ラジオCMならではのミスリードからの裏切り
権八:というわけで、続いてACCゴールドの受賞作、もう1本いってみましょうか。第一三共ヘルスケアのロキソニンSテープ「キャッチボール」篇です。
第一三共ヘルスケア「ロキソニンSテープ」
「キャッチボール」篇
息子:まさかまた親父とキャッチボールできるなんてな。
父親:お前、本当泣き虫だったよな。
息子:やめろよ。
父親:でも、絶対諦めなかった。誰よりも努力家で。
息子:やめろよ。
父親:辛抱づよくて。
息子:やめろよ。
父親:自慢の息子だったんだよ。
息子:…やめろよ、アンダースロー!こういうとき普通上投げだろう!
ナレーション:あげるのがつらい肩の痛みに、第2類医薬品ロキソニンSテープ
髙橋:フフフ。シュール。
権八:必ずひかるちゃんが、まず最初の第一声を言うね。ありがとう、リアクション。
澤本:まず先生に聞いてみないと(笑)。
髙橋:なんでですか!
権八:ひかる先生、ちょっとどうでしょう、こちらのCMは。
髙橋:(笑)。私正直、最初聞いたときは野球の知識もあまりなくて、面白いんだろうけど、分かんないところがあったんですけど……。だんだん聞けば聞くほど、間の取り方や、最後のナレーションで商品名をいうところ……「ロキソニンSテープ」で音がないところとか、全体的にシュールで。最初一瞬、「何を聞いたんだ、私は?」ってなるんですけど、聞けば聞くほど、シンプルに物語として面白いなって思いました。
井村:これは澤本さんがすごい推していらっしゃいましたよね。
澤本:そうですね。ひねくれた人間からすると、これ裏切るじゃないですか。キャッチボールをやっていると思ったら、「アンダースローだったんだ」っていう裏切りがあって。上手だと思うんですけど……そういうふうに見ている自分がちょっと汚れてるなって思いました(笑)。
髙橋:いや、そんなこと!面白いですよ、このCM絶対。誰が聞いても!
権八:僕も非常に安心するっていうかね。「照れるからやめろよ」っていう文脈と見せかけて、「取りにくいし、ちゃんと上から投げてくれよ」っていうね。ミスリードして、それを裏切ってくれて、ちゃんと商品に着地している。しかも、ラジオCMならではの、絵が見えないから音だけで想像させる。リスナーが想像を勝手に違う方向に向けて、それを裏切ってくれるってところ。僕らはやっぱり、こうしたくなっちゃうし……。
髙橋:面白いですもん。普通に聞いてたら、最初は「いい話やな」って思ってたのに、最後はお父さんに「ロキソニンSテープ」買ってあげよう、みたいな。
権八:「愛情一本」的なね。
髙橋:まさしく!ああいう感じかなって思ったんですけど。
権八:「チオビタ・ドリンク」のCM大好きでした。
髙橋:嘘?ありがとうございます!
権八:本当に。
髙橋:長い間出演させていただきました。
権八:またやってほしい。
髙橋:うれしい~。この声、届け。
一同:ははは。
権八:持ってるね、やっぱりね。
髙橋:何、言っているんですか!
権八:審査委員長的には、どうだったんですか?
井村:さっきの心汚れている理論で言うと……。
一同:ははは。
井村:アイデアがある方が、僕らも「よく考えたな」って褒めやすいんですけど、2021年の作品は全体として、アイデアがあってちょっと理解が難しいものよりも、先週のアイベックスエアラインズのように、するっと耳に入って来る方がよく感じるっていう傾向にあったように思いますね。