電通の早期退職者で構成するニューホライズンコレクティブは1月31日、一般企業向けに早期退職者支援の枠組み「ライフシフトプラットフォーム」の導入を本格的に開始すると発表した。不振で人員を抱えられなくなった企業だけでなく、最終損益が黒字でも人員を整理するケースも出てきており、企業、個人ともに再スタートを支援する。
「ライフシフトプラットフォーム」は、電通が同社の早期退職者と業務委託契約を結んで一定の固定収入を保障するほか、学習機会やチーム作りなどの機会を提供する枠組み。電通が2020年11月に立ち上げ、参加者は約230人を数える。21年1月には、同プラットフォームを運営する新会社としてニューホライズンコレクティブ(NH)が事業を開始した。
NH共同代表者の山口裕二氏は、「立ち上げ当初から、同様の枠組みを導入したいという問い合わせがあり、具体的な検討に移っている企業がある」と明かした。NHは学習機会や仕事とのマッチング機会などを提供する。社員向け説明会、参加者募集も担うという。導入企業が一定の業務を委託するかどうかはケース・バイ・ケースとなるようだ。
記者発表に参加した明治大学の野田稔教授は「転籍後に元の企業へ週の何日か出向する、といった方法で、ある程度報酬を保つ企業もある。さまざまなバリエーションがあるだろうが、全くのゼロは厳しいだろう」と話す。
東京商工リサーチの調べでは2021年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は84社で、20年から2年連続で80社を超えた。11年前のリーマン・ショックのあおりを受けた09年の191社、10年の85社以来、初めてだった。
84社のうち、通期損益が黒字だった企業は37社(44%)となった。特に募集人数1000人を超えた5社のうち4社が黒字で、東京商工リサーチは「赤字企業による小・中規模の募集と、黒字企業による大型・先行型の募集の二極化が、コロナ禍で加速した」と分析する。収益改善だけでなく新市場や新技術への対応を図る狙いも見え隠れする。
NH参画者の平均年齢は約52歳で、男女比はおよそ9対1。ほぼ採用当時の比率に近いという。立ち上げ時から独立したり、関連するプロジェクトで採用が決まったりして2人が減った。今後、参画者が増えるかどうかについては、回答を控えた。