初めてのバーチャルライブを開催
中村:ここで、毎回ゲストの方にお願いしている20秒自己紹介というものがございまして。ラジオ CM の秒数20秒に合わせてご自身を自己紹介してみてはいただけないでしょうかという無礼なコーナーなんですが……もしよろしければお願いします。
野田:とんでもないです!でも、20秒ってあんまり分かってないかも。
中村:ゴングがカーンとなりますので……それでは、どうぞ!
野田:野田洋次郎です。東京出身、世田谷区出身。好きな食べ物は、唐揚げ、きゅうりの浅漬けなどなど。幼少期にアメリカに4年ほど住んでました。日本に帰ってきて、ギターなど練習しまして、今バンドをやっております。兄がいます。両親もいます。え~…そんなところです。
中村:すごい。こんなサービス精神旺盛に言ってくれると思わなかった(笑)。
権八:すごいチャーミングな自己紹介(笑)。
野田:ドキドキしますね。カウントダウンされるだけで結構ハラハラしました。
中村:まあ分かったのは、野田さんは居酒屋的な食べ物がお好きですね。
野田:好きですね~。
中村:でも、そんなにお酒飲まれないですよね?
野田:めっちゃ飲みますよ!特に30歳超えてから、遅咲きなんですよ。
中村:野田さんが若い頃に書かれた自伝『ラリルレ論』を読んでると、「全然お酒飲んでない」って書いてあったんですよね。
野田:その頃は飲んでなかったですね。最近飲み始めたんですよ。
権八:お酒は何が好きですか?
野田:一番飲むのはウイスキーと焼酎が多いです。澤本さんといる時だけ、日本酒を飲みます(笑)。日本酒飲めるって強いですよね。
澤本:いやいや。逆に僕はウイスキー飲むと、翌日に人として機能しないんですよ。
野田:あ〜そうなんですね。じゃあ、日本酒であんなに這いつくばるようにタクシー乗っても、翌日は大丈夫なんですか!?
澤本:比較的死んでない状態っていうか(笑)。って、こんな話してる場合じゃなくて、野田さんの話を聞こうよ(笑)。
中村:そうですね。実はコロナ禍の中で、野田さんと一緒にバーチャルライブを開催しました。『SHIN SEKAI』というライブを無料・有料で1回ずつ配信させてもらいました。私が参画してる、PARTYって会社で、自分が主人公になって3 D 空間の中を好きに動き回れるプラットフォームみたいなのを持っていて……。その中につくり上げた音楽の物語空間を、アバターが動き回りながら、音楽体験かつ物語体験できるライブをアプリでリリースしたんですよ。
野田:最終的に1年ぐらいかけてやりましたよね。すごい可能性が開いた気がしました。引き続き、ああいうことをやっていきたいなと思います。広がりそうですよね。VR 的なことも混ざると、余計にすごいことになりそうで楽しみです。
権八:聞いてると、映画『竜とそばかすの姫』の仮想世界“U”みたいな世界観?
中村:そんな感じです。あそこまで格好良くはないですけど……(笑)。業界のトレンドでWeb 3.0的なものがきていますよね。Facebookもメタバースに傾倒していたり……。「自分がアバター化して、自由に動き回るみたいな空間」「誰もがそのネットワークの中に独立して存在している」みたいなのが次にくるWebなんだろうけど……って。みんなが模索しながら色々やっている時期なんですよ。
野田:ライブとしても新しかったですよね。僕らが巨人化したり。お客さんも好きな所から見れるんで、演奏している僕の肩に乗っかりながらライブ鑑賞するみたいな(笑)。それぞれが自由に動き回ったり、好き勝手できる空間なんですよ。
澤本:へ~すごい。
中村:それこそ、モーションキャプチャーで洋次郎さんにもじもじくんを着てもらって……。
野田:あれが一番屈辱的でした……。あれさえなければ、もっと良かったですけどね(笑)。あの瞬間だけは本当に記憶から排除したいです。
一同:(爆笑)。
中村:そしてですよ!2021年、約3年ぶりのニューアルバム『FOREVER DAZE』をリリースされました。おめでとうございます!
野田:ありがとうございます。
中村:じゃあ早速、色々アルバムの話を聞きたいんですけど。まずはアルバムから一曲お送りしましょうということで、洋次郎さんから曲紹介お願いしてもよろしいでしょうか。
野田:はい。じゃあアルバムから澤本さんが好きだと言ってくださった曲をかけようと思います。RADWIMPS で『かたわれ』。
RADはバンドから音楽実験集団へ!?
澤本:ほんと『かたわれ』がめちゃくちゃ好きなんです。
野田:いや~嬉しいです。
澤本:『FOREVER DAZE』のアルバム自体が何でしょうかね……。なんか喋ってるうちに失礼なこと言いそうな予感が朝からしてて、すごい嫌なんですけど(笑)。
野田:朝からですか!?じゃあ絶対言いそうですよね(笑)。
権八&中村:(爆笑)。
澤本:昔、曲の感想を野田さんに送ったんですよ。「ものすごくフォークっぽい。吉田拓郎の曲を初めて聞いた時のような、曲が頭にガンガン入ってくる感じがある」って。
野田:ありましたね。
澤本:今までの作品も全部そうなんですけど、今回のアルバムが一番感じたんです。それはただ単にフォークっぽいって言ってるわけじゃなくて。すごく歌詞が入ってくるんですよ。それに色んな人格の野田さんが曲をつくってきているなか、アルバムのこのタイミングでポーンとゆっくりな曲がくるからだと思うんですけど、スーっとこう体に打ち込まれているというか……。
野田:アルバムの中ではエアポケット的な役割の曲でもあって。ひたすら有象無象が渦巻いていたアルバムで、ここでふと一瞬空気が、ピンと張るというか。そんなイメージでつくりました。
澤本:ひとつのアルバムの中でいくつもの人格を感じました。
野田:忙しいアルバムではあるんで、この曲が癒し効果を発揮してるのかなと思いますね。
権八:『愛にできることはまだあるかい』も僕、すごく好きなんですけど、やっぱりなんていうかな……。野田さんが格闘してるテーマというかね。宇宙や世界と、自分、みたいなことがテーマとしていっぱい出てくるじゃないですか。その中でこの曲はとてもパーソナルに感じられて。こういう素敵な人との時間があったんだな〜みたいな。近距離の話だから。
野田:四畳半ってイメージですよね。本当にほぼ俺の家は歌詞と同じなんです(笑)。家帰ってすぐ靴下脱いで、ポロンと靴下が置いてある。朝飲みかけのハイボールや酎ハイが残ってたりとか……。そんな情景がありながらつくり始めた曲ですね。
澤本:権八が言ってくれたみたいに、世界や大きな話をされてるときに、身の回りの話がポンとくる感じ。それでか!それでものすごく沁みるのか。
権八:それもあるんじゃないですかね。あとアルバムの構成も相まって。
澤本:今回のアルバムで特に思ったんですけど、元々は野田さんってベースにきちんとした音楽があるじゃないですか? たしか習っていたんですよね。クラシックとかのベースがある人が真剣味出してる感じがすごくするんです。
野田:それは間違いなくありますね。特に『君の名は。』『天気の子』と、2022年3月に公開予定の『余命10年』という3本の映画の劇伴を全部担当したんですけど……。映画のサントラをつくる作業を通して、HP が2万くらい上がった気がした。基本的に木管・金管も含めたフルオーケストレーションで制作していて、それがバンドに還元される量というか、得るものの量がすごかったんですよ。単純にバンドアンサンブルをつくるうえでも、身になることが多かったです。
澤本:前のアルバムも含めて、元々ピアノは弾いていらっしゃったけど。今回のアルバムは弦楽器がすごく効いている。僕も乏しい知識で言うけど、ポール・マッカートニー的というか。
野田:あ~!
澤本:ある時期にポール・マッカートニーが急にそっちに行ったような……。
野田:そうですね。バンドサウンドから移りましたよね。だから、もう RADWIMPS はバンドでもあるけど、だんだん音楽実験集団みたいになってきている気がします。そのとき本当に面白いものに反応して、それを RADWIMPS というフィルターでブレンドして、何か新しいものをつくるみたいな。
権八:ご本人を目の前に恐縮ですけど、やっぱり本当に幅が広い。昔の音楽的なカルチャーから、最近の世界情勢的な距離まで、いろんな要素がブレンドされていると感じます。改めて、さっき曲を聞いてて思ったけど、声の説得力がありますよね。
野田:いや~、本当ですか?
権八:なんかこんなに褒めるのも気持ち悪いですけど(笑)。
野田:俺もこんなに褒められていいのかな? っていう(笑)。ありがたいですね。
権八:すごいピュアな歌声。
野田:でも、僕ずっと自分の声が嫌いだったんですよ。いまだに好きではないんですけど……。
権八:え!そうなんですか!? めちゃくちゃいい声してるのに。
野田:少しずつそう言ってもらえることがあって、だんだん好きになれてきました。レディオヘッド(英のロックバンド)のトム・ヨークも「自分の声が大嫌いだ」って言ってたんですよ。彼も初期の作品は、思いきり声を歪ませたり、イコライザーでエフェクトをいじったり、色んな試みをしている。その時期を経て、ようやく自分の声を愛せるようになるというか……。一緒に育てて、この声しかないから、それにこの声を羨む人がいてくれるんだったら、一生磨いていこうっていう気持ちに変わっていった。今は、歌うことが今までで一番好きですね。
権八:家でハイボールとか飲み過ぎないでね(笑)。
一同:(爆笑)。
野田:大丈夫です。ライブ前とかは控えてますから(笑)。
<後編につづく>