今の時代に語られる「なりわい」とは何か
新刊書籍『「なりわい」革新 事業×組織文化の変革で経営の旗印をつくる』(望月真理子・中町直太・朝岡崇史著)が発売となりました。
近年、日本では企業の寿命の短命化が加速。さらにコロナ禍で加速したDXによって、企業はこれまで培ってきたビジネスモデルや「なりわい」の転換を余儀なくされています。こうした背景から、多くの企業が自社の業態、つまりは「なりわい(生業)」を再定義する必要に迫られています。
著者は、こうした企業の「なりわい」に着目。「なりわい」革新を推進している主要な企業のキーパーソンらに取材し、研究を重ね、本書の執筆にあたりました。
本書で語られる「なりわい」とは、企業が近未来の「ありたい姿」=「ビジョン」を実現した時に提供したいと考えている体験的な価値を、お客さまにもわかりやすい言葉で表現したもの。基幹事業ドメインを表現するに留まらず、創業時から培ってきた企業風土や価値観といった精神性も滋養する営みという意味も含んでいます。
本書では、自らの「なりわい」にズレを感じた企業がどのようにイノベーションを生み出し、組織文化の刷新を進めていったのかを紹介します。そして、組織文化を刷新するインターナル活動と事業変革活動の両輪を回していくことが企業の「なりわい」革新を生み出す、という仮説(ツインリンクモデル)を紐解きます。また、読者がすぐに実践できるよう「なりわい」の再定義に向けたプログラムも紹介しています。
企業の経営者、事業継承者、また経営企画や広報に携わる方、そして新規事業を担当する方に、ぜひお読みいただきたい書籍です。
目次
はじめに 「なりわい」革新 事業+ 組織文化の変革で経営の旗印をつくる
1 なぜいま「なりわい」の再定義が必要なのか
「なりわい」が変わることはお客さまに提供する体験価値(CX)が変わること
2 「なりわい」再定義の背景とパターン
研究対象となった日本企業と5つの素朴な疑問
なぜ企業は「なりわい」再定義をしないと生き残れないのか
DX時代、企業のイノベーションに関する先行研究
なぜその企業は「なりわい」革新に踏み切ったか
日本企業の「なりわい」革新のパターン
パターン❶ 本業消失:富士フイルムホールディングス
パターン❷ カリスマ経営者の大志:ユニクロ、SOMPOホールディングス
パターン❸ 再成長の事業イノベーション:コマツ、大和ハウス工業
パターン❹ クロステック(X-Tech)への適応:みずほフィナンシャルグループ
3 新たな「なりわい」を具現化するためのEX活動┼CX活動
事業変革と両輪で組織文化の変革も不可欠
ツインリンクモデルから読み解くなりわい革新 1
ヤッホーブルーイング 「クラフトビール製造」業から
「新たなビール文化創出による幸せ提供」業へ
ツインリンクモデルから読み解くなりわい革新 2
au/KDDI 「通信」業から「通信を中心としたライフデザイン」業へ
ツインリンクモデルから読み解くなりわい革新 3
SOMPOホールディングス 「保険」業から
「安心・安全・健康のテーマパーク」業へ
4 「なりわい」再定義に向けたプログラム『Power Session®』
『Power Session®』とは何か
DAY 1 「なりわい」再定義のタスクフォースチームを編成する
DAY 2 プロジェクトのキックオフを行い、専門家を呼んで情報共有を行う —– 138
DAY 3 外部環境を分析し自社が属する業種の「未来シナリオ」を描く❶
外部環境を分析し自社が属する業種の「未来シナリオ」を描く❷
DAY 4 企業の意思で摑むべき未来を決め、「ありたい姿」を再定義する
DAY 5 具体的な施策のアイデアを創出し、精緻化を行う
おわりに 「働き方のニューノーマル」と日本企業の「なりわい」革新
著者紹介
望月真理子(もちづき・まりこ)
株式会社電通 PRソリューション局 シニア・コンサルティング・ディレクター
1986年電通入社。当初5年間はマーケティング局に在籍した後、今日まで約30年間、一貫してコーポレートアイデンティティ(CI)、コーポレートブランディングを専門とし、企業理念やVI、企業スローガン等の開発、CC戦略の立案・実施に携わる。30年間で関わったCIは50件超。
仕事のスタイルは、「コンセプト策定からクリエーティブ、IN/OUTコミュニケーション戦略立案~実施までの、一気通貫プロデュース」。会社員としてのライフワークは、「企業のアイデンティティの“発見”と“表現”、そしてその“実現”のお手伝いを通して、社会の役に立つこと」。
中町直太(なかまち・なおた)
株式会社電通 PRソリューション局 シニア・コンサルティング・ディレクター
2001年電通入社。マーケティングプロモーション局・営業局を経て、現在はPRソリューション局でコーポレートブランドコンサルティング/広報コンサルティングを専門とする。コーポレートブランドコンサルティング領域ではさまざまな業種で数万人規模の大企業からスタートアップ企業まで幅広く支援。特にインターナルコミュニケーションによる組織文化変革支援が得意分野。またPR領域では、放送局のディレクターとしてテレビ番組の制作、そしてグループ会社設立時の広報体制立ち上げを経験。クライアントワークにおいては自治体の新条例の成立支援や、国際的なビッグイベントの広報戦略立案など、大型プロジェクトの経験も豊富。
朝岡崇史(あさおか・たかし)
株式会社ディライトデザイン 代表取締役/法政大学 大学院 客員教授
1985年、株式会社電通入社。電通ではブランドコンサルティングを行うコンサルティング室長、電通デジタル エグゼクティブ・コンサルティング・ディレクターを歴任。現在は、ブランド戦略、カスタマーエクスペリエンス戦略を専門とするコンサルタント、ファシリテーター、研究者。北京伝媒大学 広告学院 客員教授(2013年)、公益社団法人日本マーケティング協会マーケティングマスターコース マイスター(2011年〜現在)、U35新宿ビジネスプランコンテスト・アクティベーター(2018年〜)などを務めている。
主な著書に『拝啓 総理大臣殿 これが日本を良くする処方箋です』(2008年 東洋経済新報社 共著)、『エクスペリエンス・ドリブン・マーケティング』(2014年 ファーストプレス)、『IoT時代のエクスペリエンス・デザイン』(2016年 ファーストプレス)、『デジタルマーケティング成功に導く10の定石』(2017年 徳間書店 共著)がある。ウェブマガジン『JDIR』powered by JBpressに記事を連載中。