チームで失恋エピソードをたくさん出し合った
同棲していた彼女と別れ、抜け殻のようになった主人公。失恋で何も手につかない彼のもとに現れたのは“くらしさん”。暮らしを助ける200以上のサービスをオンラインで提供する「くらしのマーケット」を擬人化した存在だ。
トイレの電球が切れれば「出張高所電球交換」、食事さえも喉を通らないところに「出張シェフ」、悲しみのあまり床を涙で水浸しにしてしまえば「出張水漏れ修理」と、“くらしさん”が次々と生活を助けていく。そんな彼にもやがて、新たな恋に落ちる瞬間が。出社時にマンションの住人らしき女性に会釈をされ、その場に崩れ落ちる。その傍らにも、やさしく寄り添う“くらしさん”の姿があった――。
みんなのマーケットのサービス「くらしのマーケット」を使ってみたくなる動画という課題に対し、失恋で普段通りの生活がままならない人に寄り添う同サービスを表現した本作。電通のプランナー 中原小百合さんを中心としたチームが制作した。
中原さんと演出・監督の細谷映麻理さん(OND°)は入社7年目で、プロデューサーである小林崇士さん(東北新社)は入社10年目。2回目のBOVAへの応募となった中原さんは「同世代と思い切り自由に制作してみたい」と考え、以前から親交のあった小林さんに相談しチームを結成した。
企画がスタートしたのは2021年11月中旬。年末に細谷さんによる演出コンテ案が出されると、年末年始に中原さんが企画をブラッシュアップしコンテが完成したのは撮影の10日前。1月中旬に撮影し、制作は1月27日の応募〆切直前まで続いた。
「失恋すると人は何も手につかない」というアイデアは、中原さんの発案。「200種類以上のサービスを頼めることを伝えたいという課題で、多様なサービスを網羅的に利用する姿を描こうと思ったのがきっかけ。何も手につかない人を主役に据えようと考えた末、失恋という境遇は多くの共感を呼べるのではと考えました」(中原さん)。
劇中では、実際に「くらしのマーケット」が提供している7種類のサービスが登場する。「出張マジシャンなどユニークなサービスもあり、失恋というテーマにどのように関連付けて組み立てるかを何度も議論しました」と細谷さん。チームで出し合った失恋エピソードと実際に提供されているサービスを照らし合わせてストーリーの整合性をとり、視聴者を飽きさせないよう、短尺動画のようにテンポよく次々とサービスを登場させる構成とした。
中には、風呂の排水溝から彼女の髪の毛をかき集めたり、自分と彼女の2本の歯ブラシをキスさせたりと、失恋をすると人は正気ではいられないのだと感じさせる強烈なシーンも。「表現が過剰になりそうなところは“引き算”を大事にしました。見た人が引かない、ギリギリのところで線引きしています」(小林さん)。
小道具や音楽も随所にチームのこだわりが。部屋に飾られたカレンダーの書き込みやオムライスにケチャップで描くメッセージなど、劇中に登場する小道具の多くも楽しみながらつくり込んでいった。ストーリーに合わせて流れる失恋ソングも、本作のための描き下ろし。作詞は中原さん、作曲は吉田ゐさおさんによるものだ。
さらに注目は、主人公役のキャスティング。何名か候補となる出演者がいる中で、中原さんの大学の後輩でもある、お笑いコンビ・まんじゅう大帝国の竹内一希さんが出演したこともグランプリ発表後に話題になった。
「起用の理由は、同棲していた彼女に出て行かれた経験がありそうな、“失恋顔”だったから。外では至って普通の人だけど、失恋によって日常にはないおかしな行動をとってしまう。その二面性をうまく表現いただいていると思います」(細谷さん)。
スタッフリスト
- 企画制作
- 電通+東北新社
- ECD
- 松村祐治
- 企画+C
- 中原小百合
- Pr+PM
- 小林崇士
- PM
- 平瀬遼太郎
- 演出
- 細谷映麻理
- 撮影
- 星潤哉
- 照明
- 平野礼
- 編集
- 壁谷太一朗
- カラリスト
- 田中諭
- 音楽
- 吉田ゐさお
- 歌
- こたまる100%
- 車両
- 金城和人
- CAS
- 永見朱
- 出演
- 竹内一希(まんじゅう大帝国)、救仁郷将志、山口佳南