メタバースは実店舗、ECに次ぐ第3の主要チャネルに
コロナ禍で苦戦を強いられる百貨店業界。ウインドウショッピングや、デパ地下のショーケースに並ぶ食品を見ながら買い物を楽しむことは不要不急とも言われ、一時期はその買い物体験を提供することすら難しくなっていた。
そんな中、大丸松坂屋百貨店はコロナ禍での新たな取り組みとしてバーチャルの活用を開始。2020年末に初出展し、その後2回にわたってHIKKYが主催する「バーチャルマーケット(Vket)」に「バーチャル大丸・松坂屋」を出展した。バーチャル空間はECサイトとつながっており、購入を決めた商品はECで購買が完了する仕組みだ。
同社が購買の対象にしたのは食料品。3度目はVket2021の「パラリアル渋谷」に出展。12月初旬だったこともあり、クリスマスやお正月にまつわる商品をバーチャル空間上で展開した。
「バーチャル大丸・松坂屋」を担当しているのは、大丸松坂屋百貨店本社ギフト企画運営担当の田中直毅氏だ。普段はお中元やお歳暮、慶弔、ブライダルをはじめとしたカタログを伴うギフトの企画・運営を担当。カバーするチャネルは店頭、EC、外商と多岐にわたる。
「出展のきっかけはコロナ禍です。これまでのお買い物体験をお客さまにお届けできなくなってしまい、 “どうすれば別の方法で買い物を楽しんでもらえる環境を創出できるか”を考えていました。その解決策のひとつとして選んだのがメタバースです」(田中氏)。
同氏の担当する「ギフト」というカテゴリーは来店することなくカタログやECで比較検討し、購買まで進めることが多い商材。これまでECで使用していた商品写真やデータを用いれば、メタバースへの参入は容易であったことも、挑戦するきっかけのひとつになった。
さらに、大量の紙を消費する「カタログ」はサステナビリティの観点からも推奨されるべきではないもの。メタバースがペーパーレスへの解決策にもなると考え、メタバース出展を決めたという。
「実際にVRヘッドセットを装着して店舗内を散策してみると、実店舗に来店しての買い物と近い体験ができるとわかりました。ワインなどの、ラベルがブランド価値とも言える商品も出品したのですが、リアルで見るのと何ら変わらない。これは実店舗、ECに次ぐ第3の主要チャネルとして新たな商空間に活用できると思いました」(田中氏)。
メタバースに食品を出品した理由
メタバースに店舗をオープンするには十分な理由がそろい、今後の活路も見いだせているという大丸松坂屋だが、特徴的なのは出品対象に食料品を加えた点だ。現状の仮想空間上では、実際にアバターが食事を楽しむことは難しい状況にあるにもかかわらず、なぜ食料品を出品したのだろうか。その理由は「実際に感じた食欲」と「これまでとは異なる、出品商材の物珍しさ」だったと話す。
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▼特集1
メタバース
─新しい“世界”は、マーケティングをどう変える?
・中央大学 岡嶋裕史
・LGエレクトロニクス・ジャパン 宇佐美夕佳
・日産自動車 遠藤和志、鵜飼春菜
・サンリオ 町田雄史、サンリオエンターテイメント 佐藤 哲
・KDDI 川本大功
・講談社 小林伸裕
・電通クリエーティブX 小笠原 悟
・博報堂 尾崎徳行
・骨董通り法律事務所 岡本健太郎
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