キリンビールは4月18日、会員制の生ビール配送サービス「キリンホームタップ」で、ヤッホーブルーイングに続き、銀河高原ビール、ファーイーストブルーイングのビールをラインナップに加えると発表した。現在の会員の9割近くが「商品の豊富さに期待している」と答えており、満足度を高める。担当するキリンビールの山田雄一執行役員事業創造部長は「いまはサービスの品質を高めていくという方針でサービスを大きくしていきたい」とした。
会員数は、2021年8月の第2四半期決算で発表した10万人から更新はなかった。21年内の目標を前倒しで達成し、15万人に上方修正していたが、進捗については回答を控えた。会員制サービスのため、退会を減らすなど維持施策も重要となる。山田執行役員は「会員獲得、維持の両方の視点で、現段階は学習しているフェーズ」とした。
小売店で販売する缶商品や、飲食店で提供するビールとの連携も課題だ。注力ブランドの「スプリングバレー豊潤〈496〉」では、手応えも出てきた。同ブランドを「ホームタップ」契約後に購入したという会員は55.9%に上ったという。「スプリングバレー」の「ホームタップ」での提供に先がけ、昨年10月に会員444人を対象に調査した。
「『スプリングバレー豊潤〈496〉』は発売時に大きくマーケティング施策を投じたこともあって好調で、ブランド認知が大きく伸びたこと、これまでクラフトビールを試す機会が限られていた方が『ホームタップ』で興味を抱いた、という点がかみ合い、購入につながったのではないか」(山田執行役員)
まだ出荷量などへのインパクトは少ないものの、「サービスが広がっていくことで、ふだんクラフトビールになじみのないお客さまでも、トライアルにつながるという循環はある」と期待を寄せた。
「ホームタップ」での商品提供に参画するクラフトビール各社の狙いも、新たな顧客接点の獲得にある。2月に先行して基幹ブランドの「よなよなエール」の提供を始めた、ヤッホーブルーイングの井手直行社長は、「まだクラフトビールを体験したことのない方はたくさんいる。多様な商品を提供できれば、クラフトビール市場、ひいてはビール市場の活性化につながる」と話す。
「サーバーから自分で注いで飲む体験に魅力を感じた。こうした体験価値もビールを盛り上げるきっかけになるのではないか」(井手社長)
今後、参画予定のファーイーストブルーイングの山田司朗社長も「生活スタイルが変わる中、家庭でビールを楽しみたいという人が増えている。『ホームタップ』で新たな顧客にビールを届け、ビールの多様性を知ってもらえると嬉しい」とした。
「よなよなエール」はことし2月の発売時に、2020年1月以降で最高となる受注数で好調。7〜9月に増産、再発売を決めている。ヤッホーブルーイングはキリンビールの関連会社。