オリコム
OOHメディア局 第一部 担当部長
山本正博氏
SP部門からキャリアをスタート、大手通信会社の販促、「ad:tech tokyo」の誘致・開催等に従事。その後、丸の内のデジタルサイネージネットワークの開発・運営に参画。2018年より現職。デジタルからオフラインまで幅広い視点で取り組む。
Q. OOHメディアだからこその価値をどう捉えていますか。
A. 流通する情報量が増え、「偶然性」と「リアルにあること」の価値が顕在化しました。
デジタル化やコロナ禍の影響で、「偶然性(セレンディピティ)」と「リアルにあること」の価値が顕在化してきたと捉えています。
流通する情報が増え、自分が興味ある情報にだけ接触しがちな現在、OOHの持つ「偶然性(セレンディピティ:素敵な偶然に出会う、予想外のものを発見する)」の意義は、従来よりも高くなっていると考えています。
またコロナ禍による外出の希少性は、「公共の場所に、実際にある」という「リアルの価値」を高めました。デジタル単体ではできないクリエイティブ表現や、それを「実際に見る=体験できる」ことは、OOHならではの魅力です。「体験」を共有するためSNSによる発信も多く、今やOOHは情報拡散の起点になっています。
Q. 広告主企業がOOHメディア活用において抱えている課題は何でしょうか。
A. 効果の可視化と、業界全体の統一指標の確立です。
広告効果の可視化と、度重なる移動制限によるOOHメディアの不確実性(スケジュール、人流抑制によるリーチ不足等)が挙げられます。コロナ禍で電車の利用者が減ったことにより、OOHのリーチ力が低下したのではないかという懸念や、検証データが少ないことや効果が可視化できないこと等により、優先順位が下がってしまうという意見もあります。
昨今では、スマホの位置情報などによる人流解析、解析データを基にしたDOOHへのプログラマティック配信やダイナミックプライシングへの取り組みなど、様々なデータの活用が増えてきています。電車内広告における推定到達人数についても、それほど減少していないとのデータが散見されつつありますが、広告業界における統一指標の確立も、大きな課題として残っています。
Q. 最近のOOHのデジタル化の動きの中で、特筆すべきものはありますか。
A. 設置エリア自体がイベント化し、価値向上に寄与しています。
定量的な観点においては、デジタル活用による新たな効果検証(メジャメント)の手法や効率的な配信(プログラマティックOOH)などが挙げられますが、OOHの定性的かつ本質的な価値である「体験」が、デジタルならではの手法により大きく変わっています。例えばデジタルサイネージにおいては「3DOOH」や「巨大サイネージ」による圧倒的な体験を、生活者の日常導線において展開することなどは、これまでになかった価値提供が進んでいると思います。
デジタルによるOOHのクリエイティブ革命は、媒体設置エリア自体がイベント化することによりロケーションにおける価値向上にも寄与していると思います。