英国ロンドンを拠点とするD&AD は、5月末に2日にわたって開催したオンラインアワード授賞式にて、最高賞であるBLACK PENCILをはじめ、各部門の受賞作品を発表した。
1962年にスタートし、今年で 60 年目を迎える本賞は、広告部門、クラフト部門 、カルチャー部門、デザイン部門、インパクト部門、コラボレティブ部門、サイドハッスル部門(合計42のカテゴリー)で構成されている。本年度は世界各国のクリエイティブを代表する400人の審査員が参加し、審査が進められた。
本年度のペンシル受賞総数は、702本。最高賞であるブラックペンシルは、Change the Ref「The Lost Class」(2カテゴリーでブラックペンシルを受賞)、Frontline19 「Hopeline19」、Samsung 「Samsung iTest」、GOOGLE「Real Tone」という4つの作品(計5本)に授与された。また、行動、政策、商業、社会の変化に貢献し、インパクトを与えるクリエイティビティの力を示したプロジェクトに与えられるWhite Pencilは、DOLEとAnanas Anamによる「Piñatex」、Maxx Flash「The Killer Pack」に贈られた。
日本からのペンシル受賞、ショートリスト総数は、51作品。うちイエローペンシルは5作品、グラファイトペンシルは3作品、ウッドペンシル は8作品に授与された。
なお、特別賞となるプレジデント賞は、9 月に開催される D&AD 創立 60 周年と今年の D&AD 年鑑発売を記念した特別イベントで発表される予定。
Black Pencil / Branding / Tactical /Black Pencil / Direct / Film
Change the Ref「The Lost Class」(Leo Burnett Chicago)
アメリカの子供や十代の若者たちの死因の多くは銃によるもの。パークランド高校での銃撃の犠牲になったジョアキン・オリバーの両親によって設立された銃規制団体Change the Refは、2021年に卒業予定だった3,044人の生徒のために、「The Lost Class」の卒業式を開催。全米ライフル協会(NRA)の元会長に、犠牲者を象徴した空席のいすを前にスピーチをさせた。元会長は、ジェームズ・マディソン・アカデミーの卒業生に対するスピーチの練習と信じ込んでいた。また、銃保持の権利支持を訴える活動家にも同様にスピーチさせている。
Black Pencil
・Creative Transformation / Engagement
Frontline19 「Hopeline19」(adam&eveDDB)
コロナ禍以降、イギリスでは300万人を超える医療従事者のうち5人に2人がPTSDに苦しんでおり、新たなパンデミックが生まれつつある。そのため、医療従事者のサポート機関であるFrontline19では、2021年9月の「Emergency Services Day」に無料の電話サービス「Hopeline19」を開始。Hopeline19は、最前線で働く医療従事者に感謝と支援のメッセージをイギリス国民であれば誰でも残すことができる。また、それを必要とする人は誰でも24時間年中無休で電話をかけて、人々からの支援メッセージを聞くことができる。
・Media / Mobile
Samsung 「Samsung iTest」(DDB New Zealand)
Galaxy端末で採用されているUIや一部のアプリなどを、自分のiPhone上で体験可能にしたアプリ「iTest」。サイトからQRコードを読み取り、ホーム画面にこのアプリを追加することで、Galaxyスマートフォンのホーム画面や設定画面をはじめ、メッセージの送受信、ボタン操作などを試すことができる。1,000万回以上のダウンロードがあったという。
・Product Design / Inclusive
GOOGLE「Real Tone」
Googleはハーバード大学と肌の色調を10段階で認識する「モンク・スキン・トーン(MST)スケール」を開発。これを活用し「リアルトーン」と呼ばれるフィルター機能を追加した。これによって、さまざまな民族の肌の色を的確に表現できるようになった。
White Pencil
・Impact / Sustained Solution
Dole Sunshine Company/Ananas Anam「Piñatex」(Lanfranco&Cordova L&C)
世界最大のパイナップル生産者の1つであるドールは、スタートアップ企業であるアナナス・アナムと提携して、これまで廃棄されていたパイナップルの葉の繊維を活用。ビーガンで動物虐待などがなく、持続可能な革の代替品として「Pinatex」を開発した。
・ Impact / Local Solution
Maxx Flash「The Killer Pack」(VMLY&R Mumbai)
インドでは、モンスーンの季節ではないにもかかわらず、デング熱やマラリアなどの生命を脅かす病気は史上最高となった。インド人は家の中で蚊よけコイルを使っているが、増加の要因となったのは外にあるゴミ収集場所。ここが病気の繁殖地になっていた。そこで、防蚊剤のMaxxFlashは、TheKillerPackを発表。100%生分解可能なパッケージには5%のActive Probiotic Bacillus thuringiensisを裏打ちして印刷した。これによってゴミ捨て場、ゴミ箱、庭の池、停滞水、雨水排水路に捨てた後に、そのパッケージで蚊の幼虫を殺すことができる。これを使用したいくつかのコミュニティでは、マラリアやデング熱が減少したと報告されている。
日本の受賞作品
YELLOW PENCIL
・ANIMATION/TRADITIONAL
タカラベルモント「Hair album」(博報堂)
・APPLIED PRINT GRAPHIC
Unlabeled、NexusVII「Camouflage Against the Machines」(電通)
・PACKAGING DESIGN/SMALL BATCH
かどや「アイアムミカン」(Maru)
・PRESS&OUTDOOR/PRESS ADVERTS
長崎新聞社/長崎新聞「13865 Black Dots and 2 Red Dots.」(電通)
・PRODUCTION DESIGN/FILM
大塚製薬/ポカリスエット「でも君が見えた」(電通+なかよしデザイン+Spoon.)
※Wood Pencil / Direction / Filmも受賞。
Graphite Pencil
・ILLUSTRATION/PRINTED MATERIALS
朝日焼「今宵も湖のほとりで」(電通+プラグ+日庄)
・PACKAGINGDESIGN/SMALL BATCH
ヒナタビ「Kukka」(ライツデザイン)
※Wood Pencil / Branding / Health & Wellbeingも受賞。
・BRANDING/NEW BRANDING SCHEMES
みんなの銀行/ブランドアイデンティティ(みんなの銀行+Fjord Tokyo)
WOOD PENCIL
・Illustration / Animated
Google「Ado /夜のピエロ(TeddyLoid Remix)」(ENJIN TOKYO)
・Direction / Film / 2022
ナイキ「Nike – Play New | New Girl」(Wieden+Kennedy Tokyo)
・Spatial Design / Exhibitions / 2022 /Spatial Design / Creative Use of Budget
資生堂「銀座生態図」(資生堂クリエイティブ+博展)
※2カテゴリーで受賞。
・Typography / Logos / 2022
金沢市「金沢未来のまち創造館」(電通西日本)
・Typography / Posters / 2022
Universal Workers「Save Gunkanjima」(電通)