※本記事は『広報会議』2022年6月号の転載記事です。
バイオ医薬品のリーディングカンパニーである武田薬品工業が2021年、創立240周年を迎えた。周年イヤープロジェクトでは、「世界に尽くせ、タケダ。革新的に。誠実に。」というキャンペーンコピーのもと、社内外に向けたブランディングキャンペーンを展開。
2021年3月に複数の社外調査を実施した結果、売却した一般医薬品事業のイメージから脱せていないことや、社員の顔が見えないという課題が表出。サイエンスを要とする同社らしく、客観的なデータに基づいたロジック構築を行い、周年事業の施策を「会社を知ってもらう」「社員を知ってもらう」「仲間(共感してくれるパートナー)をつくる」の3本柱に決めた。
社員自らがアンバサダーに
プロジェクトを進める上で重視したのは、ステークホルダーである社員を巻き込み、“自分ごと”につなげること。「社員自らアンバサダーになってもらうことを主軸に置いたコミュニケーションを意識しました」と話すのは、プロジェクトリーダーを務めるチーフ グローバル コーポレート アフェアーズ オフィサーの大薮貴子氏。実際、周年事業のディスカッションチームには社員240人が自発的に手を上げ、38回のセッションを通じて“自分ごと”につなげるための活発な議論が行われた。
まず、「会社」と「社員」を知るツールとして、コンセプト動画やテレビCM、特設サイトを制作。実際の社員の姿を通じてコンセプトと企業姿勢を伝える発信に注力している。とくに特設サイトは、同社の“サイエンス”を社内外に伝える重要な役割を果たす。
「すべての患者さん(Patient)、ともに働く仲間(People)、いのちを育む地球(Planet)という3つの『P』のためにデータとデジタルの力でイノベーションを起こす、という当社のビジョンを伝えられるようテーマを設定して進めました」と話すのは、グローバルコーポレートマーケティング・ブランディング担当の池井沙織氏。
その言葉通り、iPS細胞を活用した治療薬の研究チーム『T-CiRA』の取り組みや、最先端デジタル技術を取り入れた医薬品製造の舞台裏、異なる3つの部署から集まった社員によるディスカッション、DE&I(多様性、公平性、包括性)の取り組みなど、同社の革新性を紹介するコンテンツが充実。専門用語が頻出しがちな分野だからこそ、誰にでも革新的な取り組みだと分かってもらえる言葉選びを心がけて制作している。
環境を整えるための事前準備
「数量的な変化はこれからですが、社内の前向きな空気を感じます。CMを見た患者さんのご家族から、『希少疾患について伝えてくれてありがとう』『切なる思いで薬を待っているので頑張って欲しい』など叱咤激励をいただいたのも嬉しかったですね」と話す大薮氏は、事前に社外取締役や創業家、労働組合といった重要なステークホルダーに対して事業の意図やクリエイティブについての説明を行い、環境づくりを進めてきた。
入念な準備が実を結び、社内外の意識変革が起きたことで施策のひとつである「仲間の構築」にもつながった。将来のポテンシャルパートナーとなりうる企業や大学から「タケダのことを知りたい」という問い合わせが増えたという。
240周年はあくまで通過点。これを契機に、複数年にわたるキャンペーンへと進化させることも決定した。
「次の240年を見据え、サステナビリティの源流といえる創業当初からの『三方よし』という考えをタケダイズムのもとで具現化していきます」(大薮氏)。
Pick up!
社内イベントを生中継して国内の全社員を巻き込む
特設サイトとテレビCMの公開前日に、東京、大阪の本社と工場、湘南の研究所、山口の工場の5拠点を生中継でつなぐ社内イベントを実施。オンライン参加も可能なハイブリッド形式で開催し、キャンペーンTシャツを着たCEO以下執行役員が多くの従業員に向けて周年キャンペーンに込めた想いを共有した。
「わが社の周年事業・プロジェクトを広報会議で取り上げてほしい!」
という担当者の皆さま、ぜひ情報をお寄せください。
kouhou@sendenkaigi.co.jp
<INFORMATION>
月刊『広報会議』定期購読者の方に、「周年イヤーの迎え方」事例(26ケース)をまとめたPDFハンドブックをプレゼント(2022年6月30日まで)。周年プロジェクト成功までのプロセスが分かります。
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広報会議2022年6月号
【特集1】
どうする?気候変動リスク対応
サステナビリティ発信強化
「脱炭素」座談会
企業×メディア×投資家の視点で語る
脱炭素に関する企業発信の潮流とは
GUIDE1 広報が求められる役割は
カーボンニュートラル経営実現のステップ
伊原彩乃(ボストン コンサルティング グループ プロジェクトリーダー)
GUIDE2 自分ごと化に広報は
人と社会を動かす「共感の深度」の見つけ方
畑中翔太(dea代表、クリエイティブディレクター/プロデューサー)
OPINION
脱炭素に真に取り組んでいるのか
判断の分かれ目、メディアはどう見る
・「Business Insider Japan」
・『繊研新聞』
・『WWDJAPAN』
・『化学工業日報』
・『環境ビジネス』
【特集2】環境ビジョンの浸透・成果の発信
「脱炭素」×自社の “らしさ”を結び付けた事例
CASE1 住友林業
脱炭素への本気度を示すのと同時に
事業領域の認知拡大を図る
CASE2 三菱UFJフィナンシャル・グループ
宣言に加え、アライアンスにも加盟
進める、ステークホルダーへの浸透施策
CASE3 ニチバン
環境対応に関する全社発信を、周年を機に強化
セロテープ®介し、他の企業の発信の“場”の創出にも
CASE4 石井造園
地域の”らしさ”を体現する企業を目指し
周囲の共感得る理念と合言葉を策定
COLUMN
Z世代に響くサステナブル発信とは
牧島夢加(博報堂 ミライの事業室)
【特集3】記事化につながるSDGsの取り組み
「プレスリリース」戦略
Q&A
社会課題の解決につながる取り組みのリリース
記者の注目を高める方法は
西林祐美(共同通信PRワイヤー)
CASE1 東急
日本初、全路線の電力を再エネ由来に
環境ビジョンと具体策を同時に示す
CASE2 UCC
カーボンニュートラルなコーヒー
背景にある技術、官民連携を発信
CASE3 千葉商科大学
自然エネルギー100%の大学を目指し
達成状況を視覚的にも伝わりやすく
など