2019年、「日本一心の距離が遠いサファリパーク」という自虐的なCMなどの広告を展開し、全国的に話題を集めた姫路セントラルパーク(以下、ひめせん)。このキャンペーンによって年間来園者数が10万人に達したものの、2020年3月から新型コロナウイルスの影響で緊急休園。広告キャンペーンも中止していた。そんなひめせんが、4月末に3年ぶりとなるCMを開始した。
年間57万人もの来場者があるにもかかわらず、「空いているイメージがある」「スカスカ」と言われてしまうひめせん。なぜなら、それは甲子園48個分の広さがあるがゆえ。今回のCMでは、そんなひめせんを「日本一過小評価されているサファリパーク」として紹介している。キャッチフレーズは「STOP 過小評価」。
前回に続き、クリエイティブディレクターを務めた河西智彦氏は、2つの点を重視しながら企画を立てた。ひとつは、2019年と2022年のCMをつなげること。
「僕は、短期売上増プロモーションを中〜長期つづけてブランドをつくりV字回復させていくタイプなのですが、コロナのせいでせっかく大きな効果を出したキャンペーンを中断しなくてはいけなくなりました。そして2022年。中断期間があったので、2019年を思い出してもらい、続けていくことで効果を最大化したい、と考え前回とは違うキャッチながらも、『自虐しながら自慢する』アプローチは共通にしました」
もう一つは、「コロナ禍で日常生活の中からはじきだされてしまったサファリパークや動物園や遊園地をもう一度生活の中の選択肢にしたい」ということ。
「この2年間のコロナの期間で、人々の休日の選択肢から、レジャーが遠のいてしまったと思います。動画配信サービスやキャンプなどに置き換わられてしまった、とも言えます。その影響は集客数にも出ています。なので、もういちど動物園やサファリパークや遊園地を、休日の選択肢にしたい、しないと真の売上回復はない、と思い、より声を大きくするために、『わたしたちを過小評価していませんか?STOP過小評価』とやや強い言葉を投げかけようと考えました。
みんなが動物園やサファリパークや遊園地を意識的に過小評価しているとは思いませんが、“いかなくてもいいや”という気持ちの底には、楽しさを低く感じている(忘れている)、というのもあると思ったのです。そこで“過小評価してますよね?”と投げかけることで“そういえば…そうかも”と思ってもらえるようにしました」
また、今回は自虐CMの他に、ひめせんならではの課題を解決するべく、Webムービーも制作している。
こちらのWebムービーの企画は、2年ぶりの再開にあたって実施したアンケート調査から見えてきた課題が発端となった。大阪とひめせんは車で約55分の距離であるにもかかわらず、以前使っていた「心の距離が遠いサファリパーク」というキャッチフレーズ通り、「遠い」という距離認識の問題がまだ残っていたという。
「2年前、どれだけ話題になっても、100人中まだ半分ぐらいの人が事実を知っているだけだと思います。2年前もそうでしたが、この距離の問題を解決するのが、やはり一番人が来ます。そこにも向き合いたいと思いました」
ひめせんが大自然をテーマにした場所であることも伝えつつ、今回のムービーでは「〇〇が冷めない距離」という企画を、テレビ番組風のドキュメンタリータッチで制作している。
3年ぶりとなる自虐CMに加え、思いがけない展開をするWebムービーに、地元の人たちは「ひめせんの自虐CM始まった!」「ひめせんのCM面白い」といった声が、SNSに投稿されており、公式サイトのアクセス数も大きく伸びている。
スタッフリスト
- 企画制作
- 博報堂+博報堂関西支社+フィックス+White Co.
- CD+企画+C
- 河西智彦
- AD
- 竹上淳志
- D
- 中島英貴
- CPr
- 長谷田賢、新納摩利子
- PR
- 西村和人
- PM
- 堀雄一郎、野瀬裕鶴、富田綾子
- 演出
- 永田俊
- 撮影
- 安西ショージ
- ロケCrd
- 高木應
- 編集
- 宮田裕一(オフライン)、山下大輔(オンライン)
- 録音+MIX
- 大西洋平
- クリエイティブスーパーバイザー
- 飯星隆、幸崎誠
- NA
- 重塚利弘