夏木マリ流 SDGsの伝え方とは?

2030年に向け活発化するSDGsの取り組み。実践には “未来” の姿を描くことが不可欠です。本コーナーは多様なフィールドで活躍する人たちと共に、理想の未来を考えていく、連載企画です。今回インタビューしたのは、2009年から途上国支援を行っている夏木マリさん。アーティストを募って支援ライブの開催などを通じて、途上国の子どもたちに教科書や文房具を贈っています。そうした活動の原点や、表現者である夏木さんの考える、これからの働き方を聞きました。

また、夏木マリさんへのインタビューの様子、メイキング動画も公式YouTubeで配信中です。動画はこちらから。

*本記事は月刊『広報会議』2022年2月号に掲載したものです。
*本記事は宣伝会議が主催する「SDGs未来会議プロジェクト」との連動記事です。

 

貢献の“場”をつくる役割を担う

─夏木さんがSDGsを知ったきっかけはなんでしたか。

私が東京レインボープライドのライブに参加したことがきっかけです。主催者からお声がけいただいた際、ライブのテーマのひとつに「SDGs」が盛り込まれていたことから、知りました。

─夏木さんが2009年から取り組んでらっしゃる「One of Love」プロジェクトの内容について教えてください。

企業とコラボした詩の朗読キャンペーン
コーヒーのフェアトレードなどを訴えた小川珈琲のエシカルキャンペーン「コーヒーの詩」。One of Loveプロジェクトではその一環として、2021年6月にYouTube限定配信で夏木さんが、コーヒーを題材とした3編の詩を朗読。視聴したユーザーからの「いいね」の収益、商品の売り上げの一部が途上国支援に使われるという。

このプロジェクトは、エチオピアなどの途上国の子どもたちの教育と、その母親たちに誇りを持って働いてもらえるように1年単位でサポートする活動です。経緯は、元々そうした活動をしていた友人からの誘いがきっかけでした。

その時、支援していた国の子どもたちに会いにも行きました。そこでは、幼い子どもたちが「仕事」か「学校」かの二択を迫られる環境で、教育を当たり前に受けられる日本人(の感覚)からすると非常に驚きました。帰国して友人たちにそのことを話したら、「じゃあ動こう」ということで始まりました。
 

最近では、生理用ナプキンをエチオピアのバラ園で働く女性たちに、2回に分けて、配布するという取り組みをスタートしたんです。コロナ禍、内戦で2回目はまだ実施できていませんが、今でも友人たちと微力ではありますが活動を続けています。
 

LIVEでの収益を寄付
One of Loveプロジェクトの活動の一環として、GIG(ライブハウスなどで開催される音楽ライブ)を実施。2020年からはリモート開催。

また、資金調達の方法としては、バラの販売と年に1回、GIG(ライブハウスなどで開催される音楽ライブ)を開催しています。

アーティストの方々に参加をお願いする際、「実は私も何かやりたかったんだけど、何をすればよいか分からなかった」とおっしゃるアーティストの方々がたくさんいらして……。

このプロジェクトはボランティアであり、仕事ではないので、こちらとしては恐縮しながらお願いするのですが、逆に感謝されることがあります。

やはりひとりでは皆さん、そうした活動の機会をつくれない。なかなかね。だからこそ、今後もますます皆さんの力を借りて進めていきたいと思います。

─夏木さんは企業の方々とも協働してらっしゃいますが、企業がSDGsに取り組む上でどのような点を意識した方がよいと思いますか。

途上国支援を継続
「One of Loveプロジェクト」をスタートする2009年以前から、バングラデシュ、エチオピア、エルサルバドルの子どもたちへの支援を続けてきた夏木さん。一方通行の支援だけでなく、その子供たちに会いたいと、バングラデシュ、エチオピアへ旅をし、実際に訪問した。

SDGsの目標のひとつに「つくる責任、つかう責任」がありますが、そこに本気で向き合う企業であ ってほしいと思います。私たち消費者も、モノを買う際、その製造過程において問題はないか、などを吟味するでしょ。本当につくる側も真剣に取り組む必要があると思います。言葉を選ばずに言えば、流行でSDGsに取り組んでいては、活動は続かないでしょう。

私が活動において協力し合っている企業の方とは、会う度に「次はどう取り組んだらよいかしら」とい った会話になります。そうした姿勢は、「この企業は真剣に考えている」と消費者の方々も感じ取ってくださるんじゃないでしょうか。
 


 

自分らしさが輝く時代に

─SDGsには働き方に関する目標も含まれています。夏木さんは俳優、ミュージシャンと様々なキャリアを築いてらっしゃいますが、今の働き方の潮流についてどうお考えですか。

以前は「会社あっての自分」という考えが主流だ ったと思いますが、今は「自分 “らしく” 働く」。その “らしさ” で会社もしくは社会とつながる─そういう働き方でよいんじゃないかと思います。テレワークを例に挙げると、家で仕事したい人もいれば、出社を希望する人もいる。どちらも選べる時代になりましたよね。

そういった意味では社会のキャパシティが広がった。自分らしく輝ける人は輝ける。自分らしさを見つけるのは、その過程で大変な部分もあるかもしれないが、結果的に楽しいじゃないですか。

私は “表現者” ということで、これまでも自由に芸能活動をやってきました。しかし、「カルチャー」とか「芸能界」(のルール)があるとすれば、そこの中心ではいられなかった。そこを “浮遊する” という方法を私はとりました。要するに、そこの “トップアスリート” にはなれなかったんですよね。これからはそんなことはない。自分の “らしさ” を仕事に活かしていける人は輝いていけるんじゃないでしょうか。

 

丁寧な教育を受けていってほしい

─子どもの教育について高い関心を寄せられている夏木さんに伺います。次の世代の子どもたちにはどのように生きていってほしいですか。

例えば、学校で絵を描く時間に、黒い絵の具を使 って先生がびっくりする─そんな時代が昭和にはあったんです。でもこれからは「黒が好き」っていう子どもは黒で描いてもよいし、褒めてあげる。

また一方で、まだ親の手を離れないうちは、ちゃんといろいろなものを私達がインプットしてあげる。それこそ、SDGsの話含めて。つまり、丁寧に、これからは何事も丁寧に接することが生き生きと暮らしていけるヒントになるんじゃないかと思うんです。

教育も丁寧にしてほしい。未来の子どもたちにそれが伝わっていけば、これからも地球を守ってくれる。少なくとも、今の自分の状況が当たり前だ、と思わないように幼いころからきちんと教えていった方がよいですよね。私は当たり前だと思って生きてきてしまったから、突然、「地球が危ない」と言われて、こうした活動に取り組んでいるわけですが。

本来は私たちの世代の責任でもあるわけですよね。バブルの時代を経験して、贅沢三昧してきちゃって……。今、本当に反省させられています。

これからの子どもたちには、そうした時代があったことも知らせつつ、丁寧に生きていってほしい。それが結果として、環境配慮につながるんじゃないかと思います。
 

夏木マリさんへのインタビューの様子、
メイキング動画を公式YouTubeで配信中!

 

 
*SDGs未来会議プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちらから

 

広報会議3月号

月刊『広報会議』2022年3月号の巻頭特集は「企業の“好感度”を上げる企画発想 社会性ある切り口をつくり出す!」。
 

 
月刊『広報会議』3月号は、全国の書店・Amazonなどで販売中。
 

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