調査背景・概要
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析し、2019年8月より毎月ネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
エルテスの定義するネット炎上
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2022年1月のネット炎上トレンド
2022年1月に最も多かった炎上対象は「企業・団体」で、57%を占めました。次いで前月より9ポイント増加した「個人・著名人」が19%、「マスメディア」が1ポイント増加し13%となりました。
「企業・団体」の炎上区分の内訳は、前月よりも7ポイント増加した「サービス」が全体の21%を占め、次いで3ポイント低下した「自治体・団体」が13%を占めています。「IT」が前月より1ポイント増加し8%となりました。「メーカー」は16ポイント低下し7%、「インフラ」は4ポイント低下、「教育機関」は2ポイント低下の4%という結果になりました。(図1)
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、「顧客クレーム・批判」が全体の38%を占めています。次いで、2ポイント増加した「不適切発言・行為、失言」が35%となっています。「不祥事/事件ニュース」は前月より4ポイント低下し17%、「情報漏えい/内部告発」が3ポイント増加し10%を占める結果となりました。(図2)
2022年1月の炎上理解の事例
1月9日、某有名企業の人事担当者によるTwitterへの投稿が批判を集めました。投稿内容は「採用とは“採ってはいけない人”を見極める仕事」という、自身の仕事に関する見解をつぶやいたものでした。この投稿に対しては「実際に不採用になった人がこの投稿を見たらどう感じるのか」といった批判が集まります。批判を受ける形でTwitterの投稿は削除され、後日「意図した伝わり方とは違った受け止められ方をした」という投稿が行われました。これに対して、問題の投稿には直接釈明せずに自己弁護に走っていると、更なる批判が見られました。
また1月31日には某ベンチャー企業の人事担当者が「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない」という旨の発言をTwitterに投稿したところ、待遇/給与で会社を選んで欲しくない=やりがい搾取の助長だと批判を集めました。翌日、人事担当者は「それぞれの価値観がそれぞれの正解だと思っています」と投稿しましたが、これに対しても批判が集まっています。
今回の騒動からは、2つの学びがありました。
一つは実名性に関する問題です。炎上したどちらのケースでも、本人たちが所属する企業やプロフィールを公開していたため、本来であれば“個人の感想”の範疇であるはずの発言であるにも関わらず、企業を代表しての発言と捉えた人が多かったようです。中には、わざわざ所属企業のホームページの情報を探るなどして、更なる批判の要素を探す批判者も現れました。SNS上で身元を明かしている場合には、こうした見られ方をする可能性があると認識しておくことが大切です。結果的にこの炎上は、本人たちが所属する企業に対する悪評にもつながったことが注意したいポイントです。
また、もう一つのポイントは批判に対するリアクションでした。どちらのケースでも最初に批判を浴びた投稿に対し直接の釈明をせず、ある意味スルーする形で終わらせています。推測ですが、本来の意図から曲解された批判には謝罪できないし、あまりに多くの意見が集中したため一つ一つには対応できないという判断だったのではないでしょうか。しかし、泥沼化を避けようとしたこの対応に対しても、反省が足りないという主旨の批判が集まっています。批判者は攻撃的な心理になりがちなため、本人にその気がなくても殊更に悪意を持って解釈される可能性があります。批判を浴びた際、迂闊に逆ギレや言い訳をしてしまうと想像以上の怒りを買う可能性があります。こうした点も、学びのポイントと言えます。
こうした従業員のSNS上でのトラブルの結果、企業に対する悪評を招いてしまう可能性もあります。そうした観点からソーシャルメディアポリシーの策定や従業員研修など、企業としての取り組みが重要となってきます。
まとめ
2022年1月の事例として、2つの人事担当者によるSNS上の炎上を取り上げました。従業員が実名でSNSを行った結果、所属する企業に対する批判も生む可能性があるという学びのあるケースでした。また加えて、人事担当者による炎上は以前から数多く、古くは東日本大震災の折に求職者に対し高圧的な態度を取ったことで大炎上した事例などがあります。採用活動に従事する人事担当者は言葉遣いを間違えると「上から目線」であると思われやすいため、可燃性の高い職種と言えるのかも知れません。
こうした事例を通じて、自社においても同様の問題を起こす可能性がないか改めて考えることは、大きな学びになるといえるでしょう。
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