トヨタ自動車のレーシングカンパニーであるTOYOTA GAZOO Racingから、GRをブランド名に冠した「GR86」がデビュー。それに伴い、4月15日に新CM「The FR」が公開された。
本CMには、昭和の名車として知られる「AE86」、先代の「TOYOTA86」、そして新モデルとなる「GR86」という歴代の「86」3台が登場する。プロドライバーがサーキットで3台をピタリと揃えて高速ドリフトさせる瞬間にドローンがギリギリのところで接写するなど、3台の「86」のドリフトとドローンによる「操る」と「操る」の前代未聞の競演を見ることができる。
「目指したのは、この時代に、メーカーの枠を超えて、すべてのFR(フロントエンジン後輪駆動)車ラバーに、FRのかっこよさを再発見してもらうこと」と、クリエイティブディレクター 野添剛士氏。
「86」は、一貫して「手の内で操るたのしさ」、そしてFR駆動であることにこだわってきたクルマ。漫画『頭文字D(イニシャルD)』で注目を集めたAE86、TOYOTA86、そして今回のGR86と、時代をこえて、多くの運転好きに愛されてきた。そんな同車の新モデルのコミュニケーションで挑んだのは、「かつてはできなかったような撮影技法を使って、この時代に登場する新たなFRスポーツカーならではの魅力を描き出す」こと。テーマは、「DRIFT meets DRONE」だ。今回のチャレンジの輪郭は、制作チームとモリゾウさん(豊田章男社長のレーサー名)との会話の中から生まれたという。
今年はTOYOYTA86のデビューからちょうど10周年にもあたることもあり、制作チームは「FRの系譜」と「ファンへのリスペクト」をこめて、大いなるチャレンジを試みた。
撮影当日は、照明用に夜の富士スピードウェイに30台以上のハイライダーを持ちこみ、サーキットをショーアップ。当初は海外での撮影を予定していたがコロナ禍により海外でのロケが困難となる中で、どのようにシチュエーションに映像的なかっこよさを担保するか?この設えは、その問いに対するチームのひとつの答えだった。
今回の企画は「THE FRの走り」を伝えるために「走りにどれだけ接近できるか?」というチャレンジであり、それが本CMの大きな見せどころになる。その一つが、高速でドリフトする「86」に数十メートルにわたって併走しながら、運転席の窓にドローンが飛び込んでいくシーンだ。このシーンをはじめ、本CMではCGを一切使わず、すべて実際に撮影している。この企画を成し遂げるために、一流のプロドライバーとドローンパイロットが、3ヶ月にわたる準備を重ねた上で撮影に臨み、本番でも数え切れないテイク数を要すことになった。
「86がドリフトでコーナー本気で攻めるとき、そのままカメラが室内通過したらWOW!があるよねというクリエイティブのアイデアにしばらく気が遠くなりました。実験的映像を追求してそこで終わりではなく、GRのブランド感を載せてオンエアするために今回も30秒の全てのフレームがディスプレイカットとして成立できるような絵を撮りたかった。どの様なカメラワークで3台のマシンを、しかもワンカットで撮り上げていくのか?一台それぞれのプロポーションとパフォーマンスをどのタイミングで見せていくのか?絵コンテ何枚描いてもつかみ切れず、3Dのプレヴィズで確認をくり返しました」と、ディレクター 山本一磨氏は振り返る。
撮影はセンチ単位のズレも、コンマ単位のズレも許されず、ドローンパイロットいわく「数十メートル先の1センチくらいの的を目掛けて、呼吸とタイミングをあわせながらクルマとドローンを同時に飛び込ませる感覚」だという。
「夜のサーキットコースを舞台に見立てて照明し、白いボディーとその走りの軌跡を美しくとらえた、ライブ感が大切だったので光源もクレーンも映ったまま消しませんでした、もちろんドローンの影も。GoProのワイドレンズ映像がカジュアルではなくダイナミックに見えるように色々な努力を重ね、気を遣いました。課題だった限界域でのマシンコントロールを可視化、イメージ化するのにドローンでの実験的撮影は効果的だったと思います」(山本氏)
CMのみならず、グラフィックも臨場感あふれるシーンが切り取られている。こちらはWebサイトのトップバナーや店頭ポスター、雑誌広告などで展開する。
「単にカメラカーでラフに撮影した写真にならないように、『時代を超えた86の共演に相応しい世界観づくりとライティングをメインとし映像や写真のクオリティをどこまで上げられるか?』の挑戦でした」と、アートディレクター 池澤樹氏。
今回の撮影におけるチームのチャレンジや苦労は、メイキング映像にもしっかりと収録されている。
CD 野添氏は今回の撮影を振り返り、「クライアントとプロドライバーと制作チーム、全員が本当のワンチームになってすべてをリアルとフィジカルに実現することにこだわったからこそ、物理現象と偶発性の中で、独特の没入していくようなカメラワークへと辿り着きました。どれだけ機材や技術が進化しても、その先に人間技でしか撮れないモノがあると信じる。だからこそ、FRスポーツカーを運転しているヒトに、『そう、この感覚!』と言ってもらえるような臨場感と世界観が表現できたのではないでしょうか」と話している。
現在公開中の30秒CMに続き、60秒の長尺CMも近くオンエアが予定されている。
スタッフリスト
- 企画制作
- SIX+夢の稗田+STUDEO+博報堂+AOI Pro.
- CD
- 野添剛士
- 企画
- 稗田倫広
- C
- 坪井卓
- AD
- 池澤樹
- D
- 香川真知
- Pr
- 加藤久哉、鈴木貴秀
- PM
- 渡邉健太、呉聖光
- 演出
- 山本一磨
- 撮影
- 内田将二
- 照明
- 茨城昌弘
- カメラカー
- 小坂良幸
- ドローン オペレーター
- 田中道人
- 仕掛け
- リバティハウス、 仕掛屋
- CG
- オムニバス ジャパン、FLUX
- 編集
- 瀬谷さくら(オフライン)、八十島 崇行、松田宏(オンライン)
- カラリスト
- Brandon Chavez
- 音楽
- 愛印
- MIX
- 丸井庸男
- カープレップ
- 鈴木勝善
- AE
- 和田将紀
- 出演
- 佐々木雅弘、松井有紀夫、高橋滋