさかのぼります。夏に甘いお菓子が売れなかったことからアイスの販売を開始。3代目社長がアルプス山脈の最高峰「モンブラン山」を眺めた時に感じた「この白い山にチョコレートをかけて食べたらさぞ美味しいだろう」という思いを商品化したのがブラックモンブランです。

1969年に発売した「ブラックモンブラン」。

 
─ブランドを進化させるために取り組んでいることは?

黒須:お菓子やパンづくりを趣味にされている方に喜んでもらえるよう、レシピ記事やインフルエンサーを起用したりしてコンテンツをつくってきました。サイトの滞在時間は伸び、アンケート調査の結果も良い。しかしある時から売上とPVが伸びなくなりました。実はマニアック路線に走りすぎて頭打ちしていたんです。小麦粉を100種類そろえて違いを紹介する、といったことは目の前のお客様が喜んでも、誰も入って来られません。「お菓子づくりをやってみたいけれど難しそう、時間がかかりそう、失敗しそう」。そう考える人が前に一歩踏み出せるような提案が必要でした。

さらにバレンタイン向けにチョコレートづくりを呼びかけるCMでテストマーケティングを行ったところ、PVは伸びても購入されず、気づいたんです。サイトに来てもチョコレートがいっぱいありすぎて選べないのだと。

そこで「これだけ買えば間違いがない」というパンづくりのキットをつくり、簡単につくれる提案をしました。抽選1万名に対し33万名の応募が集まり、どれだけ潜在ニーズが隠れていたんだろう、とひしひしと感じ、苦しかった壁を乗り越えることができました。

これだけ買ったら簡単につくれるというパンづくりキットを提案。抽選1万名に対し33万名応募。選択肢を絞った見せ方で、マニアック路線を脱却。非顕在層にアプローチ。

 

2021年2月にバレンタインキットを販売。「つくってみたいけど難しそう」という不安を払拭。当初の予定を大きく超えて3万個販売。

 


 

ブランドを再認識する仕掛け

竹下:日持ちするのでお供えものとして置かれることの多い砂糖菓子があるのですが、日常で食べる人が減り、大量生産でつくるメーカーが当社以外なくなっていました。今風に生まれ変わらせればニーズがあるのではないか、と形状とフレーバーを変え、百貨店に入っている直営店で販売する高級お菓子としてリブランドをしました。九州のご当地食材を練り込んでいます。ちょっとした手土産にも使え、「ブラックモンブランの会社がこんな面白いことをやっているんだ」と取り上げてもらえるようになりました。

焼いたマシュマロをクラッカーではさむ「スモア」が流行ったときは、ブラックモンブランをマシュマロでコーティングし、炙って食べる商品を通販限定で売り出したところ、メディアに取り上げられ、九州以外のエリアで知っていただくきっかけになりました。

他にも、お土産用商品で新しいチャネルを開拓したり、「しばらく食べていなかったけれど、もう一度食べてみよう」と思わせるきっかけづくりのためにコラボ商品を開発したりしています。保冷剤風のブラックモンブランのパッケージもつくりました。アイスを冷凍庫に入れていたら家族に食べられていたという経験は誰しもあると思いますが、これなら気づかれない、という商品です。「竹下製菓はこんなこともやっているの」と再認識してもらうためです。ブランドをせっかく確立しても放っておいたら廃れてしまいますから、盛り上げるための企画に取り組んでいます。

冷蔵庫にそのままおくと、まさに保冷剤の擬態アイス「DO NOT EAT」。冷凍庫に紛れ込ませると、さらに擬態度がアップ。「竹下製菓はこんなこともやっていたの」とブランドを思い出してもらうきっかけづくりに。

 

─ブランドを発展させていく上でのインターナルコミュニケーションは?

黒須:トップダウンで方針を決めてしまうと社員が思考停止してしまいます。しかし、すっと行動に移った伝え方があって、それは「お客様がこれを求めていますよ」というコミュニケーションでした。そこに私自身のメッセージを載せていくのです。私の発信する言葉がお客様の代弁になるように、社員の誰よりもお客様の話を聞く機会を設けるようにしています。

竹下:上司と部下のすれ違いが減るように1対1で直接話す場を少しでもつくるようにしています。年次が若い人ほど上司からの言葉を理解するまでに時間がかかりますから。また業務時間に皆でBBQする時間もつくっています。共同作業があるとやりとりが生まれます。結局、人と人なので、そうしたコミュニケーションの場をつくって、互いの理解を深めていくことが必要だと思います。
 

広報会議3月号

広報会議3月号特別企画「組織を強くする企業ブランディング」では、「企業の資産を活用しながら、いかにブランドを継続して成長させるか?」という先を見通した経営視点と、「社会の文脈に沿った共感をいかに生み出し、人の心を動かすか?」というクリエイティブ視点の両方から、ステークホルダーから選ばれ、組織を強くする企業ブランディングについて、実務家や専門家に取材しました。
 
 
 
CONTENTS
事業を進化させるリブランディングとは?
・共感が高まるメッセージを多言語で設計するには?
・ブランデッドコンテンツの制作を支援する補助金制度とは?
・企業ブランドを体現する「人」を描くブランド実感ドキュメンタリーとは?
 

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