※こちらは月刊『宣伝会議』2022年4月号の一部を掲載しております。
電通
コピーライター/クリエーティブディレクター
石田文子氏
最近の仕事にユニクロ・フリース2020「去年とは違う冬」、アクエリアス「見えない「がんばれ」が詰まってる。」、シチズンxC 「なにかを始める時が、その人の春だと思う。」、明治「POWER!ひとくちの力」、JR青春18きっぷなど。宣伝会議賞金賞、ACCジャーナリスト賞、アドフェスト、スパイクスアジア金賞など受賞多数。著書に『小さなキミ』(小学館)。「こどもの視点ラボ」代表。
クライアントには出しにくい(笑)
私がグランプリを受賞したのは、東京ガスの床暖房についての課題。「家に帰ると、母が倒れていた。」というコピーでした。
ちょっとドキッとしますよね(笑)。一見、ネガティブなシーンですから。
すぐに床暖房のコピーだと気づいてもらえれば「なるほどね」と笑ってくれる方もいると思います。一方で、ネガな感情を持たれて、企業のイメージを崩してしまうことがないとは言いきれません。ですから実際の仕事だったら提案しないコピーかも、と思いながら応募しました。当時の審査員の方からも「これ、クライアントには出せないよね(笑)」と言われたのを覚えています。
なのに、グランプリ。このことや今までの受賞作を見てみると、グランプリに選ばれやすいのは、より“コピーライター目線”と“消費者目線”が強いもの。時代に合った面白さがあったり、社会に対してこれまでと違う視点を提案していたり、「まだ言葉にしていなかったけど、実は私も思ってた」と半歩先を言い当てて共感されるコピーだったりするのかな、と思います。
逆に協賛企業賞は “いま、その企業が言いたいこと”を捉えているか。その企業のキャラクターに合った実務的なコピーと言えるかもしれません。
グランプリなら、社会に新たな気づきを提案する“型破り”な内容を。協賛企業賞なら、企業が社会に受け入れられたい姿を言語化してみる。それが私が考える両者の違いです。
協賛企業賞とグランプリの違い
<協賛企業賞>
課題企業のキャラクターに合っているかどうか。
課題の商品・サービスについて理解するのはもちろん。でも、商品を展開している企業のキャラクターについては知らない人が多いかもしれません。コピーは商品・サービス、企業を代表する言葉。選ぶ側のキャラクターを知ることも重要だと思います。
いま企業、商品・サービスが言いたいことかどうか。
オリエンから、さらには自分で調べたうえで、本当に企業が言いたいことを捉えてみてください。企業が言いたいことは、言い換えると企業が社会に受け入れられたい姿でもあるはず。それを言葉にできると受賞に近づくのではないでしょうか。
<グランプリ>
社会に新たな気づきを提案しているかどうか。
そのコピーを見て「確かに!」と思えるかが大切だと思います。「頭のどこかで思っていたけど、まだ言葉にしてなかった(やられた!)」という感じ。いかに、今までにない気づきを提案できるかが重要ではないかと思います。
時代の半歩先を読めているかどうか。
広告の鮮度が一番抜群なのは、世に出た瞬間です。その後はすべて過去になってしまいます。コピーライターが求めるのは、常に新しさ。そう考えると、既存のコピーをフォーマット(型)として学びすぎるのは良くないかもしれません。
※誌面には、第59回「宣伝会議賞」の二次三次審査通過者、協賛企業賞、ファイナリスト、中高生部門の受賞者を発表しております。
月刊『宣伝会議』4月号
▼特集1
全社を巻き込み、理念を体現する顧客体験をつくる
パーパスとブランド体験
・メッセージを再設定した企業の
コミュニケーション事例
ソニーグループ/ミクシィ/日本製紙クレシア
・資生堂クリエイティブが始動!
自立心を促すボトムアップの「PMVV」
・“ピープルファースト”な経営に向け
マーケターがいまできることとは?
・新生・Zホールディングスによる
シナジーを生み出す“遠心力”
・テキストマイニングで分析する
企業理念と組織メンバーへの影響
▼特別企画
第59回「宣伝会議賞」二次三次審査通過者/
協賛企業賞/ファイナリスト/中高生部門受賞者発表
▼レポート①
デジタル広告の品質問題
日本の広告界 最前線の取り組み
▼レポート②
デジタル化で広がる!
オーディオアドの活用
▼特別レポート
データの利活用で実現する!
生活者に寄り添う広告・コミュニケーション戦略