「2人でつくる」も技術のひとつ
古林:私は良かったことが4つあります。「レベルの高いコピーライターの方と対等につくれたこと」「トライアンドエラーを7回できたこと」「自分の120%のつくり方を知れたこと」。そしてその成果として、広告賞の受賞など「作品が評価されるという結果をつくれた」ことです。実はこの講座のあとコピーにハマって、コピーライター養成講座にも通うようになりました。
というのも、講座の中で、これはボディーコピーなしでもいけるんじゃないかと思っていたデザインに相方がコピーをつけてくれた時、一気に血液が流れたような感覚があって。そういう体験を通じて、最初はコピーはコピーライターに委ねていたけれど、だんだんと「ひとつの作品を2人でつくっているのだから、デザイナーはコピーまで、コピーライターはデザインまで、2人でつくる上では自分の領域と考えるべきなのでは」と、マインドが変わってきたんです。
そして、デザインもコピーもそれぞれに技術ですが、こうやって互いの領域に踏み込みながら「2人でつくる」ということ自体も技術のひとつなんじゃないかと思うようになりました。
古林萌実(デザイナー/プランナー)
多摩美術大学統合デザイン学科卒業。永井一史・岡室健のもと、課題解決のためのデザインを学ぶ。 2020年、広告代理店にデザイナーとして入社。 同期にコピーライターがおらず、がっつり0から一緒につくれるコピーライターと出会いたいと思い、「アート&コピー」に参加。2022年ヤングカンヌ日本代表(プリント部門GOLD)。
阿部:コンビでの取り組み方も変わっていきましたか?
古林:最初は週1で打ち合わせ、つくるのも3案くらい。その中からひとつを深掘りして提出するような感じでしたが、他のコンビの提出物をみた時に「こんな切り口も、あんな切り口もあったのか!」と目から鱗で……可能性を模索しきれていなかったのだから、伝わるものができないのも当たり前だったと反省しました。だから後半では「まずは50案出しましょう!」と、案出しの数が変わりました。それから忙しい中でも無理なく大量に案出しできるように、仕組みから工夫するようになりました。例えばGoogleスライドを活用し、好きなタイミングで各自どんどん案出しをして、共有するようにしたり。
阿部:え、画面で見せてくださっているこのスライド、162案目までありますね。
古林:そう、でもこれだけ出しても本当に光っていると思えた案はたった1案だったんです!ここまで量を出して、初めて自分で良し悪しを判断できるようになったと思います。また内面的なことで言えば、相手の良さや考えていること、得意なことを引き出すように意識が変わったのが自分の中のターニングポイントでした。たとえば小説が好きな人と組んだ回では、短編小説と写真を組み合わせた形式のアウトプットにして、製本して販売するところまで漕ぎ着けました。「この2人だからこれができた」という成功体験を積めた回でした。
阿部:そうやって共同作業がだんだんうまくなっていって、古林さんの場合は、最初に組んだ相方と講座の後にもう一度組んで、ヤングカンヌのプリント部門でゴールドを受賞したんですよね。
阿部 広太郎(電通コピーライター)
人事局に配属されるも、クリエーティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。自らの仕事を「言葉の企画」と定義し、映画、テレビ、音楽、イベントなど、エンタメ領域からソーシャル領域まで越境しながら取り組んでいる。作詞家として「向井太一」や「さくらしめじ」に詞を提供。2015年より、「企画でメシを食っていく」を主宰。「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと、学びの場づくりに情熱を注ぐ。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
古林:はい。その相手、飯島さんとは実は講座で初めて組んだ時は伝わるものがつくれなかったんです。だからもう一回組んでリベンジがしたいね、とずっと話していて。お互い社会課題を解決するための手段としてデザインやコピーを捉えているというスタンスが同じだったので、メッセージがキーになるヤングカンヌをリベンジに選びました。最初に組んだ時はWhat to Sayやメッセージ性ばかり考えてしまっていましたが、今度はお互いにHow to Sayまで質の高いものが出せるようになっていて、成長を感じました。
相手と自分を高め合う、「超本気」の8カ月
—最後に、どういった人にこの講座を受けてほしいですか?
