栃木・那須高原の定番土産「御用邸チーズケーキ」(庫や)が2022年1月、1994年の発売以来初となるリニューアルを実施した。背景には、百貨店などでの販売やECの注文も増える中で「お土産に留まらず、全国で愛される定番のチーズケーキへ進化させたい」との思いがある。
検討を始めたのは2019年。水野学氏が率いるgood design companyに相談を持ちかけた。
まず着手したのはブランドの“大義”を明らかにすること。那須の自然の豊かさから生まれたブランドであると明文化し、「那須の美しい自然とともに。」から始まるステートメントをコピーライターの蛭田瑞穂氏(writing style)が書き上げた。
パッケージもより洗練され、上質な印象に。以前はどっしりと丸みを帯びた「御用邸」の文字が前面に出た和風のパッケージだったが、刷新後は和洋折衷。すっきりとした細いオリジナル書体や赤い落款と、英字による商品説明のテキストを掛け合わせた。
「那須には古くから残る洋館などもある。横浜や神戸のように、和と洋のモダンなイメージをもっと取り入れてもいいのでは」という水野氏の考えからだ。
コストを抑えつつ、高級感を演出する印刷やデザインの工夫も幾重にも施されている。たとえば「御用邸チーズケーキ」の箱のムラのあるグレー色は、実は紙そのものの色味ではない。地の紙に紙風のテクスチャ素材を重ねて色や風合いを加え、エンボス加工によりファインペーパーのように見せている。
英字のテキスト部分も異素材の白い紙を重ねたように見えるが、実はこれも印刷されたもの。「実際に白い紙を貼ったら、地の色との境目に影が出ます。この影もデザインの一部に。赤い落款もよく見ると、手作業で押印したら生じる紙との境目のインクのズレやかすれを精巧に再現していることがわかります」(水野氏)。こうして細部を詰め、上質感を維持しつつコストを抑えているのだ。
このほかチーズケーキの上位商品「豊饒」でイラストを採用したのは、那須の美しい自然を思わせる工夫。包装紙にも那須に生息する鳥のオオルリや植物の数々をあしらい、ブランド
ステートメントを貫いたデザインに仕上がっている。
スタッフリスト
- 企画制作
- good design company
- CD
- 水野学
- AD
- 佐々木海
- D
- 大作皐紀、小川竜由
- C
- 蛭田瑞穂(writing style)
- I
- センザキリョウスケ(御用邸ストロベリーシリーズ)、吉實恵(豊饒)