約30年ぶりの復刻で販売201万箱超え アサヒビール「マルエフ」

1986年誕生の「アサヒ生ビール」。家庭向け缶商品の販売は93年に終了したが、飲食店での取り扱いは続いていた。2021年9月、「マルエフ」の通称通り、不死鳥の如く缶商品が復活すると3日で一時休売になるほどの人気商品となった。

人気連載「ヒットの仕掛人に聞く」では、いま話題の “ヒット商品” の 仕掛け人が開発の背景やプロモーション戦略を明かします。

本記事は、2022年4月1日発売の『販促会議』2022年5月号 の転載記事です。
 

DATA

商品名:アサヒ生ビール(通称マルエフ)
実勢価格:350ml/219円前後、500ml/ 286円前後(税込)
主な販路:全国の酒類販売店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど
 

今月の仕掛人

アサヒビール
新ブランド開発部 ブランドマネージャー
渡邊 航太郎 氏

 

新規開発ではなく「復活」

──新商品の開発ではなく既存商品を復活させることとなった経緯は。

酒税の改正もあり、ビールカテゴリーは伸びると考えています。そこで「アサヒスーパードライ」と並ぶ柱をもう 一本立てたいという思いがありました。開発企画を検討する過程で市場動向やお客さまの意見を聞いてみると、「競争から共生へ」という言葉もあり、世の中が優しい方へ向かっているように感じました。また、コロナ禍で人と人とのリアルなつながりが薄れ、不要不急を避けるべきという風潮もあります。こうした社会に向けて、つながりやぬくもりを感じられるビールブランドを立ち上げたいと考えました。

加えて、新商品にこだわらなくてもいいのではないかと考え、様々な選択肢を模索してたどり着いたのが「アサヒ生ビール」通称マルエフです。
マルエフは一般向けの缶の販売は終了していましたが、飲食店での樽生の取り扱いは継続し、社内でも大切にされている商品でした。扱われる飲食店もこだわりのお店が中心で、一部のコアなファンに愛されてきたという歴史がありました。こうしたブランドのストーリーが今回のコンセプトに合致していると判断し、マルエフを復活させることになりました。

CMキャラクターには俳優の新垣結衣さんを起用。ぬくもりを感じる世界観と「おつかれ生で す。」のコピーでブランドイメージを訴求した。飲食店のシーンも組み入れることで、商品背 景を想起させている。

──復活にあたって何か変えたことはありますか。

長く愛していただいているファンもいるので、味に関しては変えていません。コンセプトを再定義したことにより、パッケージデザインと、訴求内容を変えています。1986年当時は「コクがあってキレが ある」と味覚を表現していましたが「キ レ」はスーパードライの特徴と重なり ます。また、長く扱っていただいている飲食店の方の話を聞いていると、や わらかい口当たりやマイルドさがポイ ントになっていました。「コクキレ」で はなく「まろやか」いう表現を使えば、今回のコンセプトに合いますし、スー パードライとの違いを伝えることがで きると考えました。
 

懐古主義ではなく温故知新

──2021年末までの目標150万箱に対して201万箱を販売しました。

一時休売がなければもっと売れていたとは思います。お客さまの元に届けられなかったことについて本当に申し訳なく思っております。販売初週のビール内シェアは、インテージ社のデータでは19.5%を記録していました。私たちとしては7%台であれば目標を達成できると試算していたので、ここまでの反響は予想していませんでした。

売り上げ数以上に驚いたのはSNSでの反響です。Instagramでは「#マルエフ」のハッシュタグで3 万件以上の投稿があるなど、たくさんの方に届いていることを実感しました。
マルエフは「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」のように見た目のインパクトは少ない。それでも拡散したのは飲食店での愛され方やマルエフの由来など、ブランドストーリーに誰かに話したくなる共感できる要素が多かったからではないかと考えています。

発売後「#マルエフ」のハッシュタグで3万件投稿されるなど、大きな話題となった。小売店と飲食店の連動も意識したマンガ『孤独のグルメ』とのコラボレーションも。

 

―本記事の続きは、4月1日発売の『販促会議』2022年5月号で読むことができます。
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