消費者庁は3月16日、デジタル化が進む社会環境での景品表示法の執行や、不当表示など違反行為を早期に改めたり、未然に防いだりするための手立てを検討する会議の第1回を開催した。2022年中をめどに報告書を取りまとめる。
第1回検討会では、委員から、日本国内に拠点を持たない海外企業による不当表示の排除や、先行してガイドラインの策定が行われているアフィリエイト広告に端を発する、広告主企業の表示主体性や、フリーマーケットサービスなど消費者間取引など、多岐にわたる論点が出た。消費者の行動を阻害する、いわゆる「ダークパターン」や、課徴金制度の実効性についても言及された。
第2回以降は、不当な広告表示による消費者問題の検討を行うほか、他国の実情、独禁法の執行状況のヒアリングなどを実施する予定。
座長を務める神戸大学大学院法学研究科の中川丈久教授は「実務的なものから、将来にまで影響する課題まで、さまざまな次元の論点が出た。〔景表法の〕改正が必要なのか、あるいは解釈運用の確立か、大きなものに答えは出ないが、本検討会で一定のめどをつけたい」とした。
景表法=不当景品類及び不当表示防止法は1962年に制定され、ことしで60年が経過。2014年に改正し、課徴金制度を導入した。
検討の背景には社会構造の変化もある。特に4月1日施行の成年年齢引き下げによって、18歳から契約が可能になるため、若者を狙う悪質商法の被害防止が求められている。2020年の15〜19歳の商品・サービス別相談件数では、上位が脱毛剤や健康食品といった美容関連だった。
消費者庁の伊藤明子長官は、「消費者はきちんとした情報を与えられ、自ら正しい選択をする権利がある。そのためには、その情報となる表示が適正なものであることが極めて重要。デジタル生活の進展など、社会状況の変化も大きくなってきたため、総合的に検討したい」とした。
消費者庁による措置命令事案で、2020年は75.0%がWebでの表示を含むものとなっている。措置命令件数は2017年の50件をピークに、20年は33件と減少傾向にある。一方、違反が疑われる表示の情報提供件数は、17年の1万1053件に対し、20年は1万1650件と同程度。把握から措置命令に至るまでの平均日数は約1年弱の322日かかるという。