データ蓄積、料飲店へも提案
アサヒビールと電通デジタルの合弁会社スマドリは6月30日、東京・渋谷にノンアルコールや低アルコールの飲み物を揃えたバーをオープンする。来訪者データを活用しながら新商品やメニューをテストし、料飲店への展開を図る。
来店者はスマートフォンを介して注文・決済する方式。メッセージアプリ「LINE」を用いる。性別や年齢、注文内容や頻度、来店時間などのデータを基に、ノンアルや低アルコール飲料を好む層の嗜好などを分析商品開発やマーケティングに活用する。
スマドリ社長の梶浦瑞穂氏(アサヒビール新価値創造推進部長兼任)は「親会社のアサヒビールとも連携し、バーで好評を得たレシピや商品を、料飲店へ展開し、お酒を飲めない層、あえて飲まない層などに市場を広げたい」と話す。
一般的な酒類に比べてノンアルや低アルコールは選択肢が限られており、飲める人、好きな人と同じように楽しめない、という心情に着目した。アサヒビールが飲料を提供するイベントなどとの連携も視野に入れる。
スマドリが主に狙うのは、自宅外でお酒を楽しむ場が好きで、参加意向のある層。同社の推計では、「体質的には飲めるが、自宅では飲まない。お酒を楽しむ場は好きだが、酔いたくはない」という人が790万人、「体質的に飲めないが、お酒を楽しむ場は好きで、自宅外で参加する」という人が540万人といった規模で存在するという。
2021年に発売したアルコール度数0.5%のビールテイスト飲料「ビアリー」や、同じく0.5%のカクテルテイスト「ハイボリー」で手応えを得た。インテージのデータでは、21年のビールテイスト飲料市場は約500億円規模となっており、前年比118.1%。「ビアリー」を除くと同比109.7%で、拡大をけん引したブランドとなった。アサヒビールでは、「ドライゼロ」や「スタイルゼロ」などのノンアルを含め、これまで同社の商品を手に取っていなかった新規ユーザーが約128万人増えたという。
「市場からすれば、まだわずかではあるが、飲む人も飲まない人も分け隔てなく、一緒に楽しめる環境づくりに一歩踏み出せたのではないか。世界的に見ても酒類が停滞する中、ノンアル、低アルコールといった分野は伸長している。5年後、10年後と中長期的に見ると、大きなポテンシャルがある」(アサヒビール 専務取締役兼専務執行役員マーケティング本部長の松山一雄氏)
バーは「SUMADORI-BAR SHIBUYA」と名付けた。常設店として、昼0時〜夜10時に営業。アルコール度数0.0%〜3.0%の飲料を約100種類用意する。価格は未定。席は70席。
オープンに合わせ、新商品も上市する。5月17日には度数0.5%で、スパークリングワインのような味わいの炭酸飲料ブランド「ビスパ」を発売。「SUMADORI-BAR」での提供のほか、小売店や料飲店向けにも販売する。6月28日には缶入りの度数3.0%のスピリッツ「アサヒ VIVA」をAmazon.co.jpのみで発売。3200箱(1箱=24本入り)の数量限定。
ノンアルコール商品との接点拡大として、サントリーも4月末に「のんある酒場」を期間限定で東京駅の商業施設「東京駅一番街」にオープンする。ビールテイストやチューハイなどのRTDテイスト、ワインテイスト飲料などを提供するほか、同店舗のみのメニューも提供する。
スマドリはことし1月設立のアサヒビールと電通デジタルの合弁会社。出資比率はアサヒビールが51%、電通デジタルが49%。代表取締役社長は前述の梶浦氏。取締役副社長は電通デジタルの宮下敬志氏(電通デジタル ビジネスディベロップメント事業部長兼任)。
アサヒビールは、商品の販売容量構成比で、度数3.5%以下の商品の比率を25年までに20%にする考え。2022年はアルコールテイスト清涼飲料で売上高505億円(前年比125.3%増)を目指す。ビール類全体での構成比では8.4%を占める計算。