【前回コラム】「自分のことが分からない」「実は清純派に憧れていた」……女優の正体や、いかに (ゲスト:玉城ティナ)【前編】
今回の登場人物紹介
『竜とそばかすの姫』で声優に初挑戦
中村:玉城さんは、映画『竜とそばかすの姫』(2021)に出られていたんですよね?
玉城:はい。細田守監督の作品で、初めて声優に挑戦させていただきました。声優は挑戦してみたいジャンルのお仕事だったのでとても嬉しかったですし、本当にすごい経験だったな、と思いますね。
権八:クラスのマドンナ役なんですよね?
玉城:はい、「ルカちゃん」(渡辺 瑠果)ですね。
中村:吹奏楽部でサックスを吹いている、”一番いい役”といっても過言ではないですよね?
玉城:はははは(笑)。ルカちゃん役は、面白かったですね。声だけの演技って、好きだなと思いました。
権八:素晴らしかったですよ、あれは。みんな素晴らしかったんですけどね。
玉城:いや~、みなさん本当に素晴らしくて。私が声優のひとりとしてあの場にいられてよかったです。
澤本:アフレコに行く時って、事前に台本を読み込んでいますよね?どんな感情や声でやろうって、考えてから行くんですか?
玉城:私は、あまり決め込んでから行かないですね。ぼんやりとした枠組みというか……声のバリエーションみたいなもの、例えば、声の高い低いみたいなものを確認する、といったことはあるんですけど。「こういうふうにやろう」っていうのはないですね。多分、経験があまりないからかもしれませんけど。
権八:でも、あれこそが清純な女子高生役ですよね?
玉城:そうです、もう真っ直ぐすぎて「実は悪い子なんじゃないかな?」って思えるぐらい真っ直ぐなんですよ(笑)。ヒロインの恋敵役なんです。「この子、彼を盗っちゃうんじゃないの?」って一瞬思わせながら、大丈夫という。すごくいい子です。
権八:そうだよね。ちなみに、そういった意味では澤本さんと共演しているんですよ(笑)。
澤本:共演というか……。僕は、細田さんとたまに飲んだりするんですよ。それで、アフレコの見学に行った時に、劇中の仮想空間「U」にいる大勢のアバターの一体として参加しているんです。
玉城:ええ~?!
澤本:たった一声だけですよ。でも、その一声にどれだけかかったかという……。
権八:なんでしたっけ、セリフは?
澤本:「ステキな音色……。」だったかな。
権八:主人公の歌を聴いた、最初の方ですよね。
玉城:ヒロインの歌の感想を聴いたみんなが、ワァーッて感想を言う場面ですね?
澤本:それだけのために、色んな声を出して……。でも、自分的にはすべて納得がいかなくて。自分以外はみなさん、プロじゃないですか?だから、「ここにいていいのかな?」と思って。
権八:あれ、どんな感じでしたっけ?
澤本:「しゅてきな音色~!」……みたいな(笑)。
一同:ははははは!
玉城:めちゃくちゃいいじゃないですか!(笑) 顔から役をつくられているところが、声優さんですよね。
澤本:もう恥ずかしくて、できないですよ……。
権八:できてた、できてた!(笑)
澤本:今は頑張ったの。
玉城:ははははは。
権八:ルカちゃんの人物像とティナちゃんは、少しギャップがありますよね?(笑)
玉城:そうですね、実際に会ってみてってことですよね?(笑) ははははは。
権八:それは内面的にも「あそこまではなれないな、私。」ってところですか?
玉城:いやいや、ピュアですから、私!(笑)
一同:ははははは!
権八:いや、それは失礼しました(笑)。
短編映画『物語』の監督・脚本を務める
中村:WOWOWで配信される『アクターズ・ショート・フィルム2』(WOWOW開局30周年記念プロジェクト)では、なんと短編映画の物語の監督・脚本も務められています!
玉城:はい、そうなんです。
澤本:おぉ~、すごい。これは昔からつくり手をやってみたかったんですか?
