膨大な表現方法の中で、たまたまひとつの座標を見つけた(ゲスト:友沢こたお)【後編】

【前回コラム】「気づいたら、顔にスライムをかぶっていた」現役藝大生の画家が語る創作の原点(ゲスト:友沢こたお)【前編】

今週のゲストは、先週に引き続き、現役藝大生にして人気沸騰中の画家、友沢こたおさん。今回は母子アートユニット「とろろ園」のお話や、絵画にスライムが登場することになった経緯をうかがいました。

今回の登場人物紹介

左から、中村洋基(すぐおわレギュラーゲスト)、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)、友沢こたお。

※本記事は2021年12月5日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

母子アートユニット「とろろ園」

澤本:スライム状のものが登場する絵が大人気のこたおさんは、アートユニット「とろろ園」を始められています。これまた、スライムに近い感じの食べ物ですけど……。どんなユニットなんでしょうか?

友沢:「とろろ園」では、母親がマンガを描いています。母は結構ぶっ飛んでいて「なんでそんなこと考えるの?」っていうアイデアをポンポン出してくるんです。
 ジム・オルークの「ユリイカ」のジャケットの絵もそうなんですけど、可愛らしいうさぎのぬいぐるみを股間に押し付けて、たそがれているような……(笑)。そういうのは私も大好きなので、自分でも描いてみたいとは思うんですけど、なかなか勇気が出なくて……。私は絵を描くのが好きだけど、母は「描くのが大変」みたいな感じなんですね。だから「私がママの絵を描けばいいんじゃない?」という発想で始まったユニットです。なので、下絵は母親がやり、仕上げは私が油絵でやっています。
でも、わたしの油絵のタッチは結構変で、大学の先生には怒られるような描き方をしているんですよね。スライムの絵も、実はそうなんですよね……(笑)。で、母が描いてみたい感じの絵を私が描いてみたら、私の絵とも母の絵とも違う「新しいやばい人間たち」がどんどん生まれてきまして……。最近はちょっとお休み中なんですけど、頭の中ではどんどん進めていますので、ぜひ「とろろ園」の応援もしていただけたら嬉しいですね。

澤本:お母さんは例えば子どもの頃、どんな教育をされてきたんですか?

友沢:母は本当に優しかったですね。そしてすごく可愛がってくれました。私は小さい頃、あんまり上手く出来ないこともあったんですよね。でも、そこを「やりなさい!」という押し付けが全然なかったです。「普通は、こう」みたいなものに全然とらわれない感じで育ててくれたなって思います。そう……ラブですよ(笑)。

一同:(笑)

権八:ラブだよね……(笑)。だから、お母さんから絵を「最高だね」って褒めてくれると嬉しいんだよね。

友沢:そうですね、すごく褒めてくれる。それで頑張れています。

権八:お母さんは「ガロ」系の人ですよね。
※青林堂が刊行していた漫画雑誌『ガロ』に掲載されていたアングラな漫画作品。またその作家である個性派の特殊漫画家、作風を指す表現。

友沢:そうですね。赤ちゃんの頃から「ガロ」系の空気と触れ合ってきてるのは、面白いなと思いますよ、自分でも(笑)「ガロ」特有の空気感を「うおー、これはヤバい!」って感じじゃなく、日常として感じてる(笑)

一同:(笑)

澤本:「ガロ」が日常!(笑)

友沢:それが「好き~!」ってなる感じなんですよ、純粋に。

「油絵のスパルタ教育」を受ける

澤本:美大にはいつ行こうと思ったんですか?

友沢:保育園の卒園式で「漫画家さんになりたい!」って叫んだのを覚えています。そのぐらいの頃から、「絵で仕事をしたい」っていう意識を強く持っていましたね。そこから漫画家としての向き不向きを自分で考えながら、中学の時には油絵に挑戦したいなって思いました。結構難しい美術高校に入らせてもらって、そこで3年間、油絵のスパルタ教育を受けました。でもやっぱり、藝大の受験は怖くて……。なかなか受ける気持ちになれなかったので、「先生になろうかな」と思っていたんです。でも、高校の恩師が「絶対に、藝大に行ってほしい」と、すごく強い眼差しで言ってくださって。それで「何浪してでも藝大に入りたい」と強く思うようになりました。そして…………入りました。

中村:現役で入られたんですよね?

澤本:藝大現役はすごいよね。

権八:油(油絵学科)ですよ、しかも!

中村:油ですよね~、いやすごいですよ!カッコよすぎますよ。なんだかんだ、「天才」ってこういう人なんだろうな~って思いますよね。聞いててヒシヒシと感じる……。

友沢:いやいやいや……。

権八:でもさ、その「藝大に行きなさい」って言ったのは、スパルタな先生だったの?

友沢:そうですね。スパルタな先生と……あと塾の先生もそうでした。

権八:東丸アキコのマンガ『かくかくしかじか』みたいな感じなんだろね。

友沢:そうですね、ビシバシと。すごい大変でしたね……。

権八:でも、「お前ならできる」って言ってくれたんだよね?

友沢:そうですね、言ってくれましたね。その先生だけが言ってくれて。ホント嬉しかった。怖かったですよ、受験。ホントに怖かった……。

権八:でも、その先生はどうしてそういう風に思ったんだろうね?

友沢:私はそんなにデッサンが上手い方ではなかったんですよ。描き方をいつも怒られていて。「そうやって描いていったら、ぬるぬるしていくからやめなさい!」と。だから、今でもぬるぬるしたものしか描けないんですよ(笑)。

一同:はははははは!!

友沢:絵が全然できなくて……(笑)。でも、やっぱり「そうじゃない部分」がお前にはあるね、と。ぶれない何かがあるねと言ってもらえて。う~ん、それって何なんでしょうね?

一同:ははははは!

友沢:「上手い下手じゃないとこがお前にはあるから。お前のことは一番心配していない」って言われたんですよ。それを聞いてすごいビックリして。ん~!ありがとう、先生~!!

権八:ははははは!なんか、動きが面白いんですよね(笑)

中村:そうですね、動きが可愛らしいですね。

友沢:恥ずかしいですね……。

権八:ご本人はね、今もよく「不安でいっぱい」って言うんですけど……。

友沢:今もね、ホントに嫌な予感がするというか、ホントに受かったんかな?みたいな。

澤本:そこは受かってるよ!だって、4年生でしょ?(笑)

友沢:そうそうそう!そうですよね(笑)

権八:受かっているのに、そこに不安がある(笑)。でも「お前ならできる」って言ってくれる人って、すごいありがたいよね。

友沢:本当に、一生感謝すると思います。

澤本:でもさ、言われて本当に受かってるのが凄いよね。言うのは勝手だからね。

一同:(笑)

澤本:しかも現役でね。だから、その先生、素晴らしいんだね。

友沢:素晴らしい先生です。先生も藝大の方なんですけど。

権八:でも、入ってみたら周りもみんなすごかったわけでしょ?

友沢:怖かったです(笑)

中村:はははは!怖くはないでしょ?

友沢:いや、怖かったですよ……。

権八:みんな上手で?

友沢:上手です。カッコいいですよ、みんな。で、ちょっとビビって絵を描けなくなる時期もあって……。でもまぁ、そこで色々考えた末に「スライム」が誕生したんですよ。

澤本:なるほどー!



次ページ 「狂気の世界で描く、“あるがままのもの”」へ続く

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