※月刊『宣伝会議』2022年7月号(6月1日発売)では「デジタル広告品質とコンテキストターゲティング」と題し特集を組みました。
ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。
TVer
プロダクトオーナー室
中川卓也氏
大学卒業後、調査会社、インターネット広告会社を経て2015年テレビ朝日に入社。入社後よりインターネット配信事業に携わる。2020年7月よりTVerに出向し、現職。
Q.「デジタル広告の品質」にかかわる領域で、もっとも注目している課題とは?
A.広告を掲載する場の安全性責任は、広告主にも問われる。
広告が掲載される「コンテンツの安全性」に注目しています。
過去から問題視されていましたが、昨今「ファスト映画」や「ネタバレ投稿」といった違法アップロード等、不適切なコンテンツ問題が注目され、「ファスト映画」については逮捕者が出るような事態にまで発展しています。
このような中で、直近のIAS(Integral Ad Science)の調査によると、「安全でない」コンテンツに広告が表示された場合、プラットフォーマーはもちろん、アドバタイザーにも同等に責任があると考えられるという結果も出てきており、「コンテンツ」と「広告」に関する生活者の意識も変化しているように思います。
不適切なコンテンツを掲載することは、プラットフォーマーの問題だけでなく、そこに広告出稿している広告主のブランド毀損のリスクにもつながると考えています。
Q.デジタル広告にかかわる各プレイヤー間で、品質の課題に対する意識にギャップはあると思いますか?
A.業態やエリアに加え、経営層、担当者といった立場によってもギャップが。
「デジタル広告の品質問題は解消すべきか」との問いに対しては、おそらくほぼ100%の方が「はい」と答えるのではないかと思います。しかし、その理解・意識・対応の度合いに関しては、ギャップがあると感じます。また、業態・エリアに加えて、経営層なのか、現場で実業務を行っている担当者なのかといった立場の違いによっても、ギャップや注目している領域が大きく異なっているのを感じています。
TVerでは特に「広告が掲載されるコンテンツの問題」に注目していますが、その解決には業界内での発信を継続しつつ、例えばマスメディアを通した情報発信、ニュース化を通じて、広く社会問題として世の中全体に提起していくことも必要ではないかと考えています。
Q.デジタル広告品質に対して、広告主企業に意識の変化は見られますか?
A.「同じ場にどのような他社の広告が出稿されるのか」に対する意識も増加。
「広告が掲載されるコンテンツの安全性」に加え、「自社と隣接して広告が流れるアドバタイザー」に関しても意識しているクライアントが少しずつ増えている感覚があります。
TVerではプラットフォーマーとしてこのようなクライアントの意識に対応し、豊富なノウハウと経験のある各放送局の考査部門との協力により、すべての広告主の業態・素材に対して厳しい考査基準を設けて人の目でチェックを実施しています。その結果、ブランド毀損がなく、安心して出稿できるプラットフォームを整えられており、今後も放送局との連携を強化していきたいと思っています。