歌い手の声だけが響き渡るコロナ禍のライブ
中村:いや〜…めちゃくちゃ良い!流していただいてありがとうございます。
中村:この曲はどうやって着想したんですか?だって、洋次郎さんご結婚されてないですよね?
野田:結婚してないですし、子どももいないです。
中村:実はいる…?(笑)
野田:いないです(笑)。
一同:(爆笑)。
野田:自分の未来の子どもに向けた曲はたまに書いたりしています。不思議な鎖というか、上から貰ってきたものを下の代に引き継ぐパスというか……。生きている間中ずっと、僕らはその鎖のひとつでしかないんだなっていう意識があるんです。この考えは僕の歌詞のテーマになりやすい。そんなことを考えてると、どうしても未来の自分の子どもの話が出てくるんですよね。
中村:なるほど。そして、 RADWIMPS は今絶賛全国ツアー中だと(現在は終了)。コロナ禍の影響もあって、約2年ぶりのツアーですよね。『FOREVER IN THE DAZE TOUR 2021-2022』。久しぶりのライブ、どうですか?
野田:感極まりましたね。1万人近いお客さんを目の前で見れたこと。なんかもう、顔と顔、視線を合わせただけで「やっと会えたね」って感覚が強すぎて。泣き顔や笑顔を見るだけで、やばかったです。僕らのホーム、いるべき場所に帰ってきたなって感じました。
澤本:うちの子どももライブ行ったんですよ。
野田:あ!まじすか!?
澤本:すごく良かったんですって。今、観客の方はライブで声出せないじゃないですか? だからこそ、その空間すべてにRADの曲が響き渡っている状態が良いと。今までならそんなことないじゃないですか。
野田:あ~なるほど。ないですね。
澤本:まるで教会で賛美歌を聞いてるようだと言ってました。こんな状況でRADWIMPSの楽曲を聞けて幸せだと。
野田:それを娘さんが言っていたんですか。すごい表現だな~。確かに僕らのライブって、お客さんが異常なくらい歌ってくれるんですよ。実はファンの間では論争が起きていて。「お前の歌聞きに来てねえよ!洋次郎の声聞きに来てんだよ」っていう(笑)。それに対して「ライブぐらい好きにさせろよ!」側もいて。両方正論だと思うんですけど、そういう意味では今回のライブツアーは特殊ですね。僕らも端折れないんで、だいぶしんどいですけど……(笑)。
澤本:端折れない(笑)。
野田:マイクを客席に向けるっていう伝家の宝刀が出せない(笑)。
中村:うちの会社のメンバーも行ってて、良い意味でバンドのライブ感を感じられたと言ってましたね。あとは、元ねごとのギタリスト・マスダミズキちゃんとか、ゲストも凝ってると聞きました。
野田:そうですね!ミズキちゃんとSuchmos のTAIKINGが入ってくれて。場所によっては、Awichとかiriも来てくれるので楽しみです。
平和主義者の野田洋次郎は長編物語が書けない!?
中村:アルバムのニューリリースでツアー回っている最中ですけど、野田さんが今後チャレンジしてみたいことはありますか? 今は、俳優としても活動されてますよね。
野田:そうですね。ごくたまにやらしてもらってますね。
中村:映画『キネマの神様』。やってみてどうでした?
野田:全てがすごかったです…!「山田洋次すごい」みたいな。山田洋次組も含めて、ものづくりに対する熱量が半端ない。最後に一点の曇りもないように「これでGOして良いのか」っていうギリギリまでの詰め方、細部へのこだわりとかすごかったですね。僕が言うのも恐れ多いですけど、「この年齢でこんなことできるんだ!」っていうのが励みにもなりましたし、すごい人だなと思いました。
中村:今後は俳優活動もやっていくんですか?
野田:いや、基本的には全くやらないスタンスです。「この作品、本当に面白いんでぜひ!」って言ってくださるものがもしあれば、また出たいとは思っています。
権八:ちなみになんですけど。やっぱり詞がすごく素晴らしいと思うんですよ。そこで、もっと長いもの書いてみたいっていうのはないですか?
野田:あ〜!実はこの10年の間で2回くらいはオファーをいただいたことがあって。でも、実際に書こうとしても、全く自分に才能を感じなかったんですよね(笑)。もう、やばいぐらい。物語つくるの下手くそなんすよ。
中村:曲も全部物語というか。すごくイメージできますけどね。
権八:僕もそう思ったんだよね。
野田:例えば、小説書くとなると、事件を起こさないといけないじゃないですか? 僕、平和主義者なんで、何にも起きてほしくないんですよ(笑)。
一同:(爆笑)。
野田:ずっと幸せでいてほしい。でも、そういう物語って、くそつまんないんですよね(笑)。音楽はその点、基本的に自分の経験というか感情というか、全部が一人称の物語で完結しているので。他の登場人物にキャラクターを与えて、その人たちをフィクションで動かしていくってことに、才能を見出せなくて。映画を観ていても、悪役とか嫌な性格の人とか、登場してほしくないって思っちゃうんですよ、僕(笑)。だから、僕がつくると無個性な人たちで溢れちゃうので、向いてないんですよね。やるとしたら、本を読むところから始めないとな。
権八:でもあれですよ、以前にゲストで燃え殻さんっていう小説家の方がきてくれて。Netflixで映画化された『ボクたちはみんな大人になれなかった』の作者でもあるんですけど。全然、本読まないらしいですよ。
野田:へ~!すごっ。
権八:実際に書いてることは一人称の物語。自分が主人公の私小説だから、これまでに起きたことが盛り込まれているというか。面白いですよ。
澤本:あんまり長くなければいいんじゃないですか? 別に長いのがダメって訳じゃなくて。自分のある日の一日とかを書いて、短編集にすれば……
中村:それは読みたいかも!
権八:なんか、みんな寄ってたかって書かそうとしてない(笑)!?いろんなこと言ってあの手この手で(笑)。
一同:(爆笑)。
野田:皆さんにペン入れてもらおうかな。
澤本:さっきも出てきた中原中也って詩人じゃないですけど、野田さんには元々ああいう人が持っているようなベースがある気がしていて。きっと適正な長さがあって、そこにはまると、良いような気がしますけどね。
野田:いや~よっぽどの覚悟がないとできないですね。でも、2022年はチャレンジしてみようかな。きっかけを今いただいたので。
中村:半ば強引に(笑)。
野田:でも、死ぬほど面白くなかったら本当に嫌ですね(笑)。もうマジで友達やめるんじゃないんですか、澤本さん…。
澤本:やめないですよ!大丈夫大丈夫。
野田:ただ、それで「洋次郎はやっぱり音楽が合ってんだな」って確認もできるということで(笑)。
中村:残念ながら、そろそろお時間というわけで。2022年春公開の映画『余命10年』の劇判も担当されているということで。
野田:はい。3月4日公開。今、飛ぶ鳥を落とす勢いの藤井道人監督の作品です。坂口健太郎くんと小松菜奈さんが出ていて、本当に素敵な映画でした。実は僕、実写のサントラ初めてつくったんですよ。
権八:あ〜そっか!
野田:今までは新海組だけで、アニメって絵を一切見ずに音楽つくるんですよ。
澤本:え!? 脚本というかプロット見ながら?
野田:そうです。ビデオコンテというか。深海さんが書いたスケッチに、ここにこういう台詞が乗りますよっていう静止画に、僕がきっとすごい絵が乗るんだろうっていう想像の元、音楽を当てる。今回の実写で、初めて本編を見てから制作に入れたのは新しい経験でした。100回近く見ながらつくりましたね。
中村:え、そんなに!? すげえ…。
野田:ぜひ見てください。
中村: 3月4日公開の『余命10年』。皆さん楽しみに待ちましょう!この番組はTOKYO FMのデジタルコンテンツが集約されているスマホアプリ『オーディ』でも、番組のトークのみ配信中です。もう一度聴きたい・知りたいという方は『オーディ』で検索してみてください。というわけで今夜のゲストはRADWIMPS・野田洋次郎さんでした!ありがとうございました~!
権八&澤本:ありがとうございました!
野田:ありがとうございます!楽しかったです。