玉城:いや~、できるとも思っていなかったですし、「こういう作品をつくってやろう!」みたいな意気込みがあまりないタイプなので。こんなに早く作品をつくれることになるとは思ってもみませんでした。
お話をいただいてから、「こういう機会があるのなら、やってみてもいいかもしれない」と思いまして。例えば、私が「今なら映画をつくれるぞ」って思う瞬間は、おそらく待っていても訪れないな、と思ったんですね。作品をつくれるかどうかは実際にやってみて分かるといいますか……。今回は脚本も書かせてもらったので、机の前にまず座る、という所から始めました。書き溜めたものを、満を持して発表する、といったことは私にはなさそうなので。作品はもう撮り終えていて、もうすぐ配信になります。
澤本:脚本も書かれたわけですよね。脚本を書く時って、どうやりました?最初にプロットを書いてから書きました?
玉城:はい。プロットを書いて、登場人物を立てて、それを膨らませていくという。
澤本:元々やりたい世界観みたいなものがあったんですか?それをプロデューサーさんと話しながらつくっていく感じ?それとも、自分の中でバーッとできちゃった感じですか?
玉城:できあがった作品は『物語』という題名なんです。一番最初の打ち合わせの時は、違う作品を撮ろうとしていたんですね。でも、それは短編向けではなかったんです。ロケ地が限定されていたり、コロナ禍では撮影が難しい作品だったんです。自分のキャパ的にも「無理してやらない方がいい」と思いました。
そこで、まずは私が思う「短編らしいもの」、それはつまり、自分の身近なこと、自分の経験したことがある世界というものを映像化したほうがやりやすいのではないか、と思いまして。監督をするのが初めてだったので、“できない”“悩む”といったトピックスをなるべく減らしたかったんですよね。そういうわけで、すごく半径の狭い世界で作品をつくっています。
中村:ザックリ言うと、どんな内容なんですか?
玉城:ははははは!
一同:笑い
中村:えーと。これは何の笑いですかね?(笑)
玉城:いや、ここまで話してあらすじを話したら、すごい暗い人間に見えるなって思っちゃって(笑)。
権八:そうなんだ?
玉城:そうなんですよ。実はあらすじを説明するのも難しいのですが……。主人公を「琉花」さんという方に演じていただいたんですが、彼女はおそらく芸能関係なんだろうな、という女性で。彼女がある白い部屋の中に入っていくと、そこで寝ている青年がおりまして。この役は奥平大兼さんに演じていただきました。そこにある2人の世界が展開していく、という感じなんですね。
この『アクターズ・ショート・フィルム』というのは、決まりとして監督も作品に出なければいけないというのがあって。最初は「この役を自分がやる」と決めていない役があったのですが、結果的にその役を私がやることによってよりオチがついちゃった、みたいな感じがありまして。作品を見ていただければ分かるんですが、ひとりで喋っている女性と、それを聴いている青年の2人のお話です。
澤本:何分ぐらいのものなんですか?
玉城:15分ですね。決まりとして25分以内というのがあるのですが、こんなに短いのは初めてだって言われました(笑)。
中村:はははは!
玉城:ふつうはみんな、ギリギリまでやりたがる、と。でも私は、15分がギリギリかな、と(笑)。これはひとり喋りなんですね。しかも若干舞台っぽい感じもあるので、25分もみなさんに見せると飽きられちゃうんじゃないかと思ったので、15分にしています。
澤本:編集も自分でやるんですか?
玉城:はい。最初は編集の方についていただいて。私も実際に編集室に入って、だいぶ携わっています。
澤本:へえ~。すごいな。なんでも全部自分でやっているんだ。
玉城:そうですね。音楽はこういう感じでって依頼して。楽しかったです。
権八:聴いていると、少し抽象的というか、不思議なお話なんですかね?
玉城:私の中では結構シンプルなんですけど、そういうご意見もあります。
権八:私が経験したことのある範囲で、っていう話をされていましたよね?そう思って見ていいですか?
玉城:いいですよ、はい。もちろん全部ではないですけど。面白いといいな、と思います。