※本記事は、2022年3月1日発売の月刊『宣伝会議』4月号掲載記事の一部を転載しています。
?野家CMO
グリッド CEO
日本スポーツ協会ブランド戦略委員会委員
田中安人氏
D&F Creates
代表
矢野健一氏
“パーパスと共感の時代”日本企業の課題とは?
――マーケティングが顧客体験をつくる時代になったと言われるなか、いま企業では、どのような仕組みや働きかけが必要なのでしょうか。
矢野:まず、私と田中さんが抱いている共通の思いが“ピープルファースト”な企業をつくりたい、ということなんです。
このことを標榜している企業はあっても、実態として育っていないのが現状です。
ここを実現するための話し合いにおいて、田中さんの言葉で一番印象的だったのが“言動一致”。
人間同士のコミュニケーションでも言動が一致しない人は信頼できません。それはまさに、企業においても言えることなんですよね。
それでは、企業にとっての言動一致とは何かと考えると、それは“パーパスとビジョンをつなげること”なんです。そこを行動指針にまでしっかりとつなげていく。このような視点で見ると、実はやり切れている経営者はとても少ない。
つまり、これこそが今の日本企業における経営の課題だろうと考えています。
田中:僕が今、?野家のCMOとしていられるのは、?野家の企業理念が“For the People”だからだと思います。
結局、成果を出す組織というのは“ピープルファースト”の体制になっているものなんです。
私は、これからは「パーパスと共感」の時代だと考えています。
顧客からの“共感”について自身の経験を振り返ると、2018年に?野家で実施した、肉商品を主力商品とする5社のコラボレーション施策「外食戦隊 ニクレンジャー」が思い浮かびます。
この施策が大きな反響を呼んだ理由は“共感”なんですよね。今はもう、競合同士で戦う時代じゃないんですよ、という“パーパス”への共感だったように感じます。
それでは何故、日本企業にとって“パーパス”が課題なのかといえば、パーパスは「つくり出すもの」だと勘違いしている人が多いからです。パーパスとは決してつくり出すものじゃなく、もともと組織のなかに存在している核のようなものを「削り出すもの」なんですよ。
パーパスを形にするプロセスこそマーケターの腕の見せ所
矢野:「パーパスは“ 削り出すもの” 」。今の言葉も名言ですね…。まさにそのとおりだと思います。
核となる考えや譲れない思い、文化などは、どの企業にも存在するはず。それをちゃんと見つけて形にして、皆が目指せるようにするプロセスが非常に大切です。
まずは見つけ出すまでが大変ですが、そのプロセスこそマーケティング部が培ってきたスキルを発揮できる場だと思うんですね。
もうひとつ大切なのは、掲げる“パーパス”と“従業員の価値観”とのすり合わせをちゃんと行うこと。従業員のニーズを汲んですり合わせることも、マーケターの得意とするところだと思います。何よりも、そうして形にしたパーパスを、きちんと社内に浸透させる時にマーケティング部としての力が必要になるのではないでしょうか。
田中:矢野さんがおっしゃったことは、マーケティングの定義にかかわる話だと思います。
本来、「マーケターってどんな人ですか?」と言ったら、人の心を動かして行動を喚起する人たちのはずなんです。最近では狭義の意味のマーケターが横行していますが、マーケターの本質というものを捉え直さないと、社員が行動にいたるまでにパーパスが浸透することは難しいと思います。
パーパスとバリューを結び、行動にまで移るルールづくりが肝
――マーケティングの力を生かしながら、従業員が自分ゴトとして行動できるパーパスを設定することが、“ピープルファースト”な経営への第一歩となるのですね。
矢野:そうですね。さらに言うのであれば、従業員が幸せになることは、顧客を一生懸命幸せにしようとする動きにつながるんです。
―本記事続きは、2022年3月1日発売の月刊『宣伝会議』4月号で読むことができます。
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?野家 田中安人、D&F Creates 矢野健一
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