3月10日に、東京・下北沢ボーナストラックで「Carbon Pay展」が始まった。本展では、CO2削減プロジェクトを支援する構想「Carbon Pay」の考え方やプロトタイプが展示されている。
カーボンフットプリント(商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された「温室効果ガスの量」をCO2量に換算して表示すること)は広く知られているが、本展で紹介されている「Carbon Pay構想」とは一体どんなものであるのか。
「Carbon Pay構想は、自分のカーボンフットプリントに合わせて、その量に相当する金額で、CO2を吸収する取り組みを支援できる仕組みです」と、本構想の企画者の一人、佐藤ねじ氏。
Carbon Pay構想は、パナソニック デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORYとマッキャンエリクソンの事業共創組織であるマッキャンアルファ、ブルーパドル、NPO weMORIが共創したもの。FUTURE LIFE FACTORYが未来の暮らしを考えるプロダクトの一つとして、企画が始まった。
「当初はもっとアートよりのテクノロジーを検討していたのですが、未来の暮らしを考える中で、いまならグリーンテックが適しているのではないかという話になりました。ブルーパドルのメンバーの一人である清水イアンが環境活動家であることから、みんなで学びながら考えていくことになりました」(佐藤氏)
取り組みにあたり、FUTURE LIFE FACTORYは、あらためて自社の課題を洗い出した。パナソニックの場合、バリューチェーン全体から年間約1.1億トンのCO2を排出しており、それは世界の消費電力のほぼ1%に責任を負っている。そしてその大半は、毎日10億人以上が利用している、パナソニック商品の消費電力による排出だ。カーボンニュートラルの達成には、自社からのCO2排出量を実質ゼロにするのはもちろん、ユーザーの商品使用による排出量の削減にも貢献していかなくてはならないのが現状だ。
そこで、個人が毎日の生活の中で地球温暖化問題に対してアクションできるアイデアを、まずはコンセプトとして発表し、顧客に問いかける本プロジェクトを、社会実装に向けての第1歩と位置付けた。
こうした前提のもと考える中で見えてきた課題は
・自分のフットプリントの可視化
・出しすぎたフットプリントを対処するか
という2つのことだった。
「フットプリント量を減らすことは、どうしても我慢することになってしまいがち。そうではなく、オーバーした分にお金を払うかたちでアクションしていくことができれば、家の中が変わるかもしれない。それを新しい習慣にしていく提案ができないかと考えました」(佐藤氏)
この構想を実現するためにデザインしたのが、カーボンフットプリント家電のプロトタイプだ。例えばリモコン、コーヒーマシン、オーディオといった日常的に目にする家電に、自分が出してきたカーボンフットプリントが表示される。さらに個別の家電だけでなく、家全体のカーボンフットプリントを表示し、NFCタッチでカーボンペイできるデバイス「Carbon Pay Touch」のプロトタイプやCarbon Payアプリもデザインして展示している。
近い将来、生活の中で温度や湿度を気にするように、「kgCO2e」という単位を当たり前のように確認すことができる。そして、誰もが自分のカーボンフットプリント量をきちんと把握し、それに合わせて活動するようになる。さらに、森の保護・植樹・サンゴの植え付け・サイエネ発電所の建設・その他グリーンテックなど、自身が応援したい団を支援できる仕組みにもなる。――そんな未来の姿をこれらのプロトタイプは見せてくれる。
日時:3月16日(水)まで。11:00~19:00 ※入場は終了の30分前まで
場所:下北沢ボーナストラック
入場料:無料
「こうしたプロジェクトでは、そもそも何かをつくること自体がエコではなくなるという構造をはらんでいて、とても難しいのですが、こういうかたちで啓蒙からアクションにつながる企画をいろいろと出していけたらと思っています」(佐藤氏)
Carbon Pay展は、3月16日まで開催される。
スタッフリスト
- 企画制作
- Panasonic, FUTURE LIFE FACTORY+McCann Tokyo, McCann Alphα+Blue Puddle+weMORI+パラゴン
- Project Owner+D
- 井野智晃
- Project Owner+Design Engineer
- 鈴木慶太
- CD
- 吉富 亮介
- AD+企画
- 佐藤ねじ
- TD
- 泉田隆介
- I
- あけたらしろめ
- 企画+アドバイザー
- 清水イアン
- Pr(MOVIE)
- 酒井剛
- PM(MOVIE)
- 原島敏郎
- 演出r(MOVIE)
- 津田陽
- Motion Design Pr
- 前田光朝
- Product Development(Audio)
- 稲生雅裕、溝端 友輔
- Space Designer
- 獅子田 康平