“ 参加者が誰にギフトを贈るか真剣に考えていて、
部門を超え仲間に思いを馳せるきっかけがつくれました ”
アドビ 広報部
坂田 彩氏
さかた・あや 2014年アドビ入社。インターナルコミュニケーションやCSR活動を含む社内外の広報業務を通じ「Adobe Life」を発信。
米国で創業し、2022年に日本オフィス設立30周年を迎えるアドビ。Photoshop、PDFはじめ、クリエイティブとデジタルマーケティング、両軸のソリューション事業を併せ持つのが強みだ。「心、おどる、デジタル」。この新たな国内ビジョンを神谷知信社長は掲げている。その実現にあたり課題となったのは事業部ごとの組織の分断だった。従業員エンゲージメントを高め、組織横断的な連携を促すため「All Adobe」の取組みを実施。広報部門は、オンラインのイベントや社内報などの発信を強化した。その一方で従業員約600人のうち3割がコロナ禍の中で入社となり、2020年の3月からリモートワークが常態化。従業員調査では「Belonging(所属、一体感、帰属意識)」という項目が低下していた。
感謝を直接伝えるきっかけに
そんな中、広報の坂田彩氏が「All Ad obe」を促す企画として発案したのが、感謝の気持ちをデジタルギフトの「QUOカードPay」を使って贈り合う施策だった。
「アドビには、年末のタイミングで、感謝のメッセージをEカードで送り合う仕組みが、グローバルですでにあったのですが、活用しきれていませんでした。そこで500円分のデジタルギフトを添えられるEカードを3枚ずつ全社に配布し、普段なかなかお礼を言えていない同僚3人に感謝の気持ちを贈ってください、という企画を提案しました」。
参加対象となったのは、アドビに所属する正社員、契約社員、そしてコロナ前はオフィスで共に働いていた外部のベンダーワーカー。「All Adobe」プロジェクトのリーダーである常務執行役員の里村明洋氏から、2021年12月17日の全社ミーティングで、本施策をアナウンス。12月24日までの1週間を期限とし、3人の人に感謝の気持ちを贈ってください、と案内した。また直後に全社へメール配信し、中長期計画の目標売上を前倒しで達成できたのは「組織横断的な連携」の賜物であること、「Involved(他部門やコミュニティと積極的にかかわっていく)」は同社のコアバリューのひとつであり、この機会に仲間に感謝を伝えてほしいことを、里村氏が丁寧に伝えた。
デジタルギフトとして採用した「QUOカードPay」は、URLにアクセスしてバーコード画面を提示するだけで、コンビニエンスストアやドラッグストア、書店など身近な店舗で使えるもの。参加者は、好きなデザインのEカードを選び、メッセージ欄に感謝の気持ちと「QUOカードPay」のURLを入力して、3人に送信する仕組みとした(図)。
届くと嬉しい、話も弾む
「この施策を告知した直後から『こんなプログラムを用意してくれてありがとう』といった反応がありました。事後アンケートには、読み切れないほどのコメントが集まりました。対象者の25%にあたる170人が回答しています。これは、日頃の全社ミーティング後のアンケート回収率に比べ非常に良い数値でした。また『良い施策だと思う』と回答した人は95%、『今後も参加したい』人は99%にのぼりました」。
アンケートで一番多かった反応は、「コミュニケーションするきっかけになった」というもの。「感謝を伝えることを改めて考える機会が得られた」「部署を超えて感謝の気持ちを伝えあうことができて良かった」「リモートワークで直接会ってお礼を言えなかったが、距離を縮めることができた」「これをきっかけに、普段話せない内容まで会話が発展。気持ちも前向きになった」「会社がギフトを贈り合うことをサポートしてくれるのがすごい」とい った声が集まった。
また「期限までに3人にデジタルギフトを贈る」という制限を設けたことで、「先延ばしせずに参加できた」という声も。中には、3人へのデジタルギフトの送付だけでは足りず、「自費でデジタルギフトを追加購入したい」という人もいた。
アンケート回答者のうち73%が、既存のEカードの仕組みを使用していなかったが、97%が今回の施策でデジタルギフト付きのEカードを送付。83%がデジタルギフトを受け取ったことが分かっている。実際500円分のデジタルギフトを受け取った人からは、「届くと嬉しい」「コンビニで使うと、ちょ っとした贅沢感が味わえる」「不足金額を現金で支払えるので、最後まで使い切れる」といった意見があった。
人と人をつなぐコミュニケーションツールとして「QUOカードPay」を活用した本事例。リモートワークだと、なかなか切り出しにくい「改まってのお礼」や「心づかい」を、仲間に気軽に伝える機会を生み出し、職場への愛着や仲間との結束を高めることに寄与している。
コロナ禍においては、こうした部門を超えたコミュニケーションを活発にする機会を積極的につくり出す重要性が高まっている。それは、従業員が自身の仕事だけでなく企業全体に目を向けるきっかけとなり、企業が向かいたい方向性への共感や、自発的な貢献意欲を育てることにもつながる。
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