古典的CMが逆に新鮮に聞こえる不思議さ
権八:というわけで、お待ちかねですね。さっそくなんですけれども、ラジオ部門の受賞作を聞いていきたいと思います。2021年は5作品がゴールドを受賞しております。そのうちのひとつ、長谷川工業、長谷川工業新RAXの「スピード感」。このラジオCM、流してみましょう。よろしくお願いします。どうぞ。
長谷川工業「長谷川工業新RAX」
「スピード感」篇
男性:今までの脚立は閉じるとき、こうして、こうせなあかんかったのよ。こうしてな。それが長谷川のRAXやったら、こうよ。
女性ナレーター:ワンタッチバーがついたから、片手でスムーズ
男性:こう!
女性ナレーター:はしご兼用脚立RAX
男性:こう!
男性ナレーター:長谷川
<実際のラジオCMはこちらから>
髙橋:ははは。好きだ~。
権八:あっ、好き?
井村:審査で聞いてたでしょ(笑)?
髙橋:聞いてましたよ(笑)。
権八:すごい、いいリアクション(笑)。
髙橋:私、最初から「長谷川工業新RAX」さんは推していたので。
権八:推してた。
髙橋:嬉しいですね。
権八:どのへんがお好きで?「好きだ~」っていうぐらいなので(笑)。
髙橋:いやなんか、直感が言っていますね。難しい話が正直嫌いなんですよ。
一同:ははは。
髙橋:分かりやすいことが一番好きなので……この音で。音で伝わるかって言われたら、確かに伝わらない人もいるかもしれないんですけど……。その想像できる余地を与えてくれる、このCMってすごい面白いなと思います。最後の師匠みたいな人の、閉じるときのダメ押しのもう一回っていうのが、私はまた好きですね。
権八:あらら。すごくいいオーディエンスというか。
澤本:そうそう、いい審査員だし。その感想に対して僕が思った感想は、この20秒のCMって古典的なんですよ。ラジオCMの歴史で言うと、ものすごくシンプルに音だけで何かしらを表現しようっていうもので。これ、結構古く感じるのかなと思ったら、全然だね。
髙橋:今って、やっぱり映像ありき。むしろTikTok とかも、映像の方に集中する。音よりも映像っていうイメージがすごく強いので。逆に音から映像を想像するっていうのが、私は新鮮でした。
澤本:らしいんだよ。
権八:これは、ちょっとびっくりした!今はそうなんだね。
髙橋:はい、私はそう感じました。
権八:なるほど。
澤本:だから、僕らの審査基準が間違えてんじゃないかって、ものすごくなったの。
権八:そうかも。間違っていますね。
髙橋:いやいやいや、そんなこと……。新しい視点を、すみません。
権八:澤本さんは……
澤本:お前、それ言うな。
一同:ははは。
井村:この作品、審査していると議論がすごく盛り上がる作品と話が出ない作品があるんですけど、これは誰も言わなかったんですよね。誰も盛り上がらないけど、投票はボンボンして、気づいたらゴールドまで上がってきたという。みんな心の底で好きだったっていう感じの作品ですね。
髙橋:言葉にできないけど、ちょっと惹かれてしまう安心感というか。そういうのも、ちょっとあるのかなって思いました。
権八:なるほど。すごく素直なね。何というか、逆に裏切りでね。裏切りも特になく、そのままっていう。素材、ポンと出しましたみたいな印象かな。
井村:「こうで、こうで、こうよ!」っていうシンプルなセリフ。ここまでシンプルっていうのもなかなかないかなって。切れ味がいい20秒だったなと思いました。
権八:なるほどね。
澤本:あと20秒だからね、これ。
髙橋:でも、ちゃんと伝わりますもんね。「すごく楽そう~」って思っちゃいますし、「この脚立、いいやん」って感じで思っちゃうところもあったので。
井村:どんな形なんだろうって、すごく気になるしね。
髙橋:気になる~!その想像力を膨らませてくれるところを、私は個人的にすごく面白いなと思って、好きでした。
権八:なるほど。
澤本:勉強になるよね。
権八:そうですね。
澤本:真面目に。
権八:この音だけのコミュニケーションをすごく新鮮に感じられるって言うのは、僕らからすると新鮮ですね。
髙橋:あ~、面白い。そうなんですか?
権八:本当。「あ、そうなんだ」っていう。
澤本:余計なことしない方がいいのかもね。
権八:なんかね。ちょっと、考えさせられますね。
髙橋:ははは。