関口:自主性とやる気があり、簡単にあきらめない人。毎回の課題のために手を動かさないといけないので、必然的にそれなりの作業量が発生します。効率が悪いのは良くないですが、一方で最初から最低限の作業量にしようと思う人には向かないかもしれません。
また、公募賞に挑戦したい人には非常に良い講座だと思います。というのも、ひとりで挑戦していたら結果が出るまで何もわかりませんが、講座のみんなで挑戦するので他の人がどんなものを出したのかも分かるし、自分たちコンビの制作物に感想をもらえるという「過程」があるんです。最後に、自分ひとりだったら自分をそこまで追い込めないけど、相手がいるから相手のためにもっともっと良いものをと追求し、喜びも倍で返ってくるような体験がこの講座にはあると私は思います。そうやって相手と高め合いながら、良いもの・面白いものをつくりたいという志向の人に受講してもらえたらと思います。
林:超本気を楽しめる人がいいんじゃないでしょうか。ただの本気じゃなくて、超本気、古林さんの言う120%。講義は月イチですけど、本当に重要なのはそこじゃなくて、課題の制作にあたっているそれ以外の29日、30日です。この大変だけれども楽しい時間を自分の仕事や生活の中からどう捻出して、相棒と共に、計画的にかつこだわってつくれるか。
また、「自己完結しない」というのもすごく大事だと思っていて、あくまでも「2人で」すごいところに行くために、時にはほとんど喧嘩のような議論をすることだってあるかもしれません。それも楽しそうだなと思う人に、ぜひ受講してもらいたいです。
古林:何かを教わる講座ではないので、教わるのではなくて実践したい人向きだと思います。また、「コピーは日本語なんだし、自分のグラフィックに自分でコピーをつければいいや」と思っているデザイナーもいるかもしれません。確かにそういう意味では、デザイナーにとってコピーライターは必須ではありません。だけど、コピーライターと出会えたデザイナーは強いと私は思います。なぜならコピーにはコピーとしての学問や突き詰め方がちゃんとあって、それを用いて私たちデザイナーと共に戦ってもらえたときに出来上がる作品はモノとして断然強いからです。それを実感すると、デザイナーにとってコピーライターは、「この人がいないとダメだ」と思えるくらい心強い存在になるんじゃないでしょうか。
阿部:ここでの出会いがこの先の仕事やキャリアにつながっていくことを祈っています。ずっと付き合っていける最強の相方と出会ってほしいです。「自分はもっとやれるはずだ!」とみなぎっている人、ぜひご参加ください!飛躍する2022年にしましょう。
(質疑応答)
Q. 地方からオンラインで参加する場合、Zoomでの課題制作は可能なのでしょうか。
A. 可能です。ご参考までに、第一期では40人中10人弱がオンライン参加でした。つまり約半分のコンビが常にZoomで打ち合わせしていたことになります。また東京にいる人同士であっても、コロナの懸念もありZoomで打ち合わせされていたコンビも多くいたと思います。(事務局)
Q. 提出したポートフォリオで気をつけたことはありますか。
A. 私はあまりいいポートフォリオを書けず、評価も低かったのですが(笑)、皆さんのをみていると、自分がどんな人なのか知ってもらう工夫をしているなと感じました。(関口)
一生懸命作ればいいと思います。なお、最初の講義はポートフォリオに対するフィードバックで、どれだけ全力を出してもまずはそこで「もっとこうすればよかったんだな」という気づきがあると思いますよ。(林)
私が気をつけたのは、たくさんの人が集まる中で「この人はどんな人か」「何が得意か」がすぐに伝わる状態にすることでした。だから、いつもこういうスタンスでものをつくっています、というのを最初に置いて、そこから個別に絵を置いて企画意図を置いて、というのを重ねていきました。でも蓋を開けてみれば皆さんかなりバラバラだったので、あまり自分の今のコピーやデザインの未熟さを気にせず、とにかく阿部さんに届けようとすれば良いと思います。(古林)
形式は自由、だけど枚数は表紙を含めて10枚以内、表紙に名前を忘れずに、ということを事務局からはお伝えします。(事務局)
